ロボットやAIを駆使して人間の能力を高める「人間拡張」の実用化が、テクノロジーの進化を受けて目前に迫っている。Mira Roboticsでは、将来の人材不足を見越して家事代行サービスを提供するアバターロボット「ugo」を開発。2020年夏の実用化を目指すという。

アバターロボット「ugo」。サイズは高さ110×幅45×奥行き66cmで、重量は約72kg。実用化にあたっては42kg程度までの軽量化を図るとのこと。現状4時間のバッテリー駆動時間も改善される予定だ
アバターロボット「ugo」。サイズは高さ110×幅45×奥行き66cmで、重量は約72kg。実用化にあたっては42kg程度までの軽量化を図るとのこと。現状4時間のバッテリー駆動時間も改善される予定だ

アバターロボットのニーズは確実に増える

 パートナーロボットの開発を手掛けるMira Robotics(ミラロボティクス、川崎市)は、2019年10月9~11日にかけて開催された「日経クロストレンドEXPO 2019」の特別展示において、コントローラーで遠隔操作するアバターロボット「ugo(ユーゴー)」のデモンストレーションを行った。

 「ugo」は2本のアームと3つのカメラ、4つのセンサー、マイク、スピーカーなどを備え、遠隔操作に対応したアバターロボット。バッテリーを搭載しており、自走して目的の場所に移動できるほか、高さ調節も可能。床に落ちた物を拾えるのはもちろん、最長180cm程度まで高くできる。また、ハンド部分はアタッチメントになっており、作業に応じて最適な形状のハンドを選択できるという。

人の動きに追従してアームが動く。手首も回転する
人の動きに追従してアームが動く。手首も回転する

 ミラロボティクスの松井健CEO(最高経営責任者)は「高齢化が進み、人手不足になるとロボットのニーズは増える」とみる。「例えばウイルスに感染するリスクのある医療現場、被曝(ひばく)の恐れがある核再処理施設、冷凍倉庫など、家事支援以外にもロボットの活躍が期待される場所は多い」

ロボットの開発に並行して人材の育成が必須

 「ugo」の見た目はロボットそのものだが、実際に動かすのは2つのコントローラーを左右の手に持った“人”だ。コントローラーは空間認識センサーを搭載しているため、人の腕の動きをまねるかのように「ugo」のアームが動く。手首を返せばハンド部分が回転する。「握る」「放す」の動きは、コントローラーに搭載されたレバーで行う。Wi-Fiを経由した遠隔操作ながら、デモを見る限りでは、遅延はほぼなかった。

 実際に試してみたところ、確かに腕の動きに追従してアームが動くものの、距離感をつかむのが意外に難しい。デモでは実物を見ながらの操作だったせいもあるのだろう。実用化に際してはゴーグルを装着し、そこに映し出される映像を見ながらの操作になるので、距離感の問題は解消されるとのことだ。とはいえ、操作に慣れるのに時間がかかるのは間違いない。

左右の手にそれぞれコントローラーを持って操作する
左右の手にそれぞれコントローラーを持って操作する

 操作に慣れが必要な点について松井氏は「ugoを操作する人材の育成も手掛けていく。介護福祉士のような(ugo操作の)資格を認定する制度も考えている」と話す。ロボットの開発に加えて、人材の育成が同社のビジネス成功の鍵になりそうだ。

複数台の同時利用と段階的な進化で課題を解消

 ミラロボティクスでは、20年の夏をめどに「ugo」を利用した家事代行サービスの提供を開始する予定。通常は月額5万~10万円近くかかる家事代行サービスに対して、「ugo」のレンタル料は月額2万~2万5000円程度に収まるという。

 だが「ugo」の場合、1台につき1人は“操作する人”が必要だ。とすれば、一般的な家事代行サービスと同様の人件費がかかってしまうことになる。同社の言う低料金でのサービス提供は難しいのではないだろうか。

デモでは赤いボールを紙コップから紙コップへと移す操作が披露された
デモでは赤いボールを紙コップから紙コップへと移す操作が披露された

 松井氏は「最初は遠隔操作によって人が動かすが、その“動き”をデータ化して集積している。まずはそこからロボットがやりやすいところを切り出して自動化する。その上で人がやったほうがいいところは遠隔操作にする」と説明する。「将来的には、各場面での“動き”をAI(人工知能)が判断することで人の負担を軽減できる」

 また松井氏は、工場などで複数のロボットが同じ“動き”をするようなケースでは、1人が複数台の「ugo」を同時に操作することで効率化を図れると言う。

 AIの進化は著しいので、人による遠隔操作が減り、AIによる自動化が進むのは明らかだ。とはいえ完全自動のロボットが登場するまでは、いろいろな場面でアバターロボットが活躍することになるだろう。

(写真/酒井康治)