東京ゲームショウ一般公開日の9月14日・午後2時から、ホール10のe-Sports X BLUE STAGEを会場に『コール オブ デューティ モダン・ウォーフェア』のスペシャルマッチが開催された。日本のプロチームらが発売前の最新作で激戦を繰り広げた。
最新タイトルのオープンベータが8月13日から公開に
eスポーツの世界で『コール オブ デューティ(以下、CoD)』はとても人気の高いFPS(ファーストパーソン・シューター)タイトルだ。ただ、このシリーズは、同じ『CoD』というシリーズ名がつけられていても、第二次世界大戦、現代、近未来と、作品によってを舞台となる時代背景が異なるものが含まれるというユニークな特徴を持つ。
eスポーツの競技種目として取り上げられる作品も年ごとに違い、昨年は第二次世界大戦の『~ ワールドウォーII(CoD WWII)』、今年は近未来の『~ ブラックオプス4(CoD BO4)』でプロ選手たちは激戦を繰り広げた。そして来年の公式大会では、現代戦を扱った『~ モダン・ウォーフェア(CoD MW)』で選手たちは戦うことになるとすでに決定している。
ちなみにこの『CoD MW』、実は東京ゲームショウ2019の会期中には発売されてはいない。発売日は10月25日、つまり約1カ月も先なのだ。しかし、8月23日に「マルチプレイヤー先行アルファ」が、そして9月13日からはPlayStation 4版の「マルチプレイヤーオープンベータ」が先行で公開された。
マルチプレイヤーオープンベータは、その名の通り、マルチプレイモードで数々の新マップや新モードをいち早く、それも無料で楽しめるというもの。あくまでもテスト版なので動作に不具合があったり、最終的な製品版では変わってしまう部分があるかもしれないが、いち早く新作タイトルに触れられると、ファンの注目を集めている。
そんな状況のなか、リリースされたばかりの『CoD MW』を使って今回のスペシャルマッチは開催された。会場となったBLUE STAGEは満席。さらにその周囲を多くの立ち見客が取り巻くほどの大盛況だ。今年のTGSで行われたeスポーツイベントでもっとも多くの観客を集めたもののひとつとなった。
搭載された新モードでのスペシャルマッチ
今回のスペシャルマッチは『CoD MW』で新たに追加された「GUNFIGHT」という2対2で戦うモードで争われた。相手2人を倒せばそのラウンドでの勝利となり、1ゲームは6ラウンド先取、2ゲーム先取で勝利となるルールだ。
出場するのは、今年『CoD BO4』で‟Call of Duty World League Finals Open 2019(CWL)”への挑戦権を賭け、激戦を繰り広げて来たプロチームからの選抜メンバーだ。しかも、CWLで活躍を続ける世界的な『CoD』プレーヤーのAttachが来日して参戦することも決定。発売前の最新タイトル、話題の新モードで日本と世界のトッププレーヤーたちがどんな戦いが繰り広げるのか―。
出場するのは、以下の全5チーム、10選手。
●CYCLOPS athlete gaming(サイクロプス アスリート ゲーミング)
・Nicochaaaaaaaann(ニコチャン)
・Ngt(ナガト)
●Libalent Vetex(リバレント ヴァーテックス)
・sitimentyo(シチメンチョウ)
・xAxSy-(アクシー)
●Rush Gaming(ラッシュ ゲーミング)
・WinRed(ウィンレッド)
・Vebra(ベブラ)
●Unsold Stuff Gaming(アンソールド スタッフ ゲーミング)
・Duffle(ダッフル)
・NiRu(ニル)
●スペシャルチーム
・FaZe Clan所属:Attach(アタッチ)
・Rush Gaming所属:GreedZz(グリード)
ちなみにAttach選手とチームを組むGreedZz選手はRush Gamingの元リーダー。すでに現役を退いている彼が大勢の観客を前に再びオフラインマッチに挑むという点も本作のプロシーンを見て来たファンにとっては注目点となる部分だ。
優勝は常勝無敗のLibalent Vertex
試合に使われた「GUNFIGHT」というモードは2ラウンドごとに全員の武器セットがランダムで変化するところがユニークな点。威力の低さや反動の大きさから試合ではあまり選ばれないマイナーな武器を使わざるをえないケースも多発する。武器ごとの特性の違いをしっかり把握していないと勝つのは難しい。しかも今回の大会は前日に公開されたばかりのオープンベータを用いていたわけだが、そこはさすがに日本のトッププレーヤーたち。洗練された動きで緊迫感あふれる試合を展開していった。
決勝戦ではAttach選手のいるスペシャルチームに勝利し、見事、優勝を果たしたのは、Libalent Vertex。昨年のプロリーグで2位を獲得。さらにリーグ1位だったDetonatioN GamingをTGS2018会場で行われたグランドファイナルで破って日本最強の座を得たチームだ。つまりこれでLibalent VertexはTGSで二連覇を果たしたことになる。
実は昨年のグランドファイナル以降、CoDのプロチームでは選手の移籍や引退が相次いだ。なかでもリーグを制したDetnatioN Gamingの主要メンバーがLibalent Vertexへ移籍したことは大きな話題となった。他を寄せ付けずにリーグを制した覇者と、日本最強、その2チームがひとつに融合したのが現在のLibalent Vertexというチームなのである。
実際にLibalent Vertexの戦績は凄まじい。『CoD BO4』で争われた全4回の「CWL日本代表決定戦」すべてに優勝を遂げ、さらにそれに参加した全223チームから選出された上位4チームで争われた「日本最強決定戦」でも優勝と、すべての大会で優勝しているのだ。ゲームも違えばルールも違うエキシビションマッチとはいえ、当然、今回のスペシャルマッチでも大本命。
今回のスペシャルマッチでは言ってみればその本命が順当に勝つ結果に終わったわけだ。しかし、「日本一格闘攻撃が速い男」の異名を持つDuffle選手が面目躍如とばかりに格闘攻撃でキルを稼いだり、sitimentyo選手が投げナイフで連続キルを見せたと思いきや、それがボタンの設定ミスからであることが判明した瞬間など、観客で埋め尽くされた会場は何度も大歓声に包まれた。
また、世界屈指の選手であることを証明するかのようにエイミングの正確性、判断の的確さを見せつけたAttach選手のプレーも素晴らしく、詰めかけた観客も非常に高い満足感が得られたのではないだろうか。
発売前のゲームの新要素を、プロたちの戦いを通じて見せる。今回のスペシャルマッチは新作ゲームのプロモーションとして、既存の『CoD』プレーヤーに対して強力なアピールとなったはずだ。
大会後のトップ2チームの選手コメントは以下の通り。
■準優勝:スペシャルチーム
GreedZz選手 世界的に活躍するAttach選手といっしょにプレーすることに緊張しました。試合中は英語でしゃべっていたので、プレーよりも英語を話すことで脳ミソが疲れてしまいました。でもとても楽しかったです。戦略的なことを事前に話し合ったりはしていません。最初の試合はシンプルな英語で通していたのですが、Attach選手が熱くなるに従って細かい戦略を指示するようになっていきました。
Attach選手 観客の皆さんから伝わってくる熱気などもすごく、いい環境のなかで楽しく『CoD』がプレーできました。日本のプレーヤーは、すごく上手いと思います。まだ新しい「GUNFIGHT」というモードをじっくり遊びこんでいる感じがしましたし、プレーの精度を含めた実力もしっかりあるので、これから世界のシーンでインパクトを残していくようになるのではないでしょうか。
■優勝:Libalent Vertex
sitimentyo選手 『CoD MW』はプレー感覚が以前のゲームに近く、「昔ながらの『CoD』」に戻った感じがして、楽しくプレーできています。今回の優勝は『CoD MW』の製品版につながるいいスタートが切れたのかな、と思います。CWLの挑戦を続けているなかで、海外とのレベルは縮まってきてはいると思います。ただ、今回対戦させていただいて、個人の力の差も実感できたので、これからその差をもっと縮めていけるように頑張りたいと思います。
xAxSy-選手 sitimentyo選手が言うように、『CoD MW』は昔のシリーズ作品に近いプレー感覚が味わえます。「昔はプレーしていたけど今はやめてしまった」といったプレーヤーにも遊んでいただきたい作品です。今回の大会を通じてこれだけたくさんの人にゲームのよさが伝わったのはよかったと思います。今回は2対2でAttach選手と戦いましたが、個人の強さと連携の巧さを感じました。これから海外との差をもっと縮めていけるように頑張ります。
(文・写真/稲垣宗彦=スタジオベントスタッフ)
関連リンク
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