インサイトとはそもそもどういう意味か、そしてそのインサイトがビジネスの成長の鍵としていかに大事かという話をした。第2回以降は、その方法論について1つずつ具体例を交えながらお伝えできればと思う。連載の第1回(インサイトに3つの誤解 顧客ニーズの本質を見抜く直観力が重要)。

消費者の無意識の決断の理解がインサイトを知るうえで重要になる(写真/Shutterstock)
消費者の無意識の決断の理解がインサイトを知るうえで重要になる(写真/Shutterstock)

 あなたは朝起きて、まず何をするだろうか。カーテンを開けるだろうか、それとも自分の子供を起こすだろうか、顔を洗うだろうか。そして、それは毎日同じだろうか。その時々で意識して行動を選んでいるだろうか。

 人は一日中、決断をしている。その正確な数は計り知れないが9000回、あるいは1万回に上ると言われる。人は、朝起きてから寝るまでに認識できないほどの決断をしている。その中で意識的に決断しているのは何パーセントくらいかご存じだろうか。

人は1日に8000回超の無意識の決断をしている

 実は、人は5%しか意識的に決断しておらず、95%は無意識だそうだ。1日に8000~9500回も無意識に決断しているのである。

人が1日にする決断の95%は無意識下で行われている
人が1日にする決断の95%は無意識下で行われている

 無意識の決断とはいっても、何も考えていないというわけではない。むしろ過去の経験則を含めた直観をベースに、知らず知らずのうちに自分にとって最適な行動を取っているという表現が正しい。野球に例えれば、ピッチャーの投げるボールの軌跡やその回転などをバッターが経験則から肌で感じて、無意識にバットで当てに行く状態と似ているだろう。毎日練習することによって、脳が無意識に決断できる状態を作り上げているわけである。

 心理学では、ロシアの医学者のイワン・パブロフが実施した、犬の実験がその代表例としてよく知られる。その実験は、ベルを鳴らしてから犬にエサを与え続けた結果、その犬はベルを鳴らしただけで唾液を出すようになったというもの。こういった脳の処理の自動化はある意味では必然的なことで、以前、脳科学者と話した際に、脳はそもそも負担がかかることを忌避するようにバイアスをかけると聞いたことがある。

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