USEN-NEXT HOLDINGSは、グループ全体で約4700人の社員の働き方改革を進める。コアタイムを設けないフレックスタイム制度やテレワーク勤務制度などの制度改革を実行し、成果が見え始めている。どのようにして実現したのか。プロジェクトの発案者である宇野康秀CEOに聞いた。(聞き手は日経クロストレンド編集長、吾妻 拓)
USEN-NEXT HOLDINGSは、IoTプラットフォーム事業、店舗向け音楽配信事業などを手がける「USEN」や映像配信サービス事業の「U-NEXT」などからなる。2018年6月に宇野康秀CEOが始動させたのが働き方改革を推進するプロジェクトである「Work Style Innovation」だ。「かっこよく、働こう(Be innovative for results!)」をスローガンに、週休3日勤務や早朝出社も自分の裁量で決められる自由度の高い「スーパーフレックスタイム制度」や、業務の場所やテレワークの利用回数に制限を設けない「テレワーク勤務制度」などを続々と開始。18年7月には本社も移転して、フレキシブルな働き方に対応するためのフリーアドレス、顔認証の入室セキュリティーシステムなども整えた。会社は本当に働きやすくなったのか?
内定承諾率と若年層の退職率に好影響
編集長・吾妻 拓(以下、吾妻) 19年6月、御社のグループ社員1223人に対して行われたアンケートの調査結果があります。1つは「スーパーフレックスタイム制度」について。もう1つは「テレワーク勤務制度」についてです。
吾妻 フレックスタイムについては「働き易くなった」が73%。テレワークに対しては「働き易くなった」が84%です。働き方改革を初めて1年たった今、これらの高い評価について、どう考えますか。
宇野 康秀(うの やすひで)氏(以下、宇野氏) 社員が「働き易くなった」とか「効率良くなった」とか、それはごく当たり前な感じです。こういうデータにならない方がおかしい。
吾妻 フレックスタイムについて働きやすさが「変わらない」は25%、効率も「変わらない」が32%いることについては?
宇野氏 もともと最大効率でやれていた人は変わらないですよ。
吾妻 1年取り組んでみて、会社のなかではどこが一番変わってきましたか。
宇野氏 このアンケートで見えていない数字でいうと、新卒採用の内定承諾率が大幅に上昇し、若年層社員の退職率は極端に下がりました。
吾妻 新卒採用の内定承諾率は、過去20年間、約40%だったのが、グループ一括の19年4月入社の採用では、約60%に上昇。20年4月入社の採用でも66%見込みとのこと。一方で、若年層社員の退職率も、かなり下がったようですね。
宇野氏 以前は、入社2年目などの若年層の社員から、一定の離職者が出ていたわけですが、今は非常に少ない。
吾妻 13年新卒と18年新卒の1年未満の離職率を比べると、3分の1にまで減少しているようです。その理由について、どう分析されていますか。
宇野氏 本質になったからなのかな……という気がします。
吾妻 本質になった?
宇野氏 職場に何時に来ても、来なくてもいいわけですから、少なくとも「働かされている」という意識の芽生えはないじゃないですか。
吾妻 そうですね。
宇野氏 働かされているのではない、自分の意思で働いているんだということに気がつく。働かされていると思うから、ストレスがたまって、「ほかに働きやすい会社がないか」と発想していく。つまり、「自分のせいではない」と考えるので、会社を辞める。しかし、今起こっている不具合が、本質的には、会社のせいではなく、自分のせいだということに気づくと、「会社を辞めて解決する」という単純な手段を選ばなくなるんじゃないでしょうか。
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