グラフの役割は、ありのままのデータを分かりやすく伝えること。その一方でビジネスパーソンやマーケターがプレゼンをする際には、数字が示す成果を強調したいときもある。グラフに特殊な効果を加える「だましのテクニック」は許容されるのか。グラフ表現の専門家、松島七衣氏が解説する。
2.正しく伝えるという本来の目的に外れている例も
3.あえて意図的に利用する場合はほどほどに
今回は、広告や企業決算などで見かける、読み手の判断を操作する意図が感じられるグラフ例を見ていきましょう。美グラフの3拍子(①正しく伝わる ②分かりやすい ③シンプル)のうち、正しく伝わることをあえてせずに、作成者の意図通りに見せようとするものです。いわば「だましのテクニック」を使ったグラフです。
広告や決算資料の内容は、消費者や株主の印象に大きく影響します。好感度アップを狙おうとする、それらテクニックを駆使したグラフも頻繁に見かけます。ただ本来、グラフはありのままのデータを正しく伝えるために存在するものです。もし「なんだか怪しいぞ」と読み手に伝わったとき、その印象はむしろ悪化するでしょう。
まずは下に紹介するいくつかの例を参照しつつ、読み手として、だまされないスキルを身に付けましょう。もしかしたら、読者の皆さんもビジネスパーソンである以上、グラフ上で数値を強調したいというケースがあるかもしれません。そうした思いがグラフに反映されるのはやむを得ませんが、節度を守ってほどほどにしましょう。
3D表示の遠近感で「だまし」の効果
大きく見せたい部分、例えば競合比較における自社の項目や、年推移の直近年は、立体的に表してグラフ上の面積を物理的に広げてしまうという、強引な見せ方をよく目にします。「これは完全にNGグラフだ」と分かっていても、正しく判断できなくなるほどで視覚的な「だまし」の効果は大きいです。
ある企業の新製品発表会では、競合との市場シェアを表した3D円グラフを使って、実際よりも自社のシェアが高いように見せていました。3Dにすると円は楕円になり、円に高さが出るので、手前にある下部の扇形の面積は実際よりも大きくなります。Aの37%と、下部にある自社Bの21%を見比べると、同じくらいの大きさに見えます。正しい円グラフで表すと、3D円グラフとは明らかに大きさが異なります。
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