D2C(ダイレクト・トゥ・コンシューマー)先進国の米国では、オンライン発でスタートしたブランドが実店舗を構えるケースが増加中だ。特にニューヨークのSOHO地区周辺には、次々とD2Cブランドの店舗が誕生している。商品の体験機会の提供と収益化を兼ねた店舗を、顧客接点の場として活用する。
高品質のマットレスは高い。この常識を覆したのが、マットレスや枕などの寝具を販売するD2Cスタートアップ企業の米キャスパーだ。同社のマットレスは、既存の高級品にも引けを取らない品質ながら、直販モデルにしたことで、300ドル台からとリーズナブルな価格を実現。金銭感覚が堅実な一方で、商品やブランドに対するこだわりが強いとされるミレニアルの支持を受け急成長。メガネのD2C米ワービーパーカーや、アパレルのD2C米エバーレーンに続き、ユニコーン企業(評価額10億ドル以上の未上場企業)になった。
成長に伴い、D2Cブランドが実店舗を設けるケースは多い。ワービーパーカーはその代表例だろう。同社を始め、D2Cの実店舗は商品を試せるショールーム型であることが多く、店舗で体験しても実際に購入するのはECサイト経由だ。その狙いは顧客データの収集にある。
こうした収益を目的としないショールーム型店舗を第一世代とするならば、体験と収益を兼ね備えた第二世代とも言える店舗を展開するD2Cブランドが増えている。キャスパーもその一社。モノを売るのではなく、キャスパーのマットレスで昼寝ができる有料のスペースを展開する。ただし、スペースの利用予約はネット経由。ECが軸であることには変わらない。
100日体験と10年保証でユニコーンへ
キャスパーが力を入れるのは「体験」の創出だ。マットレスは毎日使用することから、一定の投資は必要と考える消費者は多い。一方で、睡眠の質にこだわると高額のマットレスを選ばざるを得ず即決しにくい。キャスパーはこうした消費者ニーズを捉え、質と価格のバランスを取った商品作りで支持を集めた。さらに、100日間の無料体験と10年の保証を付けたことでより購入のハードルを下げた。100日間使用すれば商品の良しあしは十分理解できる。
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