グーグルの取り組みで有名になった「心理的安全性」はなぜ必要なのか。「日経クロストレンドEXPO 2019」の中で10月9日に開催されるセッション「禅から学ぶ最強のチーム作り〜『心理的安全性』を高める方法」(16:30~17:10)に登壇するZENTechチーフサイエンティスト・石井遼介氏が解説する。

石井 遼介(いしいりょうすけ)氏
ZENTech取締役チーフサイエンティスト・一般社団法人 日本認知科学研究所理事
神戸市出身、東京大学工学部卒。シンガポール国立大経営学修士(MBA)。学生時代から数えて3社を創業。ZENTechでは心理的安全性や行動分析の研究、サーベイ開発、統計分析を行うとともに、研修講座の設計・開発も担当。

 「心理的安全性」というキーワードが注目され始めています。このキーワードはGoogle社のチーム・パフォーマンスの研究プロジェクト「Project Aristotle(プロジェクト・アリストテレス)」が2016年 New York Timesの記事で取り上げられ、ビジネスの現場でも使われるようになりました。同プロジェクトは「チームが機能するために心理的安全性(サイコロジカル・セーフティー)が最も重要」としています。

「日経クロストレンドEXPO 2019」の中で10月9日16時半から開催されるセッション「禅から学ぶ最強のチーム作り〜『心理的安全性』を高める方法」では心理的安全性がなぜ必要なのか、チームの生産性にどのような影響を及ぼすのか。そして、マネジャーやリーダーとしてどうすれば心理的安全なチームを作ることができるのかをご紹介したいと思っています(イベントへの参加登録はこちら。リンク先のページで下にスクロールすると、10月9日の一番下に当該セッションがあります)。

 著者らの組織では、日本における組織の心理的安全性尺度を研究・開発し、数百以上のチームのデータを分析しています。加えて、組織の心理的安全性を構築するリーダーをトレーニング・輩出しており、大企業の幹部をはじめとしたリーダーたちが組織の心理的安全性を構築する際にポイントとなった点、苦労した点のリアルな情報を豊富に持っています。講演では心理的安全性に関する科学的な理論とともに、そういった生の情報から見えてくる知見をお伝えしていきたいと思います。

 その前段階として、ここでは「心理的安全性とは何か」について触れてみたいと思います。

チームは「teaming」という動詞で捉える

 私たちは職場で自然と「チーム」という言葉を使います。ですが、実はスポーツではなく、職場で「チーム」という言葉が使われ始めたのは、1980年以降のことです。MIT(マサチューセッツ工科大学)のOsterman教授は「チームという概念それ自体が、80年以降に職場で最も広まったイノベーションの一つだ」と言います※1。

※1 Osterman, P. (1994). How common is workplace transformation and who adopts it?. ILR Review, 47(2), 173-188.

 そして、心理的安全性研究の第一人者でもある、ハーバード大学のEdmondson教授は「チームは、teaming(チーミング)という動詞で捉えるべきだ」と言います。これは、知らない人を3人集めて「君たちをチームに任命する」と言っても、それだけではチームにはならないからです。その3人がお互いに同じ目標を持ったり、共に問題の解決に向けて取り組んだりすることで、はじめて「チーム感」が出てくるからです。

 teamingを「活動」と捉えると、単に部署や組織図の上で定義されるような書類上の「チーム」ではなく、プロジェクトや、何かのプロジェクトにひもづく小さなプロジェクトごとに、驚くほど多くの人が「teaming」を必要としていることに気がつくはずです。それは、部署や会社の枠をも超えて何かを前に進めたり、問題を解決したりするために、相互に依存し合うからです。

 例えば、法務部の1年生は、自分の仕事を「契約書のチェックだ」と思うかもしれません。もし彼が、自分自身をプロジェクトチームの一員だと位置付けることができれば、「どのような書き方をしたら、目標通り行かなかった場合でもプロジェクトのリスクを減らすことができ、思ったよりもうまく行った場合により大きく花開かせられるか」といった観点でチームに貢献できるかもしれません。

 実際にはチームの一員であるにもかかわらず、組織の縦割り制や評価制度のせいで自分自身をチームに位置付けることができず、結果としてプロジェクトに必要のなかった不利益や遅延を招いているケースが実はよくあります。