消費増税を機に、さらに注目度がアップしたキャッシュレス決済。なかでもQRコード決済は参入企業も多く、乱立状態となっている。東京ビッグサイトで10月9~11日に開催中の「日経クロストレンド EXPO 2019」で、3人のキーパーソンがキャッシュレス決済への取り組みについて語った。
決済事業者各社の取り組み
キャッシュレス決済の普及に向けて決済事業者各社の取り組みが進むなか、最も競争が激化しているのが「○○ペイ」という名称の付いたQRコード決済だ。それぞれが独自のポイント還元キャンペーンを打ち出すなどの手法で、シェアを奪い合っている。
現在の普及ペースをさらに早め、キャッシュレス決済の定着を図るには、何が必要なのか。日経クロストレンド EXPO 2019、2日目のキーノートは「日本にキャッシュレス決済は定着するか」がテーマ。キャッシュレス化の動きをけん引するQRコード決済事業者として、LINE PayのCOO・長福久弘氏、楽天ペイメント 楽天ペイ事業本部本部長・小林重信氏、メルペイ CBO・山本真人氏がパネラーとして登壇した。
セミナーの前半は、それぞれが各社のキャッシュレス決済推進の取り組みを紹介。長福氏は「LINE Pay」アプリの送金機能がよく利用されていることを挙げ、コミュニーケーションツールである「LINE」アプリ上の会話の延長として「LINE Pay」アプリが利用されていると話した。「プラスチックカードは話さないが、アプリなら利用者にメッセージを送ることができる。店舗の“LINE友達”である顧客がその店舗を訪れて『LINE Pay』で決済するというエコシステムが出来上がっている」(長福氏)
また小林氏は、電子マネー「楽天Edy」、楽天カードといった楽天グループのキャッシュレスプロダクトを紹介。それらを利用することで獲得でき、1ポイント1円で利用できる「楽天スーパーポイント」は、年間で約2500億円分が発行されているという。「楽天生命パーク宮城(東北楽天ゴールデンイーグルスの本拠地)、およびノエビアスタジアム神戸(楽天ヴィッセル神戸の本拠地)で実施した完全キャッシュレス化も成功し、両スタジアムで売り上げがアップした」と、小林氏は同グループが目指す完全キャッシュレスの取り組みを強調した。
「メルペイ」アプリは、フリマアプリ「メルカリ」との連携が特色だ。山本氏は「キャッシュレス決済は、まず使い始めてもらうことが必要。その点で、メルカリでの売り上げをそのまま決済に利用できる『メルペイ』は(チャージ無しで利用できる分)ハードルが低い」と話す。「メルカリ」での売り上げ・ポイントは合計で年間5000億円、利用者数は400万人に上るという。
消費増税と還元事業は追い風に
2019年10月の消費増税は消費者にとっては負担増だが、それに伴うキャッシュレス・消費者還元事業は、キャッシュレス決済の普及という面では追い風になった。各社ともアプリの利用者数が大幅に伸びたという。
とはいえ課題もあるというのが、やはり各社に共通する見解だ。キャンペーンなどで利用者数を増やしたとしても、継続して使ってもらえなければ普及は進まないというのだ。
そのためには「(キャッシュレス決済を)使い続けるメリットを利用者に提供する必要がある」と山本氏。小林氏は「ショッピングにエンターテインメント性を加味することを検討している」と話す。また長福氏も「小売店に協力してもらえるよう働きかけることも重要ではないか」と付け加えた。
多くの企業が参入し、シェアを奪い合う“レッドオーシャン”にも見えるQRコード決済市場だが、キャッシュレス決済全体では、プレーヤーが多いほうが間口が広がるという見方もできる。キャッシュレス決済が“日常”になったときの各社の対応も興味深い。
(写真/稲垣純也)