NTTドコモは2019年9月20日、「ラグビーワールドカップ2019日本大会(W杯)」の開幕にあわせて次世代通信「5G」のプレサービスを開始する。パブリックビューイングやマルチアングルの映像配信で高速大容量の5Gを生かす。企業との連携も加速し、20年春の正式サービスに向けた5Gの用途創出を急ぐ。
ラグビーW杯のパブリックビューイングは、9月20日の東京スタジアム(東京都調布市)で開催する開幕戦と10月13日の試合の様子を、イベントホール「ベルサール汐留(東京・中央)」で中継する。スタジアムの8台のカメラの映像を光回線経由で送信。イベントホール内に設置した基地局から5G受信端末を通して、同じホールのパブリックビューイング会場の大画面に映し出す。応募があった人の中から、2試合で合計600人が参加する。
同様に、会場に設置した5Gスマホで、全国8会場の試合の様子をマルチアングルで視聴できるようにする。各スタジアムに設置した複数台のカメラを切り替えながらさまざまなアングルで試合の様子を表示できるほか、トライなどのハイライトシーンを再生できるようにする。
報道カメラマンが撮影した写真データをスタジアム内の5G基地局で受け取り、報道機関へ伝送する仕組みも構築した。
18日の発表会で壇上に立ったNTTドコモの吉澤和弘社長は、20日のプレサービス開始について「実質的に5Gのサービスを開始する日と位置付けている。後から振り返って、あの段階で5Gが始まったと言われるようになる」と自信を見せた。発表会の締めくくりには両手を広げて「これから5Gの世界がスタートします。5Gオープン」と声を張り上げた。
MR技術を使ったコンテンツに期待
高速大容量や低遅延といった5Gの特徴を生かす用途として、NTTドコモはMR(複合現実)に期待をかける。MRは、ヘッドマウントディスプレーで多様な視点の映像を楽しめるVR(仮想現実)、透過型グラスやスマホを通してリアルな世界に情報を重ね合わせるAR(拡張現実)を融合させたもの。リアルとバーチャルの世界を組み合わせたゲームやアトラクション、業務向けには製造や設計の支援をするといった用途でMRを利用することを想定する。
NTTドコモは、MRヘッドセット「Magic Leap One」を開発する米マジックリープとの資本業務提携を19年4月に発表している。Magic Leap Oneは視界にホログラムを投影するメガネと、画像の処理能力を持つ本体部分、タッチパッド付きのコントローラーを組み合わせて使う。発表会では、俳優の佐藤健さんがMRのゲームに挑戦する様子を見せた。
展示会場では、車のレース中継をMRで楽しむデモも見せた。テレビでレースの中継画面を見ながら、タブレットのMR画面では、仮想的なサーキットが現れて、各車両の位置関係を3Dグラフィックで表示する。ドライバーの心拍数などのセンサー情報も参照できる。こうしたサービスを5Gスマホ経由で利用することを想定する。
将来は、レーシングカーにスマホを搭載し、車載カメラの映像や各種センサーの情報を5G経由で伝送。視聴者側でも映像を5Gスマホで受け取り、MRヘッドセットやタブレットに無線LAN経由で送るといった使い方を目指す。
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