この連載では、データを誤解なく伝えるために、グラフはシンプルであるべきだと訴えてきた。この考え方を逆手に取れば、グラフに装飾を加えることで、読み手に異なる印象を与えることができてしまう。そうした眼の錯覚を誘うグラフをどのように見抜くか。グラフ表現の専門家、松島七衣氏が解説する。

ある種の目の錯覚を誘い、数値をよく見せようとしているグラフもある。そうしたグラフにだまされず、信用されるグラフを作成するためにも、それら手法を知っておく必要があるだろう(写真/Shutterstock)
ある種の目の錯覚を誘い、数値をよく見せようとしているグラフもある。そうしたグラフにだまされず、信用されるグラフを作成するためにも、それら手法を知っておく必要があるだろう(写真/Shutterstock)
今回のポイント
1.人間の目は線やマークの影響でだまされやすい
2.必要以上に目の錯覚を誘うグラフは信用をなくす
3.散布図で使う記号の形状にも注意が必要

 グラフを表す数字の大きさに問題がなくても、目の錯覚といわれる「錯視」の効果によって、グラフの大きさや位置など実際の姿を正しく認識できなくなることがあります。下記のような横棒の長さが異なって見える図を見たことがある人も多いでしょう。これが錯視の効果です。

横棒の端に、内向きと外向きの矢印を付けるだけで長さが異なって見える。このような錯視の効果を狙って補助線を入れたグラフも多い。
横棒の端に、内向きと外向きの矢印を付けるだけで長さが異なって見える。このような錯視の効果を狙って補助線を入れたグラフも多い。

 普段の生活の中でも、体を細く見せるためには、横のしま模様より縦のしま模様の洋服を選びましょうというアドバイスを見かけることがあります。小顔効果を狙って、ボリュームのあるストールを巻いている人もいるかもしれません。脳は、そんな簡単な装飾や表現の違いで、すぐにだまされてしまうのです。

 錯視の効果で、実際の値とは異なるように見える加工をしたグラフも多数存在しています。前回も紹介した「だましのテクニック」の一種です。

 グラフはシンプルであることが大切ですが、プレゼンテーション資料などを作る際には、傾向線を加えるなど、多少の装飾を施したいときもあるかもしれません。そのときには、厳密に錯視の効果をすべて除外することは難しいでしょう。ただ、どのような場合で読み手に誤解を与えてしまうか知っておくことは大切です。

 錯視を使ったグラフの例をいくつか参照しつつ、まずは簡単にだまされないための判断力を身に付けましょう。

グラフを強調するマークにはご用心

 ある企業の決算資料では、営業利益の実績のグラフに、将来の実績を想像させる矢印の傾向線を入れていました。実際には起こっていないのにV字回復したかのような線を入れると、この半年間の下降傾向に注意が向かず、問題はないかのように見えます。

矢印の傾向線が入っていることで、今後は業績が改善していくかのような印象を受ける。グラフは実際に決算資料で使われた例を参考に、編集部で独自に作成したもの。数値や項目は実際のものとは異なる
矢印の傾向線が入っていることで、今後は業績が改善していくかのような印象を受ける。グラフは実際に決算資料で使われた例を参考に、編集部で独自に作成したもの。数値や項目は実際のものとは異なる
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