「キリン一番搾り 糖質ゼロ」が好調のキリンビール。前回の記事では、商品の開発秘話などを中心に伺った。今回は、キリンビールのマーケティングについて聞く。「まだできることがある」と話すマーケティング部長の山形光晴氏。おいしさを伝えることで、ビールを飲まなくなった人をもう一度振り向かせたいという。(聞き手は日経クロストレンド編集長・吾妻拓)

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キリンビール常務執行役員 マーケティング本部マーケティング部 部長、事業創造部 部長の山形光晴氏。1999年4月にプロクター・アンド・ギャンブル(P&G)入社。2015年8月キリン入社。同年9月、キリンビバレッジマーケティング本部マーケティング部長。17年3月キリンビール マーケティング本部マーケティング部長就任。19年4月 常務執行役員マーケティング本部マーケティング部長兼マーケティング本部マーケティング部商品開発研究所長。20年4月から現職
キリンビール常務執行役員 マーケティング本部マーケティング部 部長、事業創造部 部長の山形光晴氏。1999年4月にプロクター・アンド・ギャンブル(P&G)入社。2015年8月キリン入社。同年9月、キリンビバレッジマーケティング本部マーケティング部長。17年3月キリンビール マーケティング本部マーケティング部長就任。19年4月 常務執行役員マーケティング本部マーケティング部長兼マーケティング本部マーケティング部商品開発研究所長。20年4月から現職

マーケティングのモットーはお客様のほうを向く

編集長・吾妻 拓(以下、吾妻) 山形さんはキリングループに入られたのが2015年、マーケティング部長になられたのが17年ですね。マーケティングで重視しているのは?

山形 光晴氏(以下、山形氏) お客様が欲しがっているものや、解決したいことは何か、もっとお客様の生活に入り込むために我々ができることは何か、お客様を幸せにできることは何か。お客様の理解に努めています。

吾妻 購入者の調査はよくやっているんですか。

山形氏 毎日やっています。最近はオンラインで調査ができるので、お客様の声を聞ける頻度が高まってきました。マーケティングの力を付けるには、どれだけお客様の声を聞けるかです。だから、みんなで一生懸命やっています。

吾妻 オフラインのほうがより深いことを聞けそうですが、オンラインであることは障壁になっていないですか。

山形氏 なっていないです。オンラインだとお客様は自宅にいらっしゃるのでリラックスしているのか、色々と話してくれますね。話の途中で、冷蔵庫から「これなんですよ」って持ってきてくれたり。それが他社さんの商品だったりすることもあるのですが(笑)。

吾妻 マーケティングにデータ活用が不可欠な時代ですが、どのように進めていますか?

山形氏 一言でデータと言っても色々ありますよね。購買履歴から定型データまで。だから一概には言えないのですが、商品開発というよりも、「なぜこれが売れるのか」「なぜこういうデータになるのか」といった仮説作りに使うことが多いですね。

 私たちは、他社との差別化よりも、お客様の理解に努めていると先ほど話しました。お客様理解とはつまり、お客様について考えることです。調査で知ったファクトを並べるだけで終わらず、その上でさらに考えることが、お客様理解につながります。お客様の課題を見つけて、仮説を立てて、試してみる。そこにデータを活用するのがいいのかなと思っています。

「おいしい」の訴求で、ビールを飲まなくなった人も振り向かせる

吾妻 山形さんは、ビール市場の低迷についてはどうご覧になっているんでしょうか。前編では、ビール市場を活性化させていきたいとお話をされていましたが、どう活性化しますか?

山形氏 今ビール市場が低迷しているのは、私を含めたメーカーの力不足が大きいと感じています。これまでメーカーは、ビールが好きな人のほうだけ見ていたと思うんですね。そうではなく、ビールを飲んでいない人も含めて、ビールが魅力的に映るようにする。最近は飲まなくなったという人に、もう一度ビールを飲んでみようと思わせる。そのためには、ビール自体の価値を知ってもらう必要があると考えています。では、興味がない方に知っていただくにはどうしたらいいかというと、工夫をし続けるしかないと思っています。そして、「ビールはおいしい」と言い続けていきたいですね。

吾妻 なぜ「おいしい」が消費者に響くんでしょうか。「キリン一番搾り 糖質ゼロ」は機能的価値で売り出せる商品ですよね。CMを見て、山形さんはやっぱり「おいしい」で貫くのだなと驚きました。

山形氏 「おいしいし、飲んだら幸せになる」という体験はビールにしかできないと信じているからです。これからも「ビールはおいしい」と絶対に言い続けます(笑)。

吾妻 エクステンションを出すときに気をつけていることは何ですか。

山形氏 エクステンションの上手なやり方やテクニックは、実はあまり知らないんです。どちらかというと私は、お客様のニーズに応えられるか、お客様の課題とマッチしているか、ブランドが10年20年と続いていくかどうかを重視しています。つまり、ブランドにとってプラスになるか、長く残る可能性があるか、判断基準はこの2点ですね。

吾妻 「キリン一番搾り 糖質ゼロ」の発売は、酒税改正のタイミングに合わせたんですか。

山形氏 最終的には「間に合わせた」という感じです。

吾妻 ビール類の酒税は26年に一本化されますが、新ジャンルなどは今後どう動いていくと思われますか。

山形氏 ビールなどの価値が高いものは伸びていって、新ジャンルは縮むかなとは見ています。ただ、新ジャンルが無くなるかというとそうではない。プライスレイヤーは必ず残ると思うんですね。弊社でも、お客様にとって安く買っていただける、長く続くブランドは残していきたいと考えています。

吾妻 残していくブランドは、いくつぐらいに絞っていくんですか。

山形氏 そこは戦略に関わるので秘密ですね(笑)。ビールで言うと、クラフトビールも大きくしたいと考えていますし、お手ごろな価格のブランドもいくつか残ると思います。

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