W杯での躍進が記憶に新しい日本のラグビー。2019年11月、日本ラグビーフットボール協会は「新プロリーグ設立準備委員会」を設置し、トップリーグのプロ化へと舵を切った。日本ラグビー界はどう変わるのか。清宮副会長に聞いた。

日本ラグビーフットボール協会副会長 清宮克幸氏
日本ラグビーフットボール協会副会長 清宮克幸氏
大阪府出身。高校からラグビーを始め、早稲田大学とサントリーでは、選手として全国優勝を何度も経験。引退後は、早大、サントリー、ヤマハ発動機の監督を歴任。全チームを全国優勝に導いている。2019年6月から現職

W杯日本大会では、日本が4連勝でベスト8入りを果たしました。

清宮克幸氏(以下、清宮氏) 組織委員会や各自治体の努力もあって、開幕時点でかなりの高揚感があり、それに代表チームが最高の結果で応えてくれました。テレビ局などが積極的にW杯を取り上げたこともあり、これまでラグビーに見向きもしなかった人の多くが注目してくれました。この成功を、次につなげなくてはなりません。

現行の「トップリーグ」でも代表は強化できました。それでもプロリーグが必要なのでしょうか。

清宮氏 現在のトップリーグに参加している企業チームの多くは、社員の活力向上や社会貢献などの目的で運営されており、チケットの6~7割を企業が買い上げています。W杯を通じてラグビーファンになった人がトップリーグの試合を見ると、自分の会社を応援しに来ている人が多いのに気付き、「ちょっと違うな」と敬遠してしまうこともあるでしょう。また、今は営利事業ではないので、新たな資金を外部から獲得する活動はほとんどしていません。これでは、会場運営やファンサービスに予算が取れず、W杯のような魅力的な演出をするのは困難です。

 試合の魅力を向上させるためにも、親会社とは別の法人格を持ったチームを集めたプロリーグをつくり、「稼ぐ集団」にシフトする必要があります。数年前までのラグビー協会では、「プロ化はじっくり時間をかけて進めるべき」という構想だったのですが、日本でW杯が開催されたというチャンスを最大限生かして、2021年秋には始めようというのが僕のアイデア。日本が世界のベスト8に入った今なら、世界中の人が「日本にプロリーグがあるのは当然」と思ってくれます。

ラグビーの試合数は各チーム年15~20試合と少なく、入場料収入が限られます。収益をどこで上げますか。

清宮氏 日本のプロスポーツでは、プロ野球、Jリーグ、Bリーグが先行していますが、ラグビーのプロリーグはそれらとは違う形を目指します。試合数は確かに少ないですが、世界中のラグビーファンからの放映権収入が期待できます。というのは、日本でプロリーグができれば、世界の一流プレーヤーが日本に集まる可能性があるからです。野球やサッカーに比べれば、ラグビー選手の年俸は海外プレーヤーでも高くありません。また日本のラグビーシーズンは約5カ月間と海外に比べれば短いので、同じ年俸なら日本を選ぶトッププレーヤーもいるでしょう。そうなれば、欧州やオセアニアのラグビーファンも、日本での試合をテレビやネット中継で見るようになります。このポテンシャルは計り知れません。

 もちろん、会場の盛り上がりも大事です。現在のトップリーグの入場者数は1試合平均で約5000人。新リーグでは1万5000人以上収容できるスタジアムを想定しているので、満席にするには3倍のお客さんを集める必要があります。そこで活用したいのが“W杯の遺産”。今回W杯の試合が行われた会場の近くに拠点を置いて地域名を冠したプロチームをつくり、自治体の協力を得られればクリアできるのではないでしょうか。地域密着の施策については、JリーグやBリーグの成功事例をしっかり学んで「いいとこ取り」をしていければと思います。

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