「芸能人2.0」――大手芸能事務所ホリプロ子会社、ホリプロデジタルエンターテインメント(東京・目黒)が目指すのは発信力とスキルを兼ね備えた芸能人の養成だ。YouTuberなどのネットクリエイター事業を展開する企業が増えているが、同社はどう事業領域を広げるのか。統括執行役員の鈴木秀氏に聞いた。(聞き手は日経クロストレンド編集長・吾妻拓)

 ホリプロデジタルエンターテインメント(以下、ホリプロデジタル)の所属タレントは現在12人(レッスン生1人含む)。ホリプロが長年培ってきたマネジメントのノウハウをベースにしながら、タレントが自己プロデュースによってWEB上での活躍の場を拡大し、リアルな世界でもその価値を活用したサービスを提供していく。それを可能にするのは、タレント自身の「発信力」と「スキル」の両輪。設立1年で、SNS(交流サイト)での影響力を持たなかったタレントたちが、同社のノウハウによってSNSのフォロワーを飛躍的に伸ばし、企業へのソリューション提案への活用事例を重ねつつある。

 ホリプロデジタル統括執行役員の鈴木秀氏はインフルエンサーマーケティング事業の「VAZ」創業メンバーの一人として、多くのネットクリエイターを育成し、ビジネスを創出してきた人物。ホリプロデジタルは「YouTuberやインフルエンサーの会社ではない」と語る鈴木氏に、同社の狙いや戦略を聞いた。

ホリプロデジタルエンターテインメント統括執行役員の鈴木秀氏
ホリプロデジタルエンターテインメント統括執行役員の鈴木秀氏

吾妻 拓(以下、吾妻) 設立から1年、ホリプロデジタルの事業の核は何ですか?

鈴木 一言で言えば「スマホからスターをつくる会社」です。ホリプロは従来、テレビや映画、雑誌などからスターを作る会社として成長してきました。しかし、昨今、人が一番見ているのはスマホだと思います。一番見てもらえるスマホからスターをつくるというのが、これからの時代の一つの手法だと考えています。

 よく、YouTuberやインフルエンサーの会社だと思われがちなのですが、実はそうではないのです。我々は「SNSを伸ばす」という非常に大きなノウハウを持っています。例えば、7月に当社所属を発表した景井ひなは、19年2月時点で全SNSのフォロワーが2ケタでした。しかし半年で、TikTokで68万、インスタグラムが7.5万、ツイッターで1.5万を超えるまでに数字を伸ばしました。我々は、なぜ伸びるかを仮説検証しており、この現象は再現性があるのです。全タレントが、ホリプロデジタル所属後、何かしらのSNSで万単位のフォロワーを持つに至っています。

半年でSNSのフォロワーが激増した、景井ひな
半年でSNSのフォロワーが激増した、景井ひな

吾妻 フォロワーを増やす具体的な方法論があるのでしょうか。

鈴木 そうですね。一人ひとりのタレントを「メディア」として見て、まず「コンセプト」を決め、どの「ターゲット」にどんな「価値」を届けるかを決めるのです。もちろん、タレントはあくまでも“人”ですのでメディア育成論とマネジメント論をミックスして進めていきます。そして、その価値をどうすれば実現できるかまで練っていきます。例えば、前述の景井ひなの場合、コンセプトは「スマホの中で見られるかわいい女の子」、ターゲットは「TikTokを見ている10代、20代の男女」。「すべての人に“かわいい”を提供すること」が彼女の価値です。では、どのように価値を提供したかというと、まず動画をドラマ仕立てにしました。

 具体的には、はやっている音楽のプロモーションビデオや、話題のテレビ番組やCMのパロディー動画を作ったのです。「顔がかわいい」は簡単に届けられますが、その先の「いかに価値を届けるか」が一番重要だと考えています。しかも、ここで大きなバズ(話題性)を生み出せば、ハッシュタグで当社の他の所属タレントにもつながり、彼らの動画も見てもらえることになります。

吾妻 多くのフォロワーを持っている強みを、具体的にはどのようなビジネスにつなげていくのでしょうか?

鈴木 8月に自社公式アカウントで1分間のドラマを全4話、TikTokで配信し、複数の所属タレントが演じるという、ドラマ形式のコンテンツを作りました。現在、このドラマ形式をベースにして、大手企業とアドネットワークを使ったドラマ仕立ての広告を模索している最中です。タレントの提供やドラマ制作だけでなく、視聴者の分析や企業側から彼らへの戦略的アプローチまで、ワンストップで提供できるのが我々の強みだと考えています。

8月にTikTokで配信されたコンテンツ
8月にTikTokで配信されたコンテンツ
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