日本企業にとって、フランスで開催されるJapan Expo(JE)は25万人を超える大きな集客力が魅力だ。欧州展開の足掛かりにしようと、さまざまな企業、職人、アーティストなどが参加する。まずはアタリをとること――。連載の3回目は欧州展開の糸口を探る試行錯誤を紹介する。

 伝統工芸、芸能の演目……JE最大のブースが「WABI SABI」だ。一般社団法人のジャパンプロモーションが運営する。出展者190人、出演者150人、運営スタッフ60人、計400人の大所帯で構成するブースは会場でもひときわ「和」の雰囲気を放つ。中では105のブースで、作品や商品の販売、工芸や書道などのワークショップをしている。「出展者はリピーターも多いが毎年半分くらいが入れ替わる」(ジャパンプロモーションの生島儀尊代表理事)。欧州展開の足掛かりに海外展開をしたいと考える企業や個人が来場者の反応を探るプロモーションの場となっている。

ひときわ和の雰囲気が漂っていたWABI SABIのブース
ひときわ和の雰囲気が漂っていたWABI SABIのブース

 「和全」として書道とイラストを組み合わせた作品を作る土屋和泉氏もその一人。似顔絵と、好きな言葉を漢字で書くワークショップを実施して、開催期間中の4日間で約80組の絵を描いた。現地に持っていった色紙が足りなくなり、色紙の代用となるものを作らなければならなくなるほど。キャンドルアーティストのCrystal Coco氏の誘いで出展したという土屋氏は、「自分の作品が、フランスで通じるのかトライしに日本から来た。予想以上に受け入れてもらえてうれしかった」と振り返る。「希望」「未来」「家族」が現地で要望が多かった文字。「本当に素晴らしい絵をありがとう」と言って泣き出す来場者に、大きな手応えを感じたJE初出展だったという。

書道とイラストを組み合わせた作品を作る「和全」。期間中に80組の絵を描いた(写真提供/土屋和泉氏)
書道とイラストを組み合わせた作品を作る「和全」。期間中に80組の絵を描いた(写真提供/土屋和泉氏)

 WABI SABIの初出展は2011年。これまでにさまざまな自治体や企業、アーティストらが出展して、世界展開の足掛かりにしてきた。初回の記事で紹介した高知県須崎市、JEへの出演を機に世界に活躍の場を広げた阿波踊りパフォーマンス集団「寶船」(後日記事掲載予定)の活躍もWABI SABIでのパフォーマンスがきっかけだ。「出展で弾みをつけられれば、あとは他の欧州展示館に独自ルートで出展したり、世界にビジネスを広げたりできる」(生島氏)。オーダーの組子建具などを5カ国で展開する猪俣美術建具店も12年のJE出展をベースにビジネスを世界に広げた1社。19年は全体の3分の1を海外で売り上げるまでになった。

 WABI SABIには職人が作る伝統工芸品の出品も少なくない。ただイベント会場で売ることだけを考えれば、航空券代などの負担の元をとるのも大変。「JEは海外にもビジネスを広げたいと考える人が反応を探れる場として機能している」と生島氏は話す。19年は日本円で80~90万円を売り上げた出展者も出てきた。現地での売り上げに加えて「フランスでの成果が日本でのPRとなり、短期間に元をとる出展者も少なくない」(生島氏)という。ジャパンプロモーションは、フランスだけでなく、ドバイやアブダビ、タイなどの展示会にも出展して日本文化の海外展開を模索する。他の国の展示会でもさまざまな日本企業・自治体から出展を募っている。

WABI SABIにはさまざまな日本企業が出展していた。初の海外出展に挑戦したのが供養用品の製造販売会社丸喜(写真左上)。宮崎の書道家岩尾諭志氏。キャンバス生地に書を描いて展示していた(写真右上)。天保年間の設立という大西京扇堂(写真左下)。会場でおみくじを配って注目を集めていたシープロジェクト(写真右下)
WABI SABIにはさまざまな日本企業が出展していた。初の海外出展に挑戦したのが供養用品の製造販売会社丸喜(写真左上)。宮崎の書道家岩尾諭志氏。キャンバス生地に書を描いて展示していた(写真右上)。天保年間の設立という大西京扇堂(写真左下)。会場でおみくじを配って注目を集めていたシープロジェクト(写真右下)

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