2020年のヒットメーカーに直撃する本特集。第1回は2019年4月に発売した「カップヌードル 味噌」が計画を大幅に上回る売れ行きで一時販売休止となるなど(8月に販売再開)、ヒットを生み出し続けている日清食品の安藤徳隆社長だ。安藤社長はトレンドをどのように捉えているのか。

日清食品の安藤徳隆社長。1977年生まれ。2007年に日清食品に入社し、経営企画部部長や日清食品ホールディングスCMO(グループマーケティング責任者)、CSO(グループ経営戦略責任者)などを歴任し、15年4月から現職
日清食品の安藤徳隆社長。1977年生まれ。2007年に日清食品に入社し、経営企画部部長や日清食品ホールディングスCMO(グループマーケティング責任者)、CSO(グループ経営戦略責任者)などを歴任し、15年4月から現職

 「味噌が売れた第1の理由はロゴを『漢字』にしたから」

 「なぜカップヌードル 味噌がヒットしたのか」というこちらの質問に対し、安藤社長の第一声は衝撃的だった。しかし、冗談ではないという。「もともとカップヌードルはフォークで食べるイメージで統一するなど、洋風の世界観でやってきた。だから、これまでに発売した味噌味の商品は表記を『MISO』にしていた」(安藤社長)。

2019年4月に発売し、計画を大幅に上回る売れ行きで一時販売休止となった「カップヌードル 味噌」。8月に販売再開
2019年4月に発売し、計画を大幅に上回る売れ行きで一時販売休止となった「カップヌードル 味噌」。8月に販売再開

 それを、2年前にシニア向けのミニサイズで発売する際、ロゴを漢字にする一方、今どきのアクティブシニアを意識し、あえて優しい味ではなくピリッと辛い味噌味にしたところ、非常に好評だった。その後、幅広い世代から「レギュラーサイズはないのか」という問い合わせが殺到し、満を持して19年4月に投入したわけだ。

 さらに同社はここ数年、若年層を開拓してユーザーの裾野を広げるべく、「HUNGRY DAYS」のような若年層向けコミュニケーションを重点的に行ってきた。その結果、高校生・大学生のカップヌードルの喫食率は3年で1.2倍に。そんな若年層にはカップヌードルと味噌という組み合わせのギャップが新鮮で、これまでに味噌味があったことを知らないユーザーも多かったという。

 19年度の「Cup Noodle World」戦略も大きい。流通との取り組みを強化し、定番化しているレギュラー、カレー、シーフード、チリトマトの「四天王」をメインに、“NEXT STANDARD”と呼んでいる、しお、欧風チーズカレー、味噌を加えた7品を前面に出した「七福神」フェアを実施した。それによって店頭での露出が増えたというわけだ。

 一つひとつの商品を別々に広告するのではなく、テレビCMで日清食品とカップヌードルブランドのマインドシェアを高めたうえで、店頭で多彩な選択肢を提示する。「店頭の棚の前に立ったときに、七福神や『エスニック』『リッチ』『コッテリーナイス』『あっさりおいしい』など特徴の異なる商品がそろっていれば、消費者は自分にちょうどいいものを見つけることができる」(安藤社長)。これがCup Noodle World戦略の核心といえる。

レギュラー、カレー、シーフード、チリトマト、しお、欧風チーズカレー、味噌の「七福神」に加え、『エスニック』『リッチ』『コッテリーナイス』『あっさりおいしい』など特徴の異なる商品を展開する「Cup Noodle World」戦略
レギュラー、カレー、シーフード、チリトマト、しお、欧風チーズカレー、味噌の「七福神」に加え、『エスニック』『リッチ』『コッテリーナイス』『あっさりおいしい』など特徴の異なる商品を展開する「Cup Noodle World」戦略

 そうなると、日清ブランドやカップヌードルブランドとしていかにエッジが立った発信ができるかが鍵になる。そういう意味で最近の出色の例と言えば、「HUNGRY DAYS」シリーズの続編だろう。

 『ONE PIECE』(ワンピース)とコラボレーションしながらも、絵やストーリーにオリジナリティーを加えた。「ワンピースを使っているCMは他にもあるが、尾田栄一郎さん以外の人に絵を描かせるところはないだろう」(安藤社長)。

 HUNGRY DAYSといえば、17年の前シリーズで展開した「魔女の宅急便篇」「サザエさん篇」「アルプスの少女ハイジ篇」がおなじみだが、新シリーズの第1弾「ゾロ篇」は19年5月の公開直後からSNSで拡散され、2日間で同社史上最多となる1500万回再生を突破。19年9月17日時点での累計再生回数は2100万回を超え、前シリーズ3作の合計をすでに超えてしまったという。

 その大きな要因は隠れキャラを数多く登場させたこと。ゾロ篇では隠れキャラを53人登場させたが、公開後2日間でほとんど見つけられてしまったという。まさにカップヌードルならではの料理の仕方といえる。

HUNGRY DAYS新シリーズ第1弾「ゾロ篇」は2019年5月の公開直後からSNSで拡散され、2日間で同社史上最多となる1500万回再生を突破
HUNGRY DAYS新シリーズ第1弾「ゾロ篇」は2019年5月の公開直後からSNSで拡散され、2日間で同社史上最多となる1500万回再生を突破
新シリーズ第2弾(19年9月13日公開)は「ナミ篇」。隠れキャラが79人も登場
新シリーズ第2弾(19年9月13日公開)は「ナミ篇」。隠れキャラが79人も登場

 さらに、「今はサブカルが中央に来る時代。サブカルを面白おかしくど真ん中にもっていくのも日清食品のやり方」と安藤社長は明かす。カップヌードルではVTuberのキズナアイやロックバンドのマキシマム ザ ホルモン、日清焼そばU.F.O.ではVTuberの輝夜月(かぐやるな)を起用している。

VTuberの輝夜月が登場する日清焼そばU.F.O.のCM「マキシマム ザ 輝夜月2 篇」
VTuberの輝夜月が登場する日清焼そばU.F.O.のCM「マキシマム ザ 輝夜月2 篇」
マキシマム ザ ホルモンがCM制作も担当したカップヌードル コッテリーナイスのCM「体に気を使ってこそロック 篇」
マキシマム ザ ホルモンがCM制作も担当したカップヌードル コッテリーナイスのCM「体に気を使ってこそロック 篇」

 「サブカルを面白おかしくど真ん中にもっていく」という考え方は広告だけではなく、商品開発にも生かされている。減塩商品をあえてカップヌードルブランドで出し、完全栄養食に参入したのもその流れだという。「ヘルシーコンシャスはまだまだ市場規模が小さい。それを日清食品が面白おかしくど真ん中にもっていくことで、カテゴリーに壁をなくす。10年後には『完全栄養食といえばカップヌードル』と言われるようになっているかもしれない」(安藤社長)

(次回に続く。9月25日公開予定)

(人物写真/的野弘路)