米国では大企業によるD2C(ダイレクト・トゥ・コンシューマー)ブランドの買収が相次いでいる。日本でもそうした事例が表れ始めた。大手アパレルメーカーのワールドは2019年6月に子会社を通じて、婦人靴のD2Cブランド「gauge(ゲージ)」を展開する神戸レザークロス(神戸市長田区)を約6億4400万円で傘下に収めた。

神戸レザークロスのセミオーダー型のハイヒールブランド「gauge」は、女性木型師の五十石紀子氏が生み出した
神戸レザークロスのセミオーダー型のハイヒールブランド「gauge」は、女性木型師の五十石紀子氏が生み出した

 ワールドによるgauge買収の狙いは、パーソナライゼーションアパレルの強化にある。同社は19年春に、カスタムシャツ事業の米オリジナルを子会社化した。オリジナルの「Original Stitch」は、自分好みのサイズやデザインのシャツをECサイトで購入できるカスタムシャツブランドだ。

 オリジナルの子会社化を発表するに当たりワールドの上山健二社長は、「進化する顧客ニーズに対応すべく、これまでのモノづくり、販売というチャネルに新たな技術を組み合わせて、ファッションの価値を改めて突き詰めていきたい」と意気込みを語った。ワールドは神戸レザークロスの子会社化により、パーソナライゼーションアパレルの領域を婦人靴にまで広げたい考えだ。

 では、ワールドが買収したgaugeとはどのようなサービスなのだろうか。事業主体となる神戸レザークロスは婦人靴ブランド「エスペランサ」を展開するほか、他のメーカー向けに靴の木型を作り納品するBtoB(企業間取引)事業を展開している。木型とは靴の原型だ。木型師と呼ばれる専門家が、木材を削って作る。顧客であるメーカーの要望に応え、ミリ単位で木型を削って調整する技術力が問われる。この原型を3Dデータ化して納品する。神戸レザークロスは、この木型師を自社で抱える珍しいメーカーだ。

注文できるハイヒールの組み合わせは138万通り

 gaugeは同社で働く1人の女性木型師のアイデアから生まれた。「左右でサイズが異なる人はとても多い。靴ひものないハイヒールはフィット感が重要になる」と、事業を担当する神戸レザークロス生産本部資材チーム木型室小売本部ゲージサブリーダーの五十石紀子氏は言う。足にフィットしない靴を履き続けることは、体の負担につながる。五十石氏自身も「以前はスーツを着て、ハイヒールを履く仕事だった」ため、働く女性の悩みがよく理解できる。

 働く女性の悩みを解決するために生まれたのがgaugeだ。特集第1回で分類した「課題解決型D2C」と位置付けられる(関連記事『新世代デジタルブランド「D2C」の正体 日本でも市場が急拡大』)。

 gaugeは顧客の足のサイズを採寸して、左右に適したサイズの靴を組み合わせたセミオーダー型のハイヒールを販売する。既製品では対応しきれない左右の違いに対して、実際に採寸して左右に適した商品を提供する。計測は機械を活用する。計測器に足を入れると、3Dで採寸データが取得できる。とはいえ、そのデータに基づいて単純にサイズを選べばいいわけではない。素材や型、肌や筋の硬さの相性次第で、履き心地が異なるという。データを参考にしつつ、最後は試着をして適したサイズを決める。サイズ選びは木型師の知識の見せどころだ。

 また、gaugeは左右で異なるサイズを提供するだけではなく、同じサイズでも12型の木型の中から、最も顧客の足に適した型を片方ずつ選ぶ。フルオーダーではないが、これらの細かなサイズのほか皮の色や素材などを組み合わせて自分好みの靴を作れる。デザイン、サイズ展開の掛け合わせは実に138万通りに及ぶ。価格は3万7800円(税込み)からとなる。

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