eスポーツの「翻訳者」としてハマった

――そんな中、歌広場さんも、eスポーツの解説や大会のMCなど、活動の幅が大きく広がりましたね。

歌広場: イベントに出させていただく機会が増えましたね。プレーヤーでも実況でも解説でもなく、ゲストという肩書で呼ばれることが多かったです。実況も解説もプロの方がいて、その方たちの言葉は、ゲームのファンにはきちんと伝わります。一方で、ゲームが特に好きではない層に伝える翻訳者のような存在をeスポーツ業界は探していたんだと思います。そこにうまくハマったのが僕だったのかな、と。

 ゲームの知識がそれなりにあって、それを面白おかしく翻訳して話すといったことが僕は好きなんです。例えば、「ストリートファイター」の大会で、プロゲーマーのときど選手と梅原大吾選手がチームを組んだら、ファンにはすごいと一発で分かること。でも、知らない人には伝わりにくい。そこで、「これはタモリさんと明石家さんまさんがチームを組んだくらいにすごいことなんだよ」と翻訳するといった具合ですね。

 その意味で、僕の立ち位置は「ゲームの好きなタレント」のままで、大きな変化はありませんでした。ただ、eスポーツが注目を浴びたが故に、18年より前のeスポーツがいかに狭い世界であったかを実感しました。

――関わる人の幅が広がったといったことでしょうか?

歌広場: お笑いの方とか、芸能人とか、ゲームに精通していない人までゲーム関連の番組やイベントに呼ばれるようになりました。もちろん、ゲーム好きの人からは「なんでゲームに詳しくない人を呼ぶんだ?」という疑問の声が上がるのですが、イベントを運営する側や番組の制作者にしてみれば、興味を持ってくれる人を増やすためには仕方ないという判断なんですね。

 今まではそういう疑問を持つようなシチュエーション自体がなかったわけで、だから逆に「始まったな」と思いました。

eスポーツが盛り上がったことで、「eスポーツがいかに狭い世界であったかを実感した」という歌広場淳さん
eスポーツが盛り上がったことで、「eスポーツがいかに狭い世界であったかを実感した」という歌広場淳さん

――洋画のふき替えやアニメキャラクターの声を声優を本職としない人が担当するときに、ファンから反発が起こることがありますが、それに似ていますね。ゲーマーとしてはその文脈にあった人選であってほしいという思いがあります。

歌広場: ゲーマー視点ではその疑問は当然なんですが、運営側として見ると、いろんなメディアにどれだけ露出するか、テレビ番組で取り上げられて、1秒でも長く映ることも大事です。だから今をときめくタレントを呼ぶこともあるんですよね。

――たとえ違和感があっても大きな話題となれば、回り回ってゲームファンのためにもなりますね。

歌広場: そうなんです。そう考えると、呼ばれたタレントや芸能人にゲーム愛があることが、みんなが一番ハッピーになれる状況と言えます。場違いに思われた人が、実はゲームのことをちゃんと分かっていると伝われば、ファンが抱いた疑問や違和感がプラスの評価に転じる可能性がある。eスポーツやゲームにとって、僕がその「分かっている存在」になれるように頑張ってきた1年でした。

 ゲームが好きだから僕が呼ばれているのはみんな分かっています。そのうえで「歌広場って、本当にゲームが好きなの? どれだけ分かっているの?」という疑問や視線と戦ってきたようなところがありますね。

――以前のインタビューでも痛感しましたが、歌広場さんの「ゲーム好き」は芸能人の中でもちょっと突出している感じがありますが。

歌広場: 言葉は悪いかもしれませんが、一般的にゲーム好きと言われるタレントさんの5億倍くらいは好きなんじゃないですかね(笑)。