「SNSは否定しない。だが、弊害もある」

 もう一つ、小島氏が重視したことがある。「今とは違う、ネットの新しい使い方を見せたい」ということだ。

 「僕自身もSNSは活用している。好きなクリエーターを見つけたらすぐにSNSで感想などを発信し、距離を超えてつながれるのは今の時代ならでは。だからSNSを否定するつもりはない。ただ、誰もが直接つながれることの弊害もある」と小島氏。そこで考えたのが、「間接的なコミュニケーション」だ。

 デス・ストランディングは基本ソロプレイであり、だだっ広い草原や荒野をたった1人で走っていく。いくら進んでも、そこに残るのは自分の足跡のみ。「おーい!」と叫んでも反応はない。だが、あるところまでゲームを進めると、他のプレ―ヤーの存在を感じられるようになる。例えば、他のプレーヤーが休憩していた場所に痕跡があったり、他人の足跡が見えたりする。他のプレーヤーが残していった物資を利用したり、その反対に次に来る人のために道具を残していったりすることも可能だ。「届くのにタイムラグが大きい手紙では、互いに書いている、もしくは読んでいる相手の“その時”を想像するため、自然と思いやりが生まれる。このリアルタイムではない、直接見えない相手との間接的なコミュニケーションを、最先端のテクノロジーで再現した」(小島氏)。

 思いやりを醸成する仕組みも導入した。それが「いいね」の機能だ。例えば、ゲーム内で自由に置ける梯子(はしご)。谷を渡ったり、壁を登ったりと活躍するが、置いておいた梯子は、実は世界中のプレーヤーからも見え、それを使った他のユーザーは「いいね」を押して感謝を伝えられる。「使ってもらった方も役立ったことが実感でき、次第に誰かを思って行動するようになる」と、小島氏は狙いを語る。

人と人をつなぎ、アメリカ大陸を東から西へ向かう。梯子などの設置したアイテムは他のユーザーからも見えるようになる仕組み。「いいね」で感謝を伝えることもできる。メインの荷物運びを主軸にしたストーリーの他に、プレーヤー間での荷物運びミッションなども用意しており、長く遊べる。 ©Sony Interactive Entertainment Inc. Created and developed by KOJIMA PRODUCTIONS.
人と人をつなぎ、アメリカ大陸を東から西へ向かう。梯子などの設置したアイテムは他のユーザーからも見えるようになる仕組み。「いいね」で感謝を伝えることもできる。メインの荷物運びを主軸にしたストーリーの他に、プレーヤー間での荷物運びミッションなども用意しており、長く遊べる。 ©Sony Interactive Entertainment Inc. Created and developed by KOJIMA PRODUCTIONS.

AIから逃げ続け、新しいことを常に追う

 デス・ストランディングで新しいゲームの形、つながりの形を提案した小島氏は、既に次のゲームの制作に動き始めている。大好きだという映画の製作にも熱意を見せる。さらに、「2025年の大阪万博でアトラクションやパビリオンなど、何か新しいことをやりたい」とも笑う。「AI(人工知能)の進化は著しく、クリエイターはAIが追いかけてくるのをひたすら逃げるしかない。同じことをやっていても意味がない。だが、その一方で、技術の進化でクリエイターは1人でも作品を生み出しやすくなっている。クリエイター受難の時代といわれるが、そんなことはない。僕は今56歳だけれど、今の20代の方が楽しいと思う」(小島氏)。この好奇心と創作熱の強さこそ、小島氏がヒットクリエイターであり続ける証明だろう。

小島は、小説や映画など様々なコンテンツに触れ合うのが趣味。美術展などにも足しげく通う
小島は、小説や映画など様々なコンテンツに触れ合うのが趣味。美術展などにも足しげく通う

(写真/竹井俊晴、写真提供/ソニー・インタラクティブエンタテインメント)