ブランド設立に必要な機能を提供するデジタルのプラットフォーマーの登場により、D2C(ダイレクト・トゥ・コンシューマー)が増殖中。特集第8回では「販売」「マーケティング」機能を提供する企業を紹介する。ライブコマースや支援者の貢献度可視化ツールでD2Cを支える。
D2Cブランドはその名の通り、ECを活用して直接顧客に商品を販売するケースが多い。リアル店舗を持たない代わりに、商品の品質向上などに費用を投じることで、顧客の満足度を高める。そのオンライン上の販売の場として、多くのD2Cブランドから支持を集めるのがBASE(東京・港)だ。同社は無料でECサイトを構築できるサービス「BASE」を提供している。出店数はこの2年で2倍に拡大し、80万店を超えた。アパレル、化粧品、酒類、アクセサリー、菓子、生花まで幅広い商材の店舗が出店している。
「10年前はD2Cと呼ばれるブランドは少なかった。販売や決済のプラットフォームを自社で構築することが難しいうえに、集客できないからだ。小規模のブランドがネットで売るにはECモールに出店するしかなかった。それが大きく変わった。売る場所も(顧客を)呼ぶ手段も自分で作れるようになったからだ」。D2Cブームの背景をこう解説するのは、BASE代表取締役の鶴岡裕太CEO(最高経営責任者)だ。
BASEは、誰でも簡単にネット上に売り場を作れるサービスを提供する企業として創業した。初期費用、月額費用ともに無料でECサイトを構築できる。かかる費用は決済手数料のみ。利用ブランドの顧客が注文した金額に応じて決済手数料3.6%と、サービス利用料3.0%を徴収する。売れたときにだけ利用料が発生する成果報酬型にすることで先行投資を不要にし、ECサイト構築のハードルを下げた。さらに、多様なテンプレートを用意することで、知識がなくてもブランドの世界観を表現できる利便性も支持される理由だ。
出店者のうち、成功する企業に共通する特徴の1つにライブコマース機能の活用が挙げられる。BASEは、午前10時~午後9時59分の間、いつでもリアルタイム動画を配信できるアプリを出店者向けに提供している。ライブコマースとは、リアルタイムの動画配信で顧客とコミュニケーションを取りながら商品を販売できるサービスを指す、ライブとコマースを掛け合わせた造語だ。テレビショッピングのネット版を想像すると分かりやすい。ただし、D2Cブランドは売ることだけが目的ではなく、あくまで顧客とのコミュニケーションに主眼を置いて活用するケースが多い。
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