視聴者の反応でeスポーツ市場の拡大を実感

――eスポーツが注目されたことで、これまでゲームに関係なかった企業がさまざまな形でeスポーツに参入するようになりました。大手企業による大会やチームへの協賛も増えています。この影響をどう見ますか。

歌広場: お互いに知らない世界を知るいいチャンスなんじゃないかと思います。eスポーツのファンからすると、(大会や選手への協賛を機に)今まで知らなかったメーカーや商品を知るきっかけになるでしょうし、企業としても、今まで振り向いてもらえなかった層にアピールできるチャンスになるかもしれません。

 どの趣味もそうでしょうが、ゲーマーってゲームの世界だけあればいいと思っていて、その閉じた世界の中で、自分は何でも知っていると考えているふしがあるんです。だから異業種や知らない人が入ってきたときに、異物として嫌悪感を抱く人もいました。でも、そこで拒絶するのではなく、その外側にはもっと広い知らない世界が広がっていると知るきっかけになるといいですね。

――この1年で印象的だった出来事はありますか。

歌広場: 一番印象深かったのは、RAGE(CyberZが運営する国内最大級のeスポーツリーグ)に関わったときのことですね。僕は格闘ゲーム『ストリートファイターⅤ』のトーナメントにゲストとして定期的に出演させていただいているのですが、当初は「歌広場、引っ込め!」というコメントがたくさん付いたんです。それと同時に、「歌広場のことを何も分かっていないヤツがこんなに多いんだね」っていうコメントも出てきました。これは面白い現象だと思いました。

 それというのも、前者はゲーム関連の配信を見るのが好きでも『ストリートファイターⅤ』のゲームはあまり遊ばない人、後者は『ストリートファイターⅤ』を遊んでいる人なんですよ。

「ストリートファイターリーグ powered by RAGE」にもゲストとして出演(写真/岡安学)
「ストリートファイターリーグ powered by RAGE」にもゲストとして出演(写真/岡安学)

――なるほど。『ストリートファイターⅤ』と歌広場さんの関わりを知らない人が、このゲームの配信をそれだけたくさん見るようになった、ということなんですね。

歌広場: そうなんです。ゲームをあまり遊ばず、RAGEの配信を見るだけの人がそれだけいるということです。プレーヤーとしてのゲームタイトルのファンではなく、「eスポーツのファン」がそれだけ増えている。そこがとても印象的でした。

――広く言えばeスポーツを観覧する楽しさが確実に広がってきているんですね。

歌広場: 『ストリートファイターⅤ』に関して言うなら、この1年は大会としても新たな動きがあって面白かったですね。

 例えば、18年に始まった「ストリートファイターリーグ powered by RAGE」は、プロゲーマー1人、プロには及ばないがかなり腕の立つ人が1人、このイベントを機に新たにゲームを始めた初心者が1人の3人1組で戦うチーム戦のトーナメント。初心者が成長する様子を見せることで、eスポーツに興味はあるけどやったことがない人の背中を押そうということですね。それともう1つ、イベント運営側やゲームメーカーが、「ゲームはゲーマーのためだけのものではない」と提示する意味もあったと思うんです。

――eスポーツの話題ではどうしても「プロ」がフォーカスされがちですが、盛り上げるためにはゲームに興味を持ってくれる一般の層をもっと厚くする努力が必要です。RAGEの取り組みは、プロの戦いを盛り上げることとその層を拡大すること、その2つを同時に行う感じがありました。

歌広場: まさにそうですね。市場規模が何億円、大会賞金が何億円と、エクストリームな部分ばかりがとにかく注目を浴びた18年でした。でも、ゲームやeスポーツの面白さはそれだけじゃないと示す取り組みだったと思います。1つの大会で初心者とプロの対比が生まれ、結果としてプロゲーマーのすごさを際立たせることにつながっていました。

※2回目に続く

(写真/酒井康治=日経クロストレンド編集)