「高速大容量」「低遅延」といった5Gならではの特長を生かし、今までにないエンターテインメント体験を具現化すべく挑戦している企業が相次ぎ登場している。その1社が、2016年設立のシナスタジア(名古屋市)だ。自動運転時代の到来を見据えて、消費者の車内での過ごし方を一変させる革新的な技術開発に取り組んでいる。

シナスタジアが開発している「RideVision」(ライドビジョン)を使うと、自動運転車向けVRコンテンツを制作できる。VRヘッドセットに付けた数個のセンサーの動きをモニター上のカメラで撮影して目で見ている方向を把握している
シナスタジアが開発している「RideVision」(ライドビジョン)を使うと、自動運転車向けVRコンテンツを制作できる。VRヘッドセットに付けた数個のセンサーの動きをモニター上のカメラで撮影して目で見ている方向を把握している

 「みなさん、京都観光バスへようこそご乗車くださいました。では、出発前にゴーグルをかけてください。さぁ、平安時代へ一気にタイムスリップし、走り抜けながら当時のみやびな街並みをご覧あれ」――。2030年ごろの京都観光は、技術革新によってワクワクするエンターテインメント体験へと激変しているかもしれない。

 現在、VR(仮想現実)やAR(拡張現実)、MR(複合現実)関連技術の開発が活発になっている。ただ固定された地点に身を置いて仮想空間を見渡して楽しむ前提のコンテンツが大半だ。しかし現実空間を移動しながら、仮想空間をリアルタイムに重ね合わせて表示し続けられるようになれば、どうか。今眺めているものがリアルなのかバーチャルなのかの境界線が曖昧になっていくわけで、消費者は冒頭紹介したような斬新なコンテンツを日常的に楽しめるようになる。

 次世代エンタメの具現化に挑む世界でも珍しい企業がシナスタジア(名古屋市)だ。同社を率いる26歳の有年亮博CEO(最高経営責任者)は、自動運転開発を手掛ける名古屋大学発のスタートアップ企業ティアフォー(名古屋市)の子会社として16年に同社を設立。ティアフォー創業者で東京大学准教授の加藤真平氏の研究室に所属しながら、自動運転車向けVRコンテンツの制作システム「RideVision」(ライドビジョン)の開発に日々取り組んでいる。

ライドビジョンを使った観光デモの例。自動運転車に乗ってVRゴーグルをかぶると、過去のその場所の映像がマッピングされ、走りながら見回すことができる(提供/シナスタジア)
ライドビジョンを使った観光デモの例。自動運転車に乗ってVRゴーグルをかぶると、過去のその場所の映像がマッピングされ、走りながら見回すことができる(提供/シナスタジア)

5Gがリアリティー感を引き寄せる

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