医療衛生用品などを製造販売するピップ(大阪市中央区)が、新商品を大学生と共同開発した。1908年創業の老舗企業だが、ピップグループ初のCMO(最高マーケティング責任者)である久保田達之助氏が新たな取り組みを進めている。学生との共同開発の狙いや背景などを聞いた。(聞き手は日経クロストレンド編集長・吾妻拓)
ピップエレキバンでその名を知る人が多いピップ(大阪市中央区)が、大学生と共同開発した新商品を発売した。2020年3月に発売した「SLIMWALK for school 着圧細見えメイクソックス」だ。ピップの看板商品の1つである着圧ソックスSLIMWALK(スリムウォーク)シリーズには「MediQttO(メディキュット)」といった競合商品もある。SLIMWALK初の学生向けシリーズは、明治大学の公認サークル「マーケティング研究会」の学生らと共同開発し、若年層での浸透を狙った。その責任者が、19年11月に同社の取締役 商品開発事業本部長に就任した親会社フジモトHDの久保田達之助CMO(最高マーケティング責任者)だ。
世代を少し前倒し 将来に向けた商品の認知を狙う
編集長・吾妻 拓(以下、吾妻) 学生とコラボしたプロジェクトの発想はどこから生まれたのでしょうか。
久保田達之助氏(以下、久保田氏) 私が2018年6月にピップグループへ入社して、10月に開催した「COMPASS」という早稲田・慶応・明治大学生有志向けビジネスコンテスト発です。実務家教員を務める明治大学で2011年から開催している、新しい事業を考えるマーケティングコンテストなんです。これまでは当時私がいたJTB、ドクターシーラボやサッポロビール、大正製薬にも協力していただきました。学生は仕事をしていないだけに本当に消費者目線でしか考えない。大人になっちゃうと、利益や業態が……と考えてしまう。学生はそこがないので面白いんです。
「高校生向けのソックスを作るべきだ」という提案は、優勝した明治大学と次点の早稲田大学で偶然にも同じでした。商品化の予定はなかったのですが、審査員長を務めた弊社社長の松浦由治も、実は10年ほど前から高校生向けのSLIMWALKのような商品を作りたいと思っていたんですね。当時も意見を言ったらしいのですが、あまり現場に響かなかったそうで……。松浦からしたら、「ほら、見たことか」と(笑)。そこで学生たちに声を掛け、プロジェクトが始まったんです。
吾妻 高校生をターゲットにした狙いは何でしょう?
久保田氏 最近では、化粧品会社でもターゲットをどんどん若返らせていますが、マーケティングの王道で「幼い頃から慣れ親しんだ商品は、大人になってからも選び続ける」というのがあるじゃないですか。SLIMWALKをはき始める世代を少し前倒しすることによって、着圧ソックス=SLIMWALKと認知されることが重要だと思っています。新商品は将来的な役割への期待が大きいです。
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