海外のPR業界では「Perception is reality(パーセプションこそが現実である)」という言葉がよく使われる。第三者からの認識(パーセプション)こそが現実であることを表している。ただし、ブランドの持つ本質を見失わないことが肝要だ。カミソリブランド「ジレット」、ワークマンの事例から学ぶ。
この手の話をすると、ブランドにとって利点のある新しいパーセプションをすぐにでも作ろうと鼻息が荒くなる企業も少なくない。しかし、ここに1つの落とし穴がある。それは、「パーセプションとブランドの本質」の関係についてだ。パーセプションこそ現実である。それは恐らく正しい。では果たして、あなたの商品やブランドへのパーセプションは、いかようにも変えることができるのだろうか。今回は、この点について掘り下げてみよう。
ジレットは「最高の男」の認識変容で成功
2019年1月、米国であるネット動画が賛否を巻き起こした。世界的な男性用カミソリブランドのジレットが公開した広告動画だ。「We Believe(我々は信じる)」というタイトルが付けられたこの動画には、ジレットがこれまで世界中で展開してきた数えきれない数の広告と同様に「マッチョな男性」が登場する。
動画ではこの男性が女性をからかったり、ハラスメントめいた行動をとったりする。これまでと違うのは、それを冷めた目で見つめる少年たちが登場することだ。そして、「それは、男性が手にできる最高のものでしょうか?」とナレーションが入る。
性的被害などをSNSなどで告発する運動「MeToo」が全世界的に広がる潮流の中で、男性のあり方を世に問いかけるジレットの動画は大きな話題を呼び、YouTube上での再生回数は数日で1000万回を超えた。しかし、その評価は賛否に割れた。動画のメッセージに共感した人から感動の声が上がる一方で、男性批判と捉えた層からは不買運動も起こった。良くも悪くも、これまでジレットというブランドに人々が抱いていた強い男性というパーセプションを、ジレットは自ら壊しにいったようにも見える内容だったからだ。社会の空気感に、安易に妥協してしまったのではないのか。そう捉える人もいた。
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