前回に続き海外にも活動を広げるアーティストや企業の試行錯誤を追う。10カ国ほどを飛び回る阿波踊りパフォーマンスの「寶船」。海外展開を続ける大手芸能プロダクション、ホリプロ。共通していたのは現地パートナーの重要性だった。(関連記事「大塚愛、miwa……海外PRの速度を上げた『イベント+SNS連携』」)
「What's up? Japan Expo!!」。2019年7月7日(現地時間)、阿波踊りエンターテインメント集団「寶船」のメンバーが最後のステージから客席に問いかける。「まだまだ盛り上がれるんじゃないの?」――英語で呼びかけるたびに、客席で立ち上がっているフランス人の表情が緩む、それはすぐに笑顔に変わり、両手を挙げて叫び、踊り出す……。
JE最終日の寶船のステージは、まさに演者と客席が一体となって盛り上がる圧巻のパフォーマンスだった。14年から6年連続のJE出演。活躍の場はフランスから世界に拡大し、米国、イタリア、スペイン……毎年10カ国ほどを飛び回る。国内を合わせると年間300ステージをこなすプロ集団は、主催するアプチーズ・エンタープライズの米澤渉プロデューサーが、海外での活動を視野に入れて立ち上げた。「阿波踊りは、言葉が通じなくても、世代を問わずに楽しめる。だったら海外だろうと思った」と米澤氏。海外から声がかかるようになったのはJEがきっかけだった。
「JEは、世界的に見ても、本当にトップクラスの日本見本市。例えばきゃりーぱみゅぱみゅが欧州で人気になったとか聞いていたので、自分たちが勝負するとしたらまずJEに出るのが第一の目標だった」と米澤氏。14年の初出演以降は、現地でつながった人の横のつながりから「パリに来るなら次はローマのイベントに来てくれませんかとか、ロンドンにもいかが、と話が広がった」(米澤氏)。JEは知名度や認知度を上げる場。そこで出会った人たちが次の機会をつくってくれる。「アーティストや企業はJEのような場所を徹底的に使い倒すという意識で臨まないと、行ったきり思い出づくりで終わる人は多いと思う」(米澤氏)。
世界に活動を広げるため、動画配信サイトやSNSも巧みに使い分ける。「YouTube」は積極的に活用し、オフィシャルのプロモーションビデオからオフショットまでを配信。動画を見たコスタリカの阿波踊り団体が自分たちをまねした動画をアップするといった広がりも出てきた。
写真中心の「Instagram」では、オフショットも見せて素を出す。日本語で投稿する「Twitter」では悩み事も正直に出すようにしている。「Facebook」はリポート中心のオフィシャル文書的な存在だ。最近は「TikTok」の動画も始めた。踊りそのものを見せている。
20年は中南米に行くことが決まった。「コスタリカの団体とも交流してこようと思う」。ネットでの出会いもきっかけとなり、世界に活動の場を広げる。「阿波踊りという伝統芸能で、世界の市場が取れるかもしれない。この数年で世界的なグループになりたい。それが僕らの目標」(米澤氏)。
Instagram:オフショットで素を出す
Twitter:悩み事を正直に投稿
Facebook:リポート中心のオフィシャル文書
TikTok:踊りそのものを見せる
こうして広げる海外での活動。しかし渡航費や言葉の壁もあり、そう簡単なものではない。大手プロダクションもこれまで試行錯誤を繰り返してきた。
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