「エアモビリティ社会」の実現を目指す企業は世界中に存在する。日本のスタートアップ企業、A.L.I. Technologies(以下、A.L.I.)もその一つだ。同社が開発したホバーバイク1号機は2020年に市販される。A.L.I.の片野大輔社長に1号機の魅力と、電動化など将来の展望を聞いた。
「カッコいい」「乗ってみたい」と思わせる製品を
空飛ぶクルマやバイクが街中を行き交うエアモビリティ社会。多くの人がSF映画の世界と認識して、「遠い将来」の出来事と考えているのではないだろうか。あるいは社会実装の舞台が、最初は日本ではなく中国や欧米であると考えている人が大半ではないだろうか。
実は、日本でも経済産業省と国土交通省が合同で「空の移動革命に向けた官民協議会」という会合を定期的に開催している。18年12月にはロードマップが発表され、官民が事業をスタートさせるのが20年代半ば、具体的には「2023年が目標」とある。これは正式に閣議決定に至っており、エアモビリティ社会は早ければ4年後に幕を開けることになる。
東京モーターショー2019「FUTURE EXPO」の会場に展示されていたA.L.I.のホバーバイク「XTURISMO LIMITED EDITION」の発売は20年だ。カーボン素材を身にまとった精悍(せいかん)なスタイルは、他の展示車両と比べて圧倒的なオーラを放っていた。そのホバーバイクを見つめながら「エアモビリティ社会はおとぎ話ではありません」と片野大輔氏は話を切り出した。
19年3月に社長に就任した片野氏は、もともとエンジェル投資家、つまり最初は株主としてA.L.I.と関わりを持った。経営陣としてA.L.I.に加わった背景には、コンサルティングや経営支援のキャリアを重ねるうちに強くなった、ものづくりへの思いがあってのことだという。
「資本主義的な仕組みを利用してお金を稼ぐことは非常に重要で、それがあって経済は回ります。しかし、新しいもの、世にないサービスは、実務を積み上げることでしか生み出せません。そこにこそ様々なリソース、特に人材を注ぎ込むべきではないか。そして自分自身も金融的な手法ではなく、ものをつくり、世の中に発信していきたくなりました」
日本だけではなく海外のスタートアップ企業がどういう技術やアイデアを持っているのか、どんなところが投資家に注目されているのか、今も鋭くアンテナを張っている片野氏。エアモビリティを選んだ理由も、そうした選択眼あってのことかと思ったのだが、そうではないと断言する。
「市場やビジネスモデルを鑑みて合理的に選んだというよりも、いろいろな縁があったことが一つ。そして何より、『こういう乗り物が実現したらカッコいいじゃん』と思ったのが一番の理由です」と片野氏は笑う。
飛行可能なクルマを研究、開発しているメーカーはいくつもあるが、「ホバーバイクは我々以外、ほとんどどこもやっていません」と、自負をにじませつつ、「技術的に優れているのはもちろんですが、『カッコいい』とか『乗ってみたい』とユーザーに思われるものをつくっていかなければ意味がありません」と続けた。
記事中に掲載したコンセプトムービーを最新のものに差し替えました。[2019/11/11 11:00]
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