eスポーツはプロだけのものではない

――eスポーツがゲームにもたらした変化の1つに、家で1人で遊ぶものではなくなってきたことがあると思います。選手として出場するためだったり、観客として誰かを応援するためだったり、会場へと足を運ぶ楽しみが増えました。

歌広場: そうですね。僕が好きな対戦格闘ゲームは誰かと戦うことが遊び方の中心で、ゲームセンターに出かけて、そこにいる誰かと戦うものとして発展してきました。でも、eスポーツの大会には、プレーしない人も多く集まります。プレーヤーというよりも、もっと広い意味での「ゲームファン」が集まりますし、その顔が見えるようになったことは大きな違いだと思います。

――eスポーツの会場やプロチームのファンミーティングに行くと、女性のゲームファンが増えていることを実感します。

歌広場: 女性のプロゲーマーも増えましたね。皆さん、人前に出ることを意識していますから、かわいくてきれいでおしゃれです。

――以前、あるゲーミングチームのファンミーティングを取材したとき、観客の6割近くが女性で驚きました。好きなゲーマーと会えるので、皆さん、おしゃれに気合が入っていて、プレーもうまい人がたくさんいる。古くからのゲームファンからすると驚く景色も、今は普通なのかもしれません。

歌広場: いい話ですね。eスポーツがそれだけ浸透してきたということだと思います。eスポーツはプロゲーマーだけのものではないんですよね。全てのゲームファンのものだから、見るだけでもいいし、参加してもいい。カジュアルに楽しめるものだということが、もっと知られていいと思いますね。

「eスポーツはプロの文脈で語られがちですが、プロだけのものではないんです」(歌広場さん)
「eスポーツはプロの文脈で語られがちですが、プロだけのものではないんです」(歌広場さん)

19年は敗者がeスポーツの魅力を表す?

――ファン層を広げるという意味では、ゴールデンボンバーのメンバーとして広く知られている上、ゲーマーとしての強さも持つ歌広場さんは、伝道師として適任だったと思います。

歌広場: そうかもしれませんが、“貯金”が尽きてきている感じもします。僕はeスポーツイベントに呼ばれてコメントを求められると、その試合のすごさや魅力を僕の中にある「ゲームは楽しい」という気持ちでコーティングして外に出すんです。でも、その楽しいという気持ちがどんどん減ってきている感じがするんです。

――今まではゲーマーとしてゲームの楽しみをインプットしてきたのが、この1年はアウトプットのほうが多かったということでは?

歌広場: そうなんですよ! 熱意の貯金がもう尽きかけているのに、「まだあるはずだ!」と貯金箱をひっくり返しているような状況です。

――2回目の記事「金爆・歌広場淳、制作側から感じる「eスポーツ」捉え方の変化」にも、勝つことを求められすぎて、ちょっとゲームがつまらない時期があったというお話が出ました。そんな歌広場さんが今、「eスポーツの魅力」を問われたら、なんと答えているんですか?

歌広場: それはとても簡単で「下手でもいい」ということです。18年のeスポーツは、エクストリームなスポーツ、プロゲーマーのものでした。でも、19年は、敗者側にスポットが当たるべきなんです。

 勝っている人は自然と注目されます。インタビューされることも増えますし、その姿が目に触れる機会も多くなります。結果、目新しさがなくなって飽きが出てくる。ではどういう人にスポットを当てるべきなのかと言うと、敗者です。勝ててない、でも、やめない人。

 負けた人は勝った人に比べたら弱い。でもそれは勝者と比較したときの相対的な話であって、絶対的な強さとは違うんですよね。大会で負けてしまう。弱い。下手。では、意味がないのかと言うと、そうじゃない。敗者の発言をはじめ、パーソナルな部分を見たら、戦績とは別の魅力があります。

 19年以降は「下手であること」「弱いこと」が逆説的にeスポーツの魅力を表す年になっていくのではと思います。負けてもプロとして、あるいはゲーマーとしての道は続く。ほかのスポーツと同様に、敗者にもスポットが当たるべきなんですよ。