身長155cm以下の女性を対象としたアパレルD2C(ダイレクト・トゥ・コンシューマー)ブランド「COHINA」は、Instagramを活用した顧客との関係構築に長けている。毎日のライブ配信で取得した意見を商品開発にも活用。商品1点の創業から約1年で月商が5000万に達するなど、順調な成長を遂げている。

身長155cm以下の女性向けアパレル「COHINA」はInstagramをフル活用して、事業を成長させる
身長155cm以下の女性向けアパレル「COHINA」はInstagramをフル活用して、事業を成長させる

 「D2Cを始めようと意気込んで、ブランドを作ったわけではない。(自ら好んで)選んだのではない身長という体の特徴で、ファッションを楽しめる選択肢が狭まっていることはおかしい。その思いを具現化していった結果、世の中で言われるD2Cというモデルに落ち着いた」

 こう話すのは、COHINA創業者の1人でブランドのディレクターを務めるnewn(東京・渋谷)の田中絢子氏だ。COHINAは20~30代の女性を対象としたアパレルブランド。最大の特徴は、身長155cm以下の女性のみを対象としている点にある。

 サイズ表記は通常のアパレルブランドと同様のXS、S表記だが、丈やパターンを見直し、直しなしでも小柄の女性にぴったり合うデザインになっている。商品販売は現在自社ECサイトのみ。商品ページでは洋服を着ているモデルの身長を明記することで、顧客がサイズ感などを判断しやすい作りを目指している。

 サイズに悩む小柄な女性の服選びを自由にしたCOHINAは、特集第1回で日経クロストレンドが分類した「課題解決型D2C」と言える。同ブランドはわずか1点からスタートした。ネットを軸としたD2Cは小さく始めて、顧客の反応を見ながら徐々に規模を拡大できるのが利点だ。そうした成長路線は、短期間で一定の規模を求めがちな大企業には描きにくい。D2CならではのモノづくりをCOHINAからは学ぶことができる。

商品ページには必ず、洋服を着ているモデルの身長を記載して、サイズ感をイメージしやすくしている
商品ページには必ず、洋服を着ているモデルの身長を記載して、サイズ感をイメージしやすくしている

 日本人女性の平均身長は年代により多少前後するが157~158cm。一方、田中氏は身長148cm、共同創業者の清水葵氏は151cmといずれも小柄だ。「ショッピングセンターに行っても、可愛いと思った洋服はことごとく自分に合わない」(田中氏)。裾に特徴のあるパンツであっても、体形に合わせて丈を直すと本来のデザイン性を失ってしまう。既製品の中には小柄な女性を対象としたブランドも存在したが、「テイストに偏りがあり、大人の女性が普段着として着られる物が少なかった」(清水氏)。

 好きな洋服を自由に選べない。そんな創業者自身が抱える不満を解消し、小柄な女性でもファッションを楽しめるようにするために生まれたのがCOHINAだ。マーケットも決して小さくはない。田中氏は「日本人女性のおよそ20%が対象体形になる」と言う。アパレルは選択する理由として嗜好性が強いため、全員がCOHINAの顧客にならなかったとしても事業として十分成立する規模だと判断した。

Instagramは小柄な女性向け“メディア”

 ブランドコンセプトは固まった。これをどのように売るかが次の課題になる。特集第1回で記述した通り、名もなきニッチなブランドを購入してもらうには、対象となる顧客層の共感を得ることが重要だ。創業者2人はいずれも20代。「SNSで育ってきた世代だ。自分たちの経験から、SNSで見て洋服を買う行為は当たり前だった」(清水氏)。そんな、自分たちの購買体験をひも解いた結果、Instagramを顧客獲得の主軸に据えた。

 興味深いのは、最初の商品ができる2カ月前からInstagramのアカウントを作り、情報を発信し始めた点だ。ブランドの情報発信が目的ではない。小柄な女性に役立つファッション情報の発信だ。自分たちが普段着ている私服や、コーディネートをするうえで気を付けるポイントなどを紹介することで「小柄な女性がフォローすると、何かしら役立つ情報を得られる場所にしたかった」(清水氏)と言う。目指したのは、小柄な女性向けファッションメディアと言っても差し支えないだろう。投稿には「#低身長」といったハッシュタグを付けることで、対象者の目に触れる機会を増やすことを狙った。

 ブランドコンセプトに沿った“メディア“作りをすることで、小柄という同じ悩みを抱えるフォロワーを集めた。その大半はCOHINAの見込み客だ。低身長に悩む当事者である創業者2人が情報を発信しながら、フォロワーの悩みに答えることで共感を生み出していった。