Japan Expo(JE)は海外での活動を視野に入れたアーティストのプロモーションにも活用されてきた。過去にはきゃりーぱみゅぱみゅやMAN WITH A MISSIONなどもJEを起点に活躍の場を広げた。2019年も大塚愛やmiwaなど多数のアーティストが参加。海外展開のきっかけをつくるための様々な仕掛けも動く。現地PRを加速するのはSNSの活用だ。(記事後半にmiwaへのミニインタビューあり)
「日本のフェスとは異なる盛り上がり方に興奮しました」――人気アーティスト、大塚愛の初めてのフランス、初のJEでのライブは12曲。「少しだけですが現地の言葉でMCもしたし、楽曲もEDM(エレクトロニック・ダンス・ミュージック)アレンジを施して臨みました」と大塚。JE期間中はミニライブを含めて2ステージ。サイン会やテレビ番組のイベントにも登壇した。
「アジアでの人気を生かしたフランスプロモーションを実施したかった」。エイベックス・マネジメント マネジメント本部 第4マネジメントグループ 第7ユニット ユニットリーダーの本多克典氏はJEへの出演を決めた理由をこう説明する。大塚愛はアジアで大人気。特に台湾では、大塚愛が挿入歌を歌うドラマ「花より男子」が放送され、ライブチケットは即完売するほど。19年7月17日からのアジアツアーでは、中国の広州や上海、台湾の台北など5都市・6公演で5000人超を集めた。
この実績をフランスでも生かせないか――。JEに向けて、フランスでも放送されている日本文化を紹介するBSフジのテレビ番組「ESPRIT JAPON(エスプリジャポン)」と組み、現地プロモーションを仕掛けた。
海外で受ける日本のアーティストは、ビジュアル系やロックバンド、アニソン歌手など。大塚愛は、どの分野のアーティストでもない。「でも大塚愛のポテンシャルならできるかもしれないと思った」――ESPRIT JAPONを作るTSSプロダクション チーフプロデューサーの白神道空氏が3カ月を振り返る。
ESPRIT JAPONは、30~40代を対象に日本の食、旅、文化などを伝える番組。フランスではケーブルテレビの「J-ONE」で視聴でき、ベルギー、スイス、オーストラリア、ハワイなど9カ国で放送されている。もともと白神氏は09年からテレビ新広島で日本のポップカルチャーの情報を配信する「Japan in Motion」を手掛けてきたが、この番組を見ていた世代の成長に合わせて大人でも見られる日本文化の紹介番組を作ることにした。それが14年10月から始めたESPRIT JAPONだ。
番組のエンディング曲に5月から大塚愛の「LOVE FANTASTIC」を使い、JE直前の6月30日にはドキュメンタリー番組を放送した。彼女の面白いキャラクターだけでなく、徹底した曲作りへのこだわりが見て取れる。大塚愛がドキュメンタリー番組に出演したのは15年のアーティスト生活でも初という。
「現地での放送は好評だった」と白神氏。エイベックスはJEに合わせて、音楽ストリーミングサービスの「Spotify」や「Apple Music」で大塚愛の楽曲プレイリストを公開した。JEのオフィシャルホームページやSNSとも連携して情報を発信し興味を喚起。知名度は徐々に上がり、『さくらんぼ』や『プラネタリウム』といったヒット曲と大塚愛が結びついたという感想も寄せられたという。
ESPRIT JAPONで流れたドキュメンタリー番組では、「大塚愛が日本で数々の賞を受けたり、記録を打ち立てたりしていること、音楽に懸ける姿勢などにフランス人視聴者が共感した」(白神氏)。こうしたプロモーションがライブ集客に結びついた。従来なら1年くらいかかる海外プロモーションも「3カ月でいけるのはSNSの力。連携が必須条件になっている」と白神氏。メインライブの前に実施されたピアノ弾き語りのミニライブでも、じっと座ってステージを見つめながら彼女の歌に聴き入る来場者の姿が印象的だった。
「アジア展開は継続していく予定。フランスにも長く応援してくれているファンやメディアの存在も知ることができたので、これから計画を立てていく」と本多氏。「今や音楽の聴かれ方は国境で意識されなくなってきていると思いますので、すでに発表した楽曲や、これから発表する楽曲が世界中のリスナーに愛してもらえるように活動していきます」(大塚)――。アーティスト活動は海外にも広がる。
このコンテンツ・機能は有料会員限定です。
- ①2000以上の先進事例を探せるデータベース
- ②未来の出来事を把握し消費を予測「未来消費カレンダー」
- ③日経トレンディ、日経デザイン最新号もデジタルで読める
- ④スキルアップに役立つ最新動画セミナー