東京ゲームショウの初日に実施された基調講演では、モバイル通信とスマホ、そしてゲームのキーパーソンが集結。日本で2020年の商用サービス開始が予定されている次世代の通信規格「5G」が、ゲームにどのような影響を与えるのか議論を繰り広げた。

通信会社、スマホメーカーそしてゲーム会社のキーパーソンが、5Gとゲームに関する議論を展開した
通信会社、スマホメーカーそしてゲーム会社のキーパーソンが、5Gとゲームに関する議論を展開した

ゲームに生きる5Gの技術とは

 2020年の商用サービス開始を控え、注目度が増している次世代のモバイル通信規格「5G」。東京ゲームショウの初日となる2019年9月12日には、基調講演「5Gインパクト~5Gによって“ゲームチェンジ”は起こるか?」が開催された。

 講演では最初に、NTTドコモの執行役員 5Gイノベーション推進室長である中村武宏氏が5Gの特徴について解説。下りの通信速度が20Gbpsとなる「高速大容量通信」、ネットワーク遅延1ミリ秒を実現する「超高信頼低遅延」、1平方キロメートル当たり100万デバイスの接続ができる「超多数端末」の3つの特徴を持ち、これは現在主流の通信規格「4G」の10倍に相当する性能を目指したものだと説明した。

 同社では19年9月20日より5Gのプレサービスを実施し、「5Gオープンパートナープログラム」でさまざまな企業パートナーと連携しながらサービス開発を進めているという。だが中村氏は、これまで5Gのすごさをアピールしたことで興味・関心は大きく高まったものの、「誤解を与えてしまった面もある」と説明。スペック上の5Gの性能を最初から全て提供できるわけでなく、エリアも当初は一部に限定されるといった実態をよく知った上で活用を進めていく必要があると話した。

 モデレーターを務めた日経xTECHの山田剛良副編集長は、5Gは無線部分だけでなく、無線基地局に近い場所にコンピューターを設置することで遅延を小さくする「モバイルエッジコンピューティング」(MEC)や、ネットワークを仮想的に分割し、高速大容量や超高信頼低遅延を求める用途に応じて帯域を変化させる「ネットワークスライシング」など、実際の通信を司るコアネットワーク側にも新しい技術が導入されると説明。それによって1つのネットワークでゲームプレーから配信まで、さまざまな用途に対応できることが、ゲームにメリットをもたらすとの考えを示した。

モデレーターの山田剛良
モデレーターの山田剛良
MECやネットワークスライシングなど、5Gのコアネットワーク側に導入される技術が、ゲームには大きく影響してくると見られている
MECやネットワークスライシングなど、5Gのコアネットワーク側に導入される技術が、ゲームには大きく影響してくると見られている

ゲーム開発者は“低遅延”に注目

 5Gの特徴が、ゲーム開発にどのような影響を与えるのか――。中国NetEaseのバイスプレジデントであるイーサン・ワン氏は、「クラウドゲームのように、これまでモバイル端末で実現できなかったゲームをより多く実現できるようになる」と話す。同社が提供する「荒野行動」などの多人数型の通信対戦ゲームに関しても、「(低遅延の実現で)もっと公平、平等になる」と回答。既存のオンラインゲームの体験を変える可能性があるという。

ネットイースのワン氏
ネットイースのワン氏

 ガンホー・オンライン・エンターテイメントの代表取締役社長である森下一喜氏は、作り手側の観点から「多人数型の通信対戦ゲームは遅延の問題が避けて通れない。(遅延があるので)やりたいことが実現できないことが多い」と話す。「(5Gによる低遅延の実現によって)完全同期型の対戦ゲームを開発できる」と期待を寄せた。

 だが一方で森下氏は、「ネットワークが速くなったからといってゲームが面白くなるわけではない。その環境下で何ができるかを考えていかないといけない」とも話し、5Gの環境に合わせた新しい形のゲームを考えていく必要があるという。

ガンホー・オンライン・エンターテイメントの森下氏
ガンホー・オンライン・エンターテイメントの森下氏

 そこで前述したMECやネットワークスライシングなど、コアネットワーク側の技術に注目が集まっているという。スクウェア・エニックスの執行役員/情報システム部 ジェネラル・マネージャーの佐藤英昭氏も、「インフラサイドで考えると、MECなどの活用で本当の意味で遅延がほとんどない世界が実現する」と話すが、MECを実現するためのコストが、ゲームを開発する上で重要なポイントになってくるのではないかと話した。

スクウェア・エニックスの佐藤氏
スクウェア・エニックスの佐藤氏

5Gはゲームイベントのあり方も変える

 一方、5Gに対応する端末メーカーのシャープの通信事業本部 パーソナル通信事業部長である小林繁氏は、「遅延が1ミリ秒にまで小さくなると、デバイスのインターフェースがゲームプレーのボトルネックになってくる」と話し、ディスプレーの書き換え速度のさらなる高速化などによって端末側の遅延を抑える必要があるとも話した。

 また小林氏は、5G対応スマホでは、「瞬間的なスピードだけでなく、それを持続できること」が重要なポイントになるとも解説。特に5Gスマホは、パフォーマンス低下の要因となる発熱が、CPUやディスプレーだけでなく、無線通信でも発生しやすいことから、「構造が大きく変わることが予想されるし、大胆な技術革新をが必須」と話す。その一方で5G時代には、「スペック表の時代じゃなくなる」とも。今後は持ちやすさや放熱など、アナログな部分での使い勝手が、スマホの評価に大きく影響するのではないかとまとめた。

シャープのスマホ「AQUOS」シリーズでは、ゲームプレーに影響する発熱を抑えるため、放熱を重視した設計に力を入れているという
シャープのスマホ「AQUOS」シリーズでは、ゲームプレーに影響する発熱を抑えるため、放熱を重視した設計に力を入れているという

 また5Gによって、ゲームの楽しみ方は変わるのだろうか? 中村氏は「これからは、場所と時間を一時的に活用するニーズが増えてくるかなと思っている」と回答。会場に5Gの設備を設置し、大勢でゲームを楽しむようなイベントのニーズが高まるのではないかと予想した。

 佐藤氏も「つながる人が多くて遅延が少ないとなれば、ライブイベントでの活用が適しているのではないか」と話し、既に大規模なイベントなどを実施している森下氏も、「見に来てくれるユーザーと一体化できたらいいなと思う」と回答。eスポーツなどゲーム関連のイベントでの5Gの活用にも大きな期待を寄せた。

(文/佐野正弘)

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