2019年10月9~11日に東京ビッグサイトで開催された「日経クロストレンド EXPO 2019」の最終日は、“愛車サブスク”のKINTO副社長・本條聡氏が登壇。同社は現在、欧州やアジアなどでグローバル展開を始めており、異業種との協業も積極的に進めるという。
手軽さと愛着を両立させる第3の選択肢
「KINTOが描く未来のモビリティサービス ~トヨタのサブスクリプションから~」と題した基調講演では、KINTO(キント、名古屋市)の副社長である本條聡氏が登壇し、同社が提供する「愛車サブスクリプションサービス」が誕生した背景と現状、将来に向けてのチャレンジについて語った。
「所有から利用へ」という顧客ニーズのシフトは、あらゆる業界で起きている。そんななか、2018年にトヨタ自動車(トヨタ)の豊田章男社長は「トヨタを『自動車をつくる会社』から『モビリティカンパニー』にモデルチェンジする」と発言した。これは、世界中の人々の“移動”に関わるあらゆるサービスを提供する会社になるという意味だ。
KINTOは、この発言を機にスタートしたトヨタのビジネスモデル変革の一翼を担うべく設立された。同社では「頭金なし、任意保険・自動車税コミコミ定額」のサブスクリプションサービスを提供している。
「KINTO ONE」と名付けられたこのサービスの特徴は、毎月一定額を支払えば、3年間にわたってトヨタの新車(全9車種、19年10月時点)に乗れること。最も人気が高いのはプリウスで、月額は税込み5万710円からだ。
本條氏は「競合のリース会社の料金に比べて価格競争力があり、残価設定型割賦を組んだ場合と比べても任意保険の等級によってはメリットがある」と語る。
いいクルマ=満足ではない、お客様目線の発想
KINTOがターゲットとしているのは、初めてクルマを買う若い世代や、結婚・出産、転勤などでライフスタイルが変化する世代、そしてクルマの運転が心もとなくなってきたシルバー世代だ。
「若い世代は等級が低く設定されるので任意保険の負担が大きい。しかし、KINTOでは任意保険も込みなのでお得感がある」と本條氏。「3年ごとに新車に乗り換えられる上、解約金が明示されているので中途解約もしやすい。KINTOなら生活の変化に合わせて『愛車』を気軽に乗り換えられる」
また本條氏は「シルバー世代にこそ、最新の安全装備を搭載したクルマが必要」と強調した。「KINTO ONE」では免許を返納した場合は解約金が発生しないため、あと何年クルマに乗るか分からないという人たちも安心して新車に乗れるというのだ。
「いいクルマなら売れる、お客様は満足するという発想から、お客様が何を求めているのかという『お客様目線』の発想へ転換したのがKINTOのサービスだ」(本條氏)
異業種とのコラボ、グローバル展開でシームレスな移動体験を
では、KINTOが目指すものは何なのか。本條氏は「サブスクリプションは第一歩。将来的にはさまざまなモビリティに(サブスクリプションを)広げ、シームレスな移動体験を、KINTOのサービスを通じて提供すること」だと言う。「車載カメラやチャイルドシートのレンタル企業とも提携を始めた。このような異業種とのコラボ、相互送客、キャンペーン連動を企画して、クルマがある生活の楽しさをお客様に届けたい」
国内だけではなく、欧州、米国のハワイ州、オーストラリア、アジアの一部の国々でも、KINTOブランドでのカーシェアリングなどが始まっているという。
「日本のお客様が海外に行ったときも、海外のお客様が日本に来たときも、KINTOブランドのサービス1つでどこにでも移動できる、そういう世界を実現したい」(本條氏)
レンタカーやカーシェアリングなど、いろいろなクルマの乗り方が生まれているが、「そんななかでクルマが単なる“移動の道具”になってしまうことを懸念している」と本條氏は言う。「数ある工業製品の中で『愛』が付くものはクルマ以外にない。われわれとしては、クルマはいつまでも“愛車”であり続けてほしいと願っている」
利活用の手軽さと、所有することで生まれる愛着、この2つを両立する第3の選択肢がKINTOだ。同社の取り組みによって、国内のみならず海外でも“シームレスな移動”が実現すれば、トヨタの目指す“モビリティカンパニー”への変革は大きく歩を進めることになる。
(写真/稲垣純也)
記事中、本條氏のコメントを修正しました。[2019/10/25 12:00]