東京ゲームショウ2019の最終日・9月15日に、e-Sports X BLUE STAGEを会場では、「ぷよぷよチャンピオンシップ SEASON2 TGS特別大会」が開催された。優勝賞金200万をかけ、全18名の選手たちがぶつかりあった。

海外選手2名を含む、全18選手が出場

 「ぷよぷよチャンピオンシップ SEASON2 TGS特別大会」は、「ぷよぷよチャンピオンシップ SEASON2 6月大会」でベスト8に入賞した8人と、予選を勝ち抜いて出場権を得た8人の全16人のプロ選手に、海外特別招待選手の2名を加えた全18人で行われた。

 特別招待選手は、韓国開催大会「OSL FUTURES Phase1」で韓国人選手最上位に入った韓国代表のNero選手と、「ぷよぷよチャンピオンシップ in Taiwan」7月夏特別大会で優勝した台湾代表のAcliv選手だ。

 組み合わせは6月大会のベスト8に入賞した選手があらかじめ配置されたトーナメント表に対し、予選勝ち抜き選手と海外選手2名が抽選を行って決定した。ステージ上には2組の対戦コーナーが用意され、1回戦は2戦同時に、準々決勝からは1試合ずつ、という変則的な進行で試合は進められた。

 海外勢は最初の戦いを勝つことができず、早々に敗退してしまったのが残念。『ぷよぷよ』の魅力が海外にも広がりつつある証として悪くない試みではあったが、やはりまだ日本とそれ以外の国では技術的に差があるようだ。

今大会出場選手全18人。白いゲームシャツを着ている2人が、海外からの特別招待選手だ。左が韓国代表のNero選手、右が台湾代表のAcliv選手
今大会出場選手全18人。白いゲームシャツを着ている2人が、海外からの特別招待選手だ。左が韓国代表のNero選手、右が台湾代表のAcliv選手
今大会のトーナメント表。本人の予想すら裏切る展開で、「本名は吉田」こと、ヨダソウマ選手が勝利を重ね、見事優勝を果たした
今大会のトーナメント表。本人の予想すら裏切る展開で、「本名は吉田」こと、ヨダソウマ選手が勝利を重ね、見事優勝を果たした

「吉田、行けますよ」とヨダソウマ選手が優勝

 準々決勝までにくまちょむ選手やlive選手、ぴぽにあ選手といった注目の選手が敗退。準決勝に進出したのは、6月大会優勝のdelta選手、同率3位の高校生プロ選手、マッキー選手、ベスト8のヨダソウマ選手、そして予選から今大会出場を決めた抽選枠最後のひとり、レイン選手だ。

 過去の戦績から見ても有利と見られていたdelta選手をレイン選手が破り、高校生ながら安定した強さを誇るマッキー選手にヨダソウマ選手が勝利。決勝戦を戦うのがレイン選手とヨダソウマ選手という組み合わせになることを予想していた人は少ないのではないだろうか?

 大連鎖で一気に押し切るレイン選手と、小さな連鎖を繰り出して相手に先に大連鎖を発動させ、それを受けてさらに大きな連鎖で返す、というヨダソウマ選手。決勝戦でもお互いに攻撃的なスタイルでぶつかりあい、結果、優勝したのはヨダソウマ選手。本人もこの好調を意外に思うのか、大会途中では自ら「異様な大会」と称していたヨダソウマ選手だったが、優勝後にステージでコメントを求められると「吉田、行けますね。全国の吉田さん、吉田、行けますよ」とその実感をかみしめていた。

新GTRを中心に「新しい戦い方」を模索しているというdelta選手(左)。抽選枠から勝ち抜いてきたレイン選手の勢いに押されて敗退はしてしまったが、新たなスタイルに対する手応えを感じていたようだ
新GTRを中心に「新しい戦い方」を模索しているというdelta選手(左)。抽選枠から勝ち抜いてきたレイン選手の勢いに押されて敗退はしてしまったが、新たなスタイルに対する手応えを感じていたようだ
準決勝。優勝候補のひとりと目されていた高校生プロ選手、マッキー選手。あとひとつ勝てば決勝進出というところまで行きながら、ヨダソウマ選手に逆転を許してしまう
準決勝。優勝候補のひとりと目されていた高校生プロ選手、マッキー選手。あとひとつ勝てば決勝進出というところまで行きながら、ヨダソウマ選手に逆転を許してしまう
ここまでの試合の勢いから優勢が予想されたレイン選手は思わぬ苦戦に表情がどんどん曇っていく。対照的にヨダソウマ選手の顔には笑みが
ここまでの試合の勢いから優勢が予想されたレイン選手は思わぬ苦戦に表情がどんどん曇っていく。対照的にヨダソウマ選手の顔には笑みが
小さな連鎖を連続で決めてレイン選手の目論見を潰す、ヨダソウマ選手
小さな連鎖を連続で決めてレイン選手の目論見を潰す、ヨダソウマ選手

入賞した各選手、事前の予想は?

 大会後に入賞した4選手へのインタビューでは、各自が事前に予想していた優勝者と、自分の予想順位を質問してみた。

■優勝:「本名は吉田」ヨダソウマ選手
 謙遜抜きで優勝できるとは思っていなかったのですけど、いざ優勝してみるとすごくうれしいですね。たぶん、数週間くらい調子に乗ると思います。優勝するのは、レイン選手、delta選手、マッキー選手、それにぴぽにあ選手の誰かだと思っていました。自分は1回戦だけは突破しようという意気込みでした。

■準優勝:「ぷよぷよ降れ降れもっと降れ」レイン選手
 出場者のなかで自分がプロとしていちばんの新人で、勝てないだろうと最初は思っていたのですが、やってみたら意外と勝って調子に乗れました。最後は負けてしまいましたけど、自分にとってはいい経験になりました。自分はぴぽにあ選手が優勝すると思っていました。最近、すごく調子がいいことを知っていたので、その調子のまま来られたら厳しいと思っていたのですが、なんとか勝ててよかったです。ベスト4に入るのが目標でしたが、準優勝できてよかったです。

■同率3位:「巨人の火力」delta選手
 最近、新しい戦い方を試してまして、前回の公式大会よりもいい成績を残せて、個人的には悔いのない大会になったと思います。次はいい成績を残して優勝まで行きたいと思っています。自分は正直、優勝するのは自分だと思っていましたね。それぐらいの気持ちで行かないと勝てないので。新しいことに挑戦してそれが未完成だったのが敗因ですね。それが完成すれば優勝もできると思っています。

■同率3位:「寡黙な最強戦士」マッキー選手
 誰よりも『ぷよぷよeスポーツ』を練習してきた自信はあったんですけど、大会となると最後はちょっとだけ逃げに走ってしまって、それが敗因かと思います。次回からは勝負強さも鍛え上げていきたいと思います。優勝するのは自分だと思っていました。ただ、安定を求めて最後の一歩を安定したほうを選んだ結果、そのまま負けてしまったので、すごく悔しいです。

優勝者のヨダソウマ選手には200万円、準優勝のレイン選手には50万円、同率3位のdelta選手とマッキー選手には10万円の賞金が授与された
優勝者のヨダソウマ選手には200万円、準優勝のレイン選手には50万円、同率3位のdelta選手とマッキー選手には10万円の賞金が授与された
時間が経つごとに優勝の実感が沸き、表情が緩んでいったヨダソウマ選手。掲げているトロフィーには歴代の大会優勝者の名前が刻み込まれている
時間が経つごとに優勝の実感が沸き、表情が緩んでいったヨダソウマ選手。掲げているトロフィーには歴代の大会優勝者の名前が刻み込まれている

プロの業に興奮するその一方で考えたこと

 『ぷよぷよ』の歴史は古い。遡れば1991年10月に8ビットパソコンのMSX2、ファミコンのディスクシステムの2機種で広島のデベロッパー、コンパイルが発売したのがはじまりだ。しかし当初はまったく話題にならず、人気が出たのは92年発売のアーケード版、メガドライブ版から。当初から対戦のおもしろさが話題を呼び、大ヒットとなるが、コンパイルは経営破綻。セガに商標が移り、現在に至る。

 『ぷよぷよ』では画面上部から降ってくる「ぷよ」を積み重ね、同色のぷよ4個以上を連結させることで消していくアクションパズルだ。ぷよが消えることで上に積み重なったぷよが下に移動、そこでまた同色4個が連結されると「連鎖」が起こる。対戦では消したぷよの数に応じて、相手側のフィールドに無色の「おじゃまぷよ」が降り注ぐ。連鎖が重なることで相手に降るおじゃまぷよはどんどん増えていくため、対戦で勝利するためには、あらかじめ連鎖が起こるように積み重ねていくことが必須となる。

 この長い年月のあいだに連鎖を狙う積み方も研究が進み、階段、挟み込み、折り返し、GTR、さらにそのGTRの派生形と、どんどん複雑化してきている。eスポーツの試合においてプロ選手たちはほとんど考える間もなくぷよを積み上げていく。無造作にしか見えないその積み方に、実はきちんと「連鎖」への布石が打たれている。

 積み方だけではない。大連鎖を組むには時間がかかる。そこで、中規模の連鎖を組んで先に発動させ、相手の連鎖を阻止するなど、相手の積み方を見て、臨機応変に戦術を切り替えることが勝利には必要となるのだ。

 こうした試合での駆け引きは『ぷよぷよeスポーツ』を見る上での醍醐味ではあるのだが、その一方で、初心者には非常にわかりづらいものとなってしまっている。連鎖が発動してしまえばその爽快感は誰にもわかるのだが、そこに至るまでがとても難解なのだ。

 東京ゲームショウで行われる『ぷよぷよeスポーツ』の大会では、その試合の解説を、プロ選手が交代で行っていく。各選手が何を狙ってぷよを積んでいるのかといった戦術面に加え、ときにはプライベートでのエピソードが語られることもある。常日頃、ライバルとして研究している人たちの対戦を解説するその手腕は、みんな見事だ。

 ただ、その解説が前述のわかりづらさを完全に払拭しているかというと、疑問は残る。観客が見ているスクリーン上のゲーム画面に解説者が書き込みを行い、リアルタイムで、あるいは試合後の振り返りでその戦術を解説するといった、もう一歩踏み込んだ工夫があってもいいように思う。

 『ぷよぷよ』がゲームとして、また、eスポーツの競技種目として非常に優れたコンテンツであることは間違いない。しかし、歴史のあるコンテンツはそれが足かせになり、新たなファンを獲得しづらいという難点を持つ。海外への広がりを見せた今大会ではあるが、だからこそ、さらにファン層を広く厚くしていく何かが欲しい。そんなことを感じさせられた。

今大会では解説を飛車ちゅう選手とともに、写真中央のTom選手が務めた。左はMCの椿彩奈さん、右は『ぷよぷよ』スペシャルサポーターのゲスト、橘ゆりかさん
今大会では解説を飛車ちゅう選手とともに、写真中央のTom選手が務めた。左はMCの椿彩奈さん、右は『ぷよぷよ』スペシャルサポーターのゲスト、橘ゆりかさん

(文/稲垣宗彦=スタジオベントスタッフ、写真/志田彩香、写真提供=セガゲームス)

関連リンク
東京ゲームショウ2019特設サイト
東京ゲームショウ2019公式サイト

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