世界初の本格的なMaaS(Mobility as a Service)プラットフォーム「Whim」(ウィム)を提供するフィンランドMaaSグローバルは2019年10月10日、日本でのWhimのサービスを柏の葉(千葉県柏市)で開始すると発表した。Whimのアプリは、19年度グッドデザイン賞のベスト100に選ばれている。

MaaSグローバルのSampo Hietanen CEO
MaaSグローバルのSampo Hietanen CEO

 日本でのサービス開始は、日経クロストレンド EXPO 2019の基調講演「まちづくりとMaaS ~三井不動産×MaaSグローバルが創る移動の未来~」において、MaaSグローバルのSampo Hietanen CEOが発表した。19年末にテストを行い、20年初頭に本格サービスを開始、20年春には月額制サービスを導入する計画だ。

柏の葉で開始するサービスの概要。タクシー、バス、カーシェアリング、自転車シェアリングが対象となる
柏の葉で開始するサービスの概要。タクシー、バス、カーシェアリング、自転車シェアリングが対象となる

 MaaSはモビリティ(移動手段)全体を1つのサービスとして捉え、一括して利用できるようにする考え方。Whimの場合、鉄道やバス、タクシー、レンタカー、自転車シェアなどさまざまな交通機関、移動手段の中から最適な組み合わせの移動ルートを検索し、予約や決済まで一括して行える。毎月定額もしくは都度支払いで利用する。

 Hietanen氏は「MaaSは大きな破壊であり融合でもある。Whimは自家用車の代わりになる。自家用車を所有しない人が増えれば、例えばこれまで駐車場だった土地を他のことに活用でき、不動産や建物といった街づくりが大きく変わる。これからの都市の生き残りのための成長につながる」とMaaSのメリットを述べた。

 日本でサービスを開始する理由は「欧州と違い他国とつながっていない独立した交通機関の体系があり、MaaSのショーケースとして理想的な環境だから」(Hietanen氏)という。柏の葉に続く都市でのサービス提供もすでに考えている。

 基調講演後半に、三井不動産 経営企画部 ビジネスイノベーション推進グループ グループ長 川路武氏とのディスカッションで東京での展開について話がおよぶと、「東京で自家用車を持っている人は多いがその使用率は低い。そして公共交通機関が非常に発達している。MaaSの市場として非常に魅力的な都市」(Hietanen氏)と期待を述べた。

 MaaSを展開していくうえで必要なのは「何を約束すれば、人々は自家用車を手放してくれるのか。それを提示すること」(Hietanen氏)だという。「1社だけでできることには限りがある。我々は広くパートナーを求めている。関心のある人は連絡を」と呼びかけた。

多様なアセットを結ぶ交通を最適化したい

 三井不動産は19年4月にMaaSグローバルへの出資を公表し、日本でのMaaS実用化に向けて協業を開始した。三井不動産は長期経営方針で「テクノロジーを活用し、不動産業そのものをイノベーション」することを重要施策としている。MaaSグローバルとの協業もその一環だ。

 協業の目的について、川路氏は「三井不動産はホテル、オフィス、住宅、商業施設、物流など何でも手掛けている。そうした多様なアセット(資産)を相互に結ぶ交通を最適化することで、利用者の利便性を向上したい」と述べた。

三井不動産 経営企画部 ビジネスイノベーション推進グループ グループ長 川路武氏
三井不動産 経営企画部 ビジネスイノベーション推進グループ グループ長 川路武氏

 協業に先立って川路氏は、「MaaSで何が変わるのかを実感したいと思い、自家用車の使用履歴とコストを分析して1回乗車あたりの利用料金を算出した。代替交通機関を使った場合と比べたところ、これならタクシーなどを利用したほうが安いのではと感じた」という。

 それでも自家用車を手放せない理由について「カーシェアの駐車場まで遠いなど代替手段の整備状況、タクシーはぜいたく品ではという固定観念、利用する都度出費することへの心理的負担、車がないといざというときに困るのではという保険的な心理など、いろいろ考えられる」(川路氏)と分析する。こうした状況を変えていくことが必要で、例えばマンションなら出入り口のすぐ前までタクシーが入って来られるようにするなど、モビリティと建物の融合も必要になるという。

 そのうえで将来的には「現在なら、マンションの賃料と駐車場代金を払っているところを、将来は賃料とMaaS使用料を支払う形になっていくかもしれない」(川路氏)と予測する。

 川路氏はMaaSのレベルを4段階で紹介し、「Whimはレベル1~3の要素を含んでいるが、街の要所と交通サービスがつながってデータが蓄積され、街の拠点が刷新される、レベル3.5の段階に来つつあるのではないか。そして、国や自治体、事業者が都市計画や交通の在り方について協業していくレベル4に持っていけるのではないか」と期待を述べた。

MaaSのレベル。現在はレベル3から3.5に移行しつつあるという
MaaSのレベル。現在はレベル3から3.5に移行しつつあるという

(写真/稲垣純也)