※日経トレンディ 2019年12月号の記事を再構成
「てこ入れ」とはこのことを言うのだろう。看板商品、アサヒスーパードライの苦戦が続くアサヒビールが、32年ぶりに外部から取締役を起用したというニュースがビール業界をにぎわせた。その人こそ、松山一雄氏。サトーホールディングス前社長で、P&Gのマーケターだった経験もある。今、食品・飲料業界にP&G出身のマーケターが数多く入り、変革を起こしている。松山氏は、この老舗企業で何を仕掛けようとしているのか。
アサヒビールの印象はどうですか。
松山一雄氏(以下、松山氏) もともとアサヒスーパードライは、キリンビールのラガーが強かった時代に、「辛口」という新しい価値をもたらし、トップブランドへとのし上がったチャレンジャー。そのことをマーケターとしてリスペクトしていました。もし、今やっていることをうまくマネージすることがミッションだったら、ここには来なかったと思います。社長から話があったのは、「とにかく変革したい。閉塞感のあるなかで新しい価値をつくりたい」ということ。それなら願ってもない。即決しました。
アサヒビールといえば、チャレンジ精神や躍動感があり、ワイガヤと何かを変えていく……そんなイメージを持っていました。実際には、確かにそのDNAはあるのだけれども、それ以上に一生懸命に守るものが大きい。それが第一印象でした。
それを象徴しているのが、組織が縦割りであること。マーケティング、営業、経営企画、技術系や生産系などが、それぞれはしっかり考えているのだけれども、横の連携が無い。アサヒビールをこういう方向に変えていくんだという一枚岩にはなっていなかった。入社が2018年9月で、19年度の年次計画を作るときでしたが、本部ごとにバラバラに計画を作っていて後で合体させるという方法だったんです。これをまずやめようよ、と。
先に考えるべきは、アサヒビールとしてどういう経営をしていくのか。そこで役員に集まってもらって合宿もやって、考えたわけです。そのなかで、「真ん中に消費者を置く。アサヒビールのファンを増やそう」という理念が出てきた。縦割りの組織を壊すのに半年かかりました。
組織を変えるためにどんなことをしたのですか。
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