『ピーナッツ』や『きかんしゃトーマス』『ピーターラビット』などの日本国内の代理店としてIP(知的財産)ビジネスを展開するソニー・クリエイティブプロダクツ(以下、SCP)。ライセンスビジネスに加えて近年新たに注力しているのが、ミュージアム運営だ。SCPの戦略を同社執行役員社長・長谷川仁氏に聞いた。(聞き手は日経クロストレンド編集長、吾妻拓)

東京・南町田グランベリーパークの「スヌーピーミュージアム」には、多くの撮影スポットがある
東京・南町田グランベリーパークの「スヌーピーミュージアム」には、多くの撮影スポットがある

編集長・吾妻 拓(以下、吾妻) ミュージアム運営が好調と聞きました。SCPはライセンス事業を柱とする会社ですよね。

長谷川仁氏(以下、長谷川氏) ライセンス事業が7割、ミュージアム事業が3割です。ライセンスではスヌーピーで知られる『ピーナッツ』は好調で、『バービー』や『きかんしゃトーマス』『ピーターラビット』なども変わらず人気があります。ただ、ライセンス事業は外部からのライセンス料の積み重ねでしかなく、そのビジネスには限界があります。特に今はモノが売れない時代で、特に玩具・文具・雑貨の業界は伸びていません。そんな中、自分たちで攻めていけるビジネス、自分たちで最初から最後まで完結できるビジネスをつくらないといけないと探ってきました。

ソニー・クリエイティブプロダクツの執行役員社長・長谷川仁氏
ソニー・クリエイティブプロダクツの執行役員社長・長谷川仁氏

吾妻 その一つの方法が、2016年に六本木に開館し、19年12月に東京・南町田グランベリーパークに移転した「スヌーピーミュージアム」だったということですね?

長谷川氏 ミュージアムに関しては当初ビジネスとして成功させようという意図はありませんでしたが、結果的に事業の柱の1本になりつつあります。SCPのメインの生業はライセンス事業で、現在、『ピーナッツ』においては約250社のライセンシーがあり、グッズを展開しています。その商品が売れる状態をつくるために、ある種宣伝のエンジンとしてミュージアム展開を始めました。

東京・南町田グランベリーパークに移転した「スヌーピーミュージアム」
東京・南町田グランベリーパークに移転した「スヌーピーミュージアム」

 スヌーピーというキャラクター自体の認知度は高いですが、元が4コマのコミックだということをご存じない方もいらっしゃいます。そしてコミックの魅力は、その奥深い哲学にある。こういうことを知ってもらったほうが、より深いファンをつくれるし、商品にも還元されるのではないかと考えました。

 六本木で展開した「スヌーピーミュージアム」(以下、六本木)は最初の半年で25万人を動員しました。半年ごとに展示が変わるので、ファンの方々が2年半通ってくださるだけでもありがたいことだと思ったんです。でも、実際には7割が新規の方でした。新しいファンづくりという面での効果は高く、ライセンシーの売り上げも伸びました。

吾妻 新規ファン獲得のために効果的だったのはどんな施策なのですか?

長谷川氏 テレビCM、新聞広告、交通広告などオールマイティーに宣伝を展開しています。初日にプレスデーや内覧会を開催したり、来場者が100万人を達成した際にはメディアをお呼びしたり、六本木と南町田グランベリーパークに開館した新「スヌーピーミュージアム」(以下、南町田)を合わせて約8000媒体の取材を受け、広告換算で11億円の効果がありました。あくまでも商品が売れることが目的なので、テレビなどで取り上げてもらう際も、ミュージアムをフックにスヌーピー自体を取り上げてもらうこと、今『ピーナッツ』が熱いという切り口の方向を意識しました。

 SNS施策を積極的に展開したことも、ボトムアップに大きくつながりました。六本木では当初、撮影の可不可エリアを細かく設けていましたが、途中からSNSでの拡散力を重視し、基本すべてのエリアにおいて撮影OKに切り替えたのです。スヌーピーのコアなファン層は30代以上ですが、この施策で20代女性の認知と来場が大きく拡大しました。現在の南町田では、“映える”フォトスポットをかなり増設しています。

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