住む場所や身体的な制約から解放される――。大容量かつ低遅延の5G通信は、そんなSF的な未来を一般化する起爆剤となる。5G特集の7回目からは、「距離を超える技術」に着目。遠隔操作できる「アバター(分身)ロボット」や、VR(仮想現実)関連サービスがどう生活やビジネスを変えるのか、最前線を追う。
遠隔地から、あたかも自分がその場にいるように操縦ができる「アバター(分身)ロボット」。はるか未来の夢だと思われていた技術が今、実用化に迫っている。
アバターを実現するには、さまざまなテクノロジーを複合的に組み合わせることが必要だ。例えば、現場で自在にアバターを動かすためのロボティクス技術に加え、人の動きをキャプチャーしたり環境を測定したりするセンサー、現地の情報をフィードバックするVR(仮想現実)やAR(拡張現実)関連の技術など。加えて、リアルタイムに操作をするためには、遅延の少ない通信が必須であり、高速・低遅延の5Gに期待が集まっている。
大手企業からスタートアップまで参入相次ぐ
アバターの開発には、大手通信キャリアをはじめ、国内外の大手企業やスタートアップが続々と参戦している。NTTドコモは新日鉄住金ソリューションズ(現、日鉄ソリューションズ)と共同で、遠隔操作を想定したヒューマノイドロボットを開発。一方、KDDIが出資をしている東京大学発ベンチャーのTelexistence(東京・港)は、既に遠隔操作技術を用いたロボットの量産型プロトタイプ「MODEL H」を発表済みだ。人の手を模倣し、繊細な手の動きが可能なアバターロボットを開発するメルティンMMI(東京・中央)など、枚挙にいとまがない。
アバターロボットの利用シーンとしてまず挙げられることが多いのは、災害地・高所といった「危険環境」、宇宙・深海といった「極限環境」などだ。人が入れない(入るのに危険が伴う)環境はまさにアバターロボットの独壇場だが、実はそれだけではなく、身近なサービスをも激変させる可能性がある。
中でも先行しそうなのが、観光の分野だ。例えば、ANAホールディングスは18年3月に「ANA AVATAT VISION」を発表してアバター事業に本格参入。遠隔地に設置したロボットを操る釣り体験や、水族館の遠隔見学サービスなど、既に実証実験を行っている。
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