「Oculus Questはシュノーケリングくらいの手軽さ」(田宮氏)

 11月に発売予定のVR脱出アドベンチャーゲーム『Last Labyrinth』の開発を進めているあまたは、9月10日に同作品のOculus Quest対応を発表したばかりだ。高橋氏はOculus Questに対応した理由を「6DoFとハンドプレゼンス(VR空間内で手が使えること)」と明かす。

会場は満席
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 「当初は3DoFのOculus Goも検討したが、VRならではの体験を実現するためには6DoFとハンドプレゼンスが必要だと考え、一度はPC接続型のVRHMDとPlayStation VR(PS VR)で作ろうと判断した。だがその後、Oculus Questの発表を受け、変更した。VRは個人的な体験が強いデバイスなので、Questはヒットする可能性が高いと思う。モバイル用チップセットを使っているので(処理が)遅いところはあるが、開発チームは苦労しながら最適化している」(高橋氏)

 バンダイナムコアミューズメントのMAZARIAでは『アスレチックVR PAC-MAN CHALLENGE』でOculus Questを利用している。開発当初はOculus Questの処理性能に不安があったものの、「(あまり処理性能の高くない)この環境でどういう絵を出せるかという知見があれば、同じノウハウでできると思う」と田宮氏は語る。

 高橋氏も、「PlayStation 2や3あたりの、テクスチャーやシェーダーでうまく見せる匠の技術をうまく使えばできる」と同様の見解を示した。

 実際に『アスレチックVR PAC-MAN CHALLENGE』ができあがってみると、従来との体験の質の違いは大きかったと田宮氏は語る。

 「約10kgの『バックパックPC』を背負って歩き回る『ドラゴンクエストVR』をスキューバダイビングとすれば、Oculus Questはシュノーケリングくらいの手軽さと自由がある。『だったら自分も行きたい』と思えるような、体験としての質の差は出ている」(田宮氏)

「老後の新たな楽しみ方などにも可能性がある」(小山氏)

 スタンドローン型VRHMDによってゲームはどう変わっていくのかというテーマでは、小山氏がユニークな持論を展開した。

 「(ゲーム業界に)入ったときからゲームの本質はなんなんだろうと話していて、『心の美と健康』だよねと言っていた。ただ、心が落ち込んだとき、ゲームで活力を取り戻せても、(特に家庭用ゲームの場合は)体は動かさないし、本当の美と健康じゃない。でも(VRで)あれだけ動かせるようになると、本当の意味で新しい美と健康が生まれると思う。人生100年時代と言われ、健康の価値が加速度的に高まる中、スタンドアローン型VRで体を動かす全く新しい市場が生まれるのではないかと思う」(小山氏)

最後まで活発な議論が続いた
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 今後のVRHMDの姿や、普及に向けた課題については田宮氏がこう語った。

 「ハードの理想型はゴーグルからメガネになっていくことだろう。コントローラーはなしで、そのまま手で使えるようになってほしい。また、普及のためにはエンターテインメントだけでは弱いので、AR(拡張現実)のようにいったん実用に振られるフェーズがやってくるのではないか。仕事に便利、生活に便利という方向からハードの需要が増え、そこから開発者の挑戦にドライブがかかるといった感じだ。そこから戻ってきたとき、エンターテインメントとしてもさらに面白いものが作れるという流れがあるのではと思う」(田宮氏)

 また、小山氏は「セカンドキャリアを考えるときも別の生き方ができる。VRの中でものを作ったりもできるので、今後の社会では必要不可欠になっていくだろうし、そういう世界にシフトしないといけない。5GやAIなども組み合わせてそういう世界を作れればと思うのでが、そのとき中核に必要なのがVRHMDだろう」と展望した。

 高橋氏はVRがインターネットのようなプラットフォームになっていくと見る。

 「もはや『インターネットしてる?』などと人に聞かないように、VRとかXRとかもあえて言わなくなるくらいのプラットフォームになると思う。(VRやXRの)普通にデバイスを身に着け、ARクラウドみたいなもので現実が覆われているような未来が来ると、いろんな意味で人間が自由に解き放たれる時代が来ると思う」(高橋氏)

 ブルエット氏は、VRが人と人をつなげるものになるのではないかと展望した。

 「行けない場所に行くだけでなく、そこの人にも会いたい。別の世界に入っても自分しかいないならナンセンスだ。今はVRチャットなどでもアバターしか見えていない状態で、ゲームならそれでもいいが、恋人や奥さんとの関係ではだめだ。その人の感覚が分かるくらいにならなければならない。VRはいずれ人と人をつなげる場所になって行くと思う」(ブルエット氏)

モデレータを務めた日経 xTECHの東将大記者
モデレータを務めた日経 xTECHの東将大記者
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(文/写真/加藤康)