多様なアセットを結ぶ交通を最適化したい
三井不動産は19年4月にMaaSグローバルへの出資を公表し、日本でのMaaS実用化に向けて協業を開始した。三井不動産は長期経営方針で「テクノロジーを活用し、不動産業そのものをイノベーション」することを重要施策としている。MaaSグローバルとの協業もその一環だ。
協業の目的について、川路氏は「三井不動産はホテル、オフィス、住宅、商業施設、物流など何でも手掛けている。そうした多様なアセット(資産)を相互に結ぶ交通を最適化することで、利用者の利便性を向上したい」と述べた。
協業に先立って川路氏は、「MaaSで何が変わるのかを実感したいと思い、自家用車の使用履歴とコストを分析して1回乗車あたりの利用料金を算出した。代替交通機関を使った場合と比べたところ、これならタクシーなどを利用したほうが安いのではと感じた」という。
それでも自家用車を手放せない理由について「カーシェアの駐車場まで遠いなど代替手段の整備状況、タクシーはぜいたく品ではという固定観念、利用する都度出費することへの心理的負担、車がないといざというときに困るのではという保険的な心理など、いろいろ考えられる」(川路氏)と分析する。こうした状況を変えていくことが必要で、例えばマンションなら出入り口のすぐ前までタクシーが入って来られるようにするなど、モビリティと建物の融合も必要になるという。
そのうえで将来的には「現在なら、マンションの賃料と駐車場代金を払っているところを、将来は賃料とMaaS使用料を支払う形になっていくかもしれない」(川路氏)と予測する。
川路氏はMaaSのレベルを4段階で紹介し、「Whimはレベル1~3の要素を含んでいるが、街の要所と交通サービスがつながってデータが蓄積され、街の拠点が刷新される、レベル3.5の段階に来つつあるのではないか。そして、国や自治体、事業者が都市計画や交通の在り方について協業していくレベル4に持っていけるのではないか」と期待を述べた。
(写真/稲垣純也)