ビッグならぬ「ディープ」なデータが競争力に

 もう1つのコア技術が、人体をサイバー空間に作る「モデリング技術」だ。産総研では、人体工学やリアルな人間を研究室で詳細に分析したデータ(ディープデータ)を基に、コンピューター上に“デジタルヒューマン”を作製。「センシングデバイスによる簡易的な測定や断片的な身体情報を取り込むだけで、即座に個人それぞれのモデリングができる」(持丸氏)。その情報に基づき、必要な支援の度合いを選択・判定。リアルタイムにロボットなどでサポートを行う。

 日経クロストレンドEXPOの体験ブースでは、このセンシングとモデリング技術を駆使した展示を実施する。地面に前述の薄型圧力分布センシングシートを敷き、その上にバランスボールを設置。人が乗ることで、その人の体の情報を瞬時にフィードバックする。実際に計測している数値は圧力分布のみだが、サイバー空間にデジタルヒューマンを生成することで、例えば体の固さや姿勢などの情報をリアルタイムに可視化できる。人体拡張の基礎となる「適度なサポート」のコア技術を体験できるので注目だ。

「日経クロストレンドEXPO 2019」で展示予定のデモ。圧力分布センシングシートとバランスボールを組み合わせ、載った人の姿勢や体の柔らかさなどを可視化する
「日経クロストレンドEXPO 2019」で展示予定のデモ。圧力分布センシングシートとバランスボールを組み合わせ、載った人の姿勢や体の柔らかさなどを可視化する

 人間拡張技術は、前述のように介護やヘルスケアなどの課題解決に直結する。さらに、人に寄り添うロボットやサポート機器を活用することで、労働力不足の特効薬になる可能性を秘める。既に人間拡張研究センターは、がんこフードサービス(大阪市)と組んで、厨房から客席前まで料理を届ける配膳ロボットの実証実験を行うなど、この分野にも積極的に取り組んでいる。

がんこフードサービスと共同で実証実験中の自動配膳ロボット。客席まで自動で食事を届け、最後はスタッフが手渡しする仕組み。スタッフは接客に集中できるため、サービス品質を維持・向上する効果も
がんこフードサービスと共同で実証実験中の自動配膳ロボット。客席まで自動で食事を届け、最後はスタッフが手渡しする仕組み。スタッフは接客に集中できるため、サービス品質を維持・向上する効果も

 高齢化に伴う介護やヘルスケアの問題、そして少子化による労働力不足。これらは、日本が世界に先駆けて直面している社会課題だ。「今後、世界各国が同様の社会問題に悩まされることは間違いない。人間拡張の市場を日本でいち早く確立し、世界に輸出できる産業にしたい」と持丸氏は語る。

【日経クロストレンドEXPO 2019開催概要】
ヒト、モノ、家、店舗のデジタル化によって生まれる新しいビジネスが分かる3日間と題し、さまざまなセミナーや展示イベントを開催します。事前登録すれば聴講は無料です。公式サイトからお早めにお申し込みください。

日時:2019年10月9日(水)~11日(金) 午前10時~午後5時30分(開場 午前9時30分)
会場:東京ビッグサイト 西ホール
入場料:登録無料(事前登録で3000円の入場料が無料になります)
お申し込みは公式サイトから

(写真/古立康三、写真提供/産業技術総合研究所)