電車の降車駅などから目的地までをつなぐラストワンマイルには、たくさんのビジネスチャンスが眠っているといわれる。では、そこに提供されるサービス、ハード、ソフトにはどんな可能性があり、どんな課題を抱えているのか。東京ビッグサイトで10月9~11日に開催中の「日経クロストレンド EXPO 2019」で3人のキーパーソンがラストワンマイルへの取り組みについて語った。
日経クロストレンド EXPO 2019初日のキーノートのテーマは「次世代モビリティが編み出す『ラストワンマイル消費』」。登壇者は、ナビタイムジャパンの大西啓介社長、Luup(ループ)の岡井大輝社長兼CEO(最高執行責任者)、WHILL(ウィル)の杉江理CEO。
モデレーターは、「ポケモンGO」などの位置情報ゲームで知られるNianticの川島優志氏。近年は、電動キックボードや電動車椅子など、“次世代モビリティ”の開発が各方面で進められている。こうした乗り物の登場は、駅やバス停といった拠点に着いてから先の行動を大きく変える可能性があると川島氏は言う。
電動キックボードをはじめとする電動マイクロモビリティのシェアリングサービスを提供するLuupの岡井氏は「さまざまな規制があるため、日本では普及が進んでいないが、日本は電動マイクロモビリティと親和性が高い」と話す。「(バスやタクシーなど)人が人を運ぶモビリティは、いずれ採算が取れなくなる」と、電動マイクロモビリティの必要性を強調した。同社ではすでに愛知県の岡崎市や静岡県の浜松市で実証実験を進めるなど、規制緩和に向けての取り組みを進めている。
また、自動運転システムを搭載した車椅子を扱っているWHILLの杉江氏も「車椅子が持たれているネガティブなイメージを変えていく」と語り、安全性を担保することで高齢者や障害者にラストワンマイルを提供できる可能性を示唆した。WHILLの車椅子は空港内などで利用されているのが現状だが、これが一般にまで広まれば、同社の目指す、障害の有無にかかわらず「すべての人の移動を楽しくスマートにする」が実現することになる。
2人の発言を受けて、電車や車、徒歩などによる経路情報を提供するナビタイムジャパンの大西氏は、ラストワンマイルに向けたアプリの進化を紹介した。大西氏によれば「シェアサイクルの利用を想定したルートや、車椅子利用者に適した経路情報も提供可能になっている」とのこと。電動キックボードや電動車椅子が公道を走れるようになれば、当然、そういった経路検索にも対応すると大西氏は言う。
「ナビは最短距離を教えてくれるツールと思われているが、最適なルートとは、最短距離だけではない。『ドライブサポーター』という機能では、景観の良い道を優先した経路情報も提案できる」(大西氏)
次世代モビリティの登場は、ユーザーの移動時間の短縮になるとともに、ラストワンマイルの範囲内で新しいビジネスチャンスの発見にもつながる。サービス、ハード、ソフト面での各社の取り組みが実を結ぶ日はそう遠くないかもしれない。
(写真/稲垣純也)