一般公開日が始まった東京ゲームショウ2019(TGS2019)。レノボブースはトップアイドル・宮脇咲良の登場で幕を開けた。展示の目玉はeスポーツ人気を反映し、同社のゲーミングPC「LEGION」……のはずだが、レノボ・ジャパンの広報が“自慢”したかったのはPCではなかった。

日経クロストレンドの人気コラムニストもTGS参戦

 日本が注目する一大イベントだけに、TGS2019の会場を歩けば知り合いに出くわすことも珍しくない。今回はレノボブースに親しい人を発見した。レノボ・ジャパンの敏腕広報にして、NECパーソナルコンピュータの広報部長でもある鈴木正義氏。言わずと知れた、日経クロストレンドの人気連載「風雲!広報の日常と非日常」の執筆者だ。もちろんレノボがTGSに出展を決めた段階で広報の鈴木氏が来場するのは想定できたので、偶然出くわしたわけではない。単にこちらから顔を見に、ふらりとブースを訪れただけだ。

TGS2019一般公開初日、大勢の来場者でにぎわうレノボブース
TGS2019一般公開初日、大勢の来場者でにぎわうレノボブース

 実はそろそろパソコンの買い替えを検討していたので、展示されているLEGIONの現物を前に、鈴木氏から「これ、お買い得ですよ~」と背中を押してもらうつもりだった。「確かに広報は営業マンのような一面があります」などと堂々コラムに書いているくらいだから(関連記事「お偉いさんから『広報はタダだから……』と言われて」)、こちらも「仕事もゲームもこれ1台で完璧。絶対損はさせません」とか、「穴の開いたデザインが部屋のアクセントになると思うんだけどな~」といった、報道記者をも惑わせる軽妙な語り口のトークが始まるかと待ち構えていた。

 おもむろにLEGIONに手を伸ばした鈴木氏。さあ、お薦めトークの始まりだ。内容次第では購入を真剣に検討しよう。

「ここ、見てください」と取っ手を握りしめるレノボ・ジャパン広報の鈴木正義氏
「ここ、見てください」と取っ手を握りしめるレノボ・ジャパン広報の鈴木正義氏
「私じゃないほうがいいですね」と鈴木氏からコンパニオンにバトンタッチ。はい、やはり“じゃないほうがいい”です
「私じゃないほうがいいですね」と鈴木氏からコンパニオンにバトンタッチ。はい、やはり“じゃないほうがいい”です
鈴木氏が自慢したいのは、これなのか……
鈴木氏が自慢したいのは、これなのか……

 鈴木氏はLEGIONの本体上部にある「取っ手」を、ぐっと握りしめた。本体の軽さでもアピールしたいのだろうか。「ここ、見てください」と強調する(だから取っ手ですよね)。これがLEGIONのアピールポイントなのか。けげんな顔をしていると、次に鈴木氏は「あれを見てください」とブースに設置した巨大なLEGIONのオブジェを指さした。何を言ってるのか全く分からない……。

 「あの大きなLEGION、下からだと取っ手が見えないでしょ。でも、ちゃんと付いているんですよ」(鈴木氏)

確かに下から見上げると、取っ手があるようには思えない
確かに下から見上げると、取っ手があるようには思えない

 そんなもの、誰が気にするか! と突っ込みたくなったが、鈴木氏のあまりのどや顔に「えーっ!! さすがこだわってますね~」と大人の対応を返すしかなかった。そこから先は言わなくても分かっている。レノボについて何か面白い記事を書けということだ。

あった! 「30万分の1」の“出合い”に感謝

 階段を上り、レノボブースに望遠レンズを向ける。

 「あっ、取っ手だ。間違いなく、取っ手がある(そりゃ、あると思っていたが)」

 期間中、30万人近くが訪れるTGSにおいて、この“取っ手”にこれほどまで執着する人間がいったい何人存在するか。そもそも気づく人はいるのだろうか。レノボ関係者を除けば、おそらく5人もいないだろう。ひょっとしたら自分だけかもしれない。取っ手にはさほど心を動かされなかったが、「30万分の1」の“出合い”に少しだけ得した気分になった。

 いつも自社のことをメディアに取り上げてもらおうと知恵を絞り、奮闘する広報パーソン。今回はすご腕広報・鈴木氏のわなに、まんまとかかってしまった。ただ、パソコンを買い替えるのはもう少し先になりそうだ。

あっ、取っ手があった!
あっ、取っ手があった!
間違いない、これは取っ手だ
間違いない、これは取っ手だ
実は角度によっては下からでも取っ手の存在を確認できる。しかし、何人が気づくだろう……
実は角度によっては下からでも取っ手の存在を確認できる。しかし、何人が気づくだろう……
鈴木氏から「暇なんですが」とメッセンジャーが届いたが、まさにこの原稿の執筆中だった。記事を書き終えた後、ふらりとブースをのぞいたが鈴木氏は確認できず。どこかでPCではなく、油でも売っているのかもしれない。呼び出してもらうのも申し訳ないので、コンパニオンにあいさつをしてレノボブースを後にした
鈴木氏から「暇なんですが」とメッセンジャーが届いたが、まさにこの原稿の執筆中だった。記事を書き終えた後、ふらりとブースをのぞいたが鈴木氏は確認できず。どこかでPCではなく、油でも売っているのかもしれない。呼び出してもらうのも申し訳ないので、コンパニオンにあいさつをしてレノボブースを後にした

(文・写真/酒井康治)

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