インターネットを活用したマーケティングリサーチなどで知られるマクロミルは2020年9月29日、副社長で日本代表を務めていた佐々木徹氏が新たな社長 グローバルCEO(最高経営責任者)に就任した。新社長の下でマクロミルはどう変わるのか、佐々木氏に聞いた。

コロナ禍でリサーチの需要はどう変化したのか

 コロナ禍のまっただ中という状況下での船出となったマクロミルの新体制。同社は従来のリサーチ事業だけでなく、データの活用を新たな成長の軸として打ち出し、20年9月4日には三井住友カードと企業の戦略的なデータ利活用の促進を目指した提携などを実施している。前編ではコロナ禍による事業の変化や、データの活用に向けた取り組みについて聞く。

マクロミル社長 グローバルCEOの佐々木徹氏。中央大学商学部卒業後、一広、エービーシー・マートを経て2003年6月、マクロミル入社。リサーチディレクション、営業などの事業部門、経営統合におけるPMI業務の経験を経て、10年に執行役員 ネットリサーチ事業本部長に就任。18年9月より代表執行役副社長。20年9月29日から現職
マクロミル社長 グローバルCEOの佐々木徹氏。中央大学商学部卒業後、一広、エービーシー・マートを経て2003年6月、マクロミル入社。リサーチディレクション、営業などの事業部門、経営統合におけるPMI業務の経験を経て、10年に執行役員 ネットリサーチ事業本部長に就任。18年9月より代表執行役副社長。20年9月29日から現職

編集長・吾妻 拓(以下、吾妻) 新型コロナウイルス感染症の拡大は、主力のリサーチ事業への影響も大きかったのでは?

佐々木 徹氏(以下、佐々木氏) 大変つらかったですね。ちょうど20年3月中旬くらいから、クライアントや参加するパネル側の意向などもあって、オフラインでの調査がキャンセルや無期延期になることが増えてきたのですが、緊急事態宣言が出て以降は一層オフラインでのリサーチが大きな影響を受けましたね。

吾妻 インターネットリサーチはあまり影響を受けなかったのでしょうか。

佐々木氏 オフラインと比べれば軽微でしたが、新製品の投入やキャンペーンが延期・中止になるなど、企業のマーケティング活動が止まったことでその影響を受けたのは事実です。3月の状況を踏まえ、緊急事態宣言が6月末まで解除されないことを前提とした最悪の事態も想定していたのですが、それよりは企業の受注が多く、何とか避けられたというところです。

 足元の7~8月に関しても、4~6月と比べれば確実に回復している実感はありますね。旅行や自動車、交通インフラなどは明確に落ち込んでいますが、企業の側もマーケティング活動を完全にストップさせるわけにはいかないという力学が働いているようで、今後もその傾向は続いていくと見ています。

吾妻 新たな需要が伸びているのですか?

佐々木氏 事実ベースでいうと、我々の事業構造が変化するには至っていません。顕著なところでいうと、オフラインの代わりにオンラインでインタビューを実施するなどの変化は出てきていますが、ニーズを左右するところまでは行っていません。一方でコロナ禍、アフターコロナといった観点で言いますと、企業がコロナ禍で変化した消費者の意識や行動を捉えたいニーズが確実にあるなというのと、改めてデータの重要性を実感しており、そこに期待している部分がありますね。

 弊社はコロナ以前から、マーケティングリサーチからビジネスを広げ、業界の枠を超え、データに基軸を置いたマーケティングパートナーになる取り組みを進めていました。今後マーケティングのフィールドでデータの利活用はものすごく増えると思っていますし、そこをサポートすることで弊社のポジションをユニークなものにしていけると期待しています。

データ活用に悩む企業は確実に増えている

吾妻 企業ニーズが変化しているとのことですが、最も変化したと感じている部分とは?

佐々木氏 これはコロナ禍だからという訳ではなく、ここ2~3年のうちに大きくなっているものなのですが、企業がデータの利活用に本当に悩んでいるということですね。DMP(データ・マネジメント・プラットフォーム)を活用すれば情報にアクセスしやすくなるので、クライアントがそれをやりたいということはすぐ想起されるのですが、そこに至るまでの道筋が断絶しているのです。

 例えばデータを活用して広告を打ったりCRM(顧客関係管理)を利用したりしたい、という取り組みの間には、どのデータが広告に活用できるかを考えて奇麗に整理しながらデータベースに格納するといった工程が必要です。実はそうした地味な仕事をしている人材が最も重要なのです。にもかかわらず、そうした工程が必要だという認識のあるクライアントはほとんどいません。

 これからデータを取得する、収集したデータをどう活用すべきか考えている……などクライアントのフェーズによって違いはありますが、データ活用というテーマでこれほど悩んでいるクライアントが増えているというのが、一番大きく変わってきているところではないでしょうか。

吾妻 データに予算が動いていて、リサーチのDX(デジタルトランスフォーメーション)に関する案件が伸びていることも影響しているかもしれませんね。

佐々木氏 DXの加速は疑う余地がありませんが、データの分野で注目されているのは基盤構築の部分に限られています。ですが最も重要なのは、基盤を構築した後のPDCAと、マーケティング施策とのつなぎ込みの部分なのです。

 弊社はもともと130万のパネルを軸としたマーケティングデータを提供できますし、データをハンドリングする技術も持ち合わせています。我々自身が従来の枠を超えることで、確立されていない最も重要な部分に入っていくことに自信を持っています。

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