賞金総額100万円よりも、優勝の副賞として100000000ゴールドという超高額のゲーム内通貨が贈呈されることで話題となった「ドラゴンクエストライバルズ マスターカップ in TGS2019」。4人の凄腕プレーヤーによる戦いは、決勝戦で観客たちを沸き立たせる劇的な決着を見せた。
東京ゲームショウ2019の最終日、9月15日。e-SportsX RED STAGEで「ドラゴンクエストライバルズ マスターカップ in TGS2019」が開催された。これは思考型カードゲームとして人気の『ドラゴンクエストライバルズ』の公式大会であり、史上初となるカード使用制限のないマスターズルールでの最強決定戦だ。賞金総額100万円をかけて、オフライン予選を勝ち抜いた4人による3時間半におよぶトーナメント戦が行われた。
出場したのはアリィナ選手(予選1位)、リデ選手(予選2位)、トシ選手(予選3位)、あ選手(予選4位)の4人。ステージ上で行われた抽選により、第1試合はあ選手とトシ選手、第2試合はリデ選手とアリィナ選手が激突し、その勝者が決勝に進むという組み合わせとなった。
他の多くのeスポーツ大会と違い、『ドラゴンクエストライバルズ』は純然たる思考ゲームであり、反射神経を一切必要としないゲームだ。観客たちは、各選手がどのようなデッキを組み、どのような戦術で戦うかを予想しつつ、実際の打ち回しを堪能することになる。このため将棋や囲碁の対局の観戦にも似た緊張感の中、実況の言葉に耳を傾けつつ、時折の妙手に沸き立つという独特の雰囲気の中で大会は進んでいった。
決勝に進んだのはリデ選手とあ選手。リデ選手が1本目をとったものの、2本目をあ選手がとり返す白熱の展開。そして決着をつける3本目は、両者ともに「ラーミアを飛ばす」ことを目的としたデッキで挑む対決とになり、観客たちをどよめかせた。
『ドラゴンクエストライバルズ』は、相手側を攻撃してHPを削り切れば勝利となるゲームであり、短期決戦を目指すか、守備を固めての長期戦を挑むか、そういった駆け引きが妙味でもあるのだが、そんな中で「ラーミアを飛ばす」ことによって問答無用に勝利するという決着方法もある。この試合は、そんな一撃必殺の勝利法だけを目指し、双方が激突するというドラマチックな試合になったのだ。
ともにラーミアの準備が終わり、あとは飛ばすための条件をどちらが先に整えるか? という局面になったとき、あ選手が「敵のカードを妨害する」という戦術に出る。そしてラーミアを飛ばすために必須条件である「オーブ」を、敵の手の中から破壊してしまうことに成功する。この瞬間に勝負はついたも同然。最後は、あ選手のラーミアが悠々と空を飛び、この大会中でもっとも美しいビジュアルとともに3本目をとり、万雷の拍手とともに優勝を決めるという劇的な結末となったのだ。
高額のゲーム内通貨という副賞の持つ意味は?
優勝したあ選手に与えられた賞金は50万円。これは他のeスポーツ大会と比べるとけして高額ではないが、「ドラゴンクエストライバルズ マスターカップ in TGS2019」には、他とはちょっと違う副賞が用意されていた。
あ選手には、Nintendo Switch版『ドラゴンクエストX オールインワンパッケージ』、Nintendo Switch版『ドラゴンクエストXI S ロトエディション』といったゲームソフトが贈呈されるのみならず、オンラインゲームである『ドラゴンクエストX』のゲーム内で使用できる通貨・1億ゴールドが贈呈されたのだ。
ゲーム内の物価をご存じない方の説明すると、ゲーム内では薬草は、わずか8ゴールド。トップクラスの武器であっても数百万ゴールドで取り引きされており、そのことからも1億ゴールドが破格であることが分かる。一般的なプレーヤーならば、獲得するには数年が必要となる金額だ。
リアル世界での高額賞金ではなく、ゲーム内通貨で高額賞金を支払われるというスタイル(しかも他ゲームの通貨であるため、『ドラゴンクエストライバルズ』を遊ぶ上での有利さは発生しない)は、ゲームファンが覇を競うeスポーツの賞金としてふさわしいのかもしれない。運営側にも負担が少ないため、今後も流行するかもしれないと予感させる一幕だった。
(文/野安ゆきお、写真/志田彩香)