D2C(ダイレクト・トゥ・コンシューマー)と呼ばれる新たなブランドが勢力を拡大している。米国ではユニコーン企業(評価額が10億ドル超の未上場企業)が続出。大手企業による買収も相次ぐ。国内でもD2Cを名乗るブランドが相次いで登場し、大手企業による投資も進む。D2Cとは何者か。その正体を探る。

ネット発のメガネのD2Cブランド「Warby Parker」はリアル店舗を急拡大させる
ネット発のメガネのD2Cブランド「Warby Parker」はリアル店舗を急拡大させる

 2019年8月28日、米大手ファストファッションのフォーエバー21が破産申請の準備を進めていると報じられた。17年には、米ラルフローレンがニューヨーク5番街の旗艦店を閉鎖するなど、ブランドビジネスは苦境に立たされている。

 SNSの登場は、消費者のライフスタイルに大きな変化を及ぼした。より自分らしさを追い求めるようになり、嗜好性の多様化が進む。ミレニアル世代は企業に与えられるのではなく、自ら選択する消費を好む。大手企業が得意とする大量生産、大量消費を想定したマスプロダクトや、テレビCMなどで一律で同じ情報を与えて購買を促すマスマーケティングは新世代のニーズに応えることは難しい。

 マスマーケティングを得意とする日用品王者の花王ですら「スモールマス」を掲げ、細分化が進むSNS時代の消費者ニーズを捉えようともがく。この大手企業の”隙間“をぬって、ニッチなニーズを捉えた小規模なブランドが急速にその数を増やしつつある。それらはD2Cと呼ばれる。いずれも小売り企業を介さず、顧客に直接商品を販売するのが特徴だ。文字通りの、ダイレクト・トゥ・コンシューマーブランドである。

 先行する米国では、設立当初こそネットを中心とした小規模な事業者だったD2Cブランドが瞬く間に売り上げを拡大。ユニコーン企業が続出している。

 下記はユニコーン企業に仲間入りした、主なD2Cブランドの一覧だ。スーツケースのD2Cブランド「Away」を展開する米アウェイは、旅行者約1000人への調査から、スーツケースに求められる機能を追求。創業から2年半で50万個を販売した。美容メディアを発端に立ち上げられた化粧品ブランド「Glossier」は、Instagram世代の心を捉えた。創業者でありCEO(最高経営責任者)のエミリー・ウェイス氏は「約1カ月で2万人がこのポップアップストアを訪れ、20秒に1回のペースで商品が売れた」と語るほど、顧客から圧倒的な支持を得ている(関連記事「20秒に1回売れたコスメGlossier 創業者は終日インスタで顧客観察」)。

米国D2Cブランドの主なユニコーン企業
米国D2Cブランドの主なユニコーン企業

 また、大手企業による買収も相次ぐ。19年2月、米プロクター・アンド・ギャンブル(P&G)が生理用品のD2Cブランドのディス・イズ・エルを1億ドルで買収したと報じられた。17年には米ウォルマートが男性衣料D2Cブランドのボノボスを3億1000万ドルで買収。英蘭ユニリーバが、月額制でひげ剃りを届けるD2Cブランドのダラー・シェイブ・クラブを10億ドルで買収したことも記憶に新しい。

 規模が急拡大しているD2Cブランドは、リアルをも侵食し始めている。ニューヨーク発のメガネブランド「Warby Parker」を展開する米ワービーパーカーは、現在117店舗を展開。積極的な店舗出店を続ける。不採算店舗を相次いで閉鎖する大手ブランドや、小売り企業とは正反対の動きだ。D2Cブランドがマスブランド市場を飲み込まんとしている。

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