JsSU主催のe-Sports 特別プログラムに登壇したアジアeスポーツ連盟(AESF)のケニス・フォック会長に、現在に日本のeスポーツの状況と、今後のアジアでのeスポーツ戦略について話を聞く機会を得た。ケニス氏が思い描くeスポーツの未来に、日本はどう対応すべきか。

 ケニス・フォック会長は、今年の1月に行わた「ニコニコ闘会議2019」を始め、頻繁に来日しており、日本のeスポーツの発展のために精力的に活動している。今回もJeSUが主催する特別プログラム「2019年度日本eスポーツ連合(JeSU)活動報告&発表会」に登壇した。そこで2020年に中国深センで開催されるeスポーツトーナメント「eMaster」について説明をした。

 イベント終了後、時間を頂き、「eMaster」を始め、AESFの活動や日本での展開などについて話しを聞いてきた。

 「ニコニコ闘会議」でJeSUの岡村会長と登壇したときに、アジアカップの開催について言及をしていたが、今回ケニス会長が説明したeMasterとは別の大会であり、さらにこの2に加えて大学選手権も行い、アジアで3つのeスポーツ大会を開催することに言及した。

 「アジアカップは競技性が強い大会になりますが、eMasterはもう少しゆるい感じの大会になります。アジアカップは現時点では言えることはありませんが、2020年には公式発表ができると思います」(ケニス会長)。

アジアeスポーツ連盟ケニス・フォック会長。
アジアeスポーツ連盟ケニス・フォック会長。
[画像のクリックで拡大表示]

 昨年、インドネシアのジャカルタ/パレンバンにて開催された「アジア競技大会」では、デモンストレーション競技ながらeスポーツが参入し、その存在感を大きく示した。2022年に中国の杭州で開催されるアジア競技大会ではメダル競技になると言われており、その準備は着々と進んでいる。

 また、杭州大会の次の大会となる2026年大会は、愛知県名古屋市で行われることが決定しており、こちらでもeスポーツが種目になると見られている。ケニス会長によると、名古屋大会については、まだ大きな動きは見せていないが、すでにアジアオリンピック評議会(OCA)とは接触しているとのことだ。

日本eスポーツ推進協会(JEF)についても聞いた

 日本がアジア地区でeスポーツイベントに参加したり、アジア地区の各国が参加する大会を日本で開く場合、AESFの協力が必要となり、AESF側もJeSUに対して、日本での活動を任せている。そこで気になってくるのが、日本eスポーツ推進協会(JEF)の存在だ。海外への選手の派遣、海外タイトルの日本での展開などを目的としており、とりわけ中国とのつながりの強さをアピールしている。

 しかし、日本に複数の団体があることは、海外に向けては混乱になることはないのだろうか。ケニス会長に、JEFについても話を聞いた。

 結論としては、ケニス会長は「JEFの存在を認知しておらず、中国とJEFとのつながりについても聞いたことがない」と語った。アジアから見ると、JEFは存在自体が知られていないのかもしれない。

 ケニス会長はJeSUについて、eスポーツをしっかりとスポーツとして捉えており、eスポーツを後押しするためのルール作りもできていると話した。利益主体でなく、eスポーツ発展のために尽力しているeスポーツ団体として信頼しているとも答えている。

 中国のゲームイベントである「チャイナジョイ」などでJEFの活動が見られており、別軸での活動があるとはいえ、AESFを無視してアジアでの活動が行えるとも考えづらく、eスポーツ団体としての存在意義を再確認しなくてはならないかもしれない。

日本とつながりが深く、日本のeスポーツの問題点も指摘
日本とつながりが深く、日本のeスポーツの問題点も指摘
[画像のクリックで拡大表示]

 少しずつアジアを中心に世界とのつながりを持ち始めている日本のeスポーツだが、ケニス会長は、ここ数年の日本のeスポーツ市場についてどう見ているのだろうか。

 「eスポーツ大会などの参加者も増え、興味や関心を持っている人も目に見えて増えています。確実に、日本のeスポーツは拡大しています。今後は、日本国内だけで完結したり、海外から受け入れるだけでなく、日本から発信できるようになることを望んでいます。そのためには、国のサポートはあったほうが良いでしょう。何人かの国会議員の方と話をさせていただきましたが、eスポーツに対してポジティブにとらえている人が多く感じています。オリンピック競技となるためにも、国として動くべきでしょう。また、資金繰りも重要です。スポンサーは年々増えており、eスポーツに対する熱量が高くなっているのを感じます。今後は非ゲーム系企業のスポンサーが増えていけば、より盛り上がっていくのではないでしょうか」(ケニス会長)。

(文/岡安学、写真/加藤康)

関連リンク
東京ゲームショウ2019特設サイト
東京ゲームショウ2019公式サイト