2019年5月に成立した改正電気通信事業法の施行が10月に迫り、大きな影響を受けそうなのが端末の販売だ。端末代金の割引が最大でも2万円に制限されることから、販売の落ち込みは必至。端末販売をビジネスの柱にしていたキャリアショップにとっては死活問題だ。特集の4回目は、店舗網維持のため、新たな収益源を模索し始めたNTTドコモの取り組みを紹介する。

ドコモショップ五反田店を実証実験店舗「d garden五反田店」に改装。NTTドコモのロゴが看板から消えた
ドコモショップ五反田店を実証実験店舗「d garden五反田店」に改装。NTTドコモのロゴが看板から消えた

 全国に約2300店舗を展開する「ドコモショップ」。赤いドコモのロゴが特徴だが、数年後にはその姿がガラリと変わるかもしれない。NTTドコモは今、ドコモショップの大改革に向けた取り組みを始めている。19年4月に実証実験店舗として、東京・品川の五反田駅近くに「d garden五反田店」をオープン(運営は子会社のドコモCS)。おなじみのドコモのロゴはなく、赤がイメージカラーのはずの「d」マークは、何と緑色に。ドコモの店舗だと分かるのは、入り口のそばにある小さな立て看板だけだ。これは「ドコモショップだと気づかない人が多いため、後から急きょ追加したもの」(NTTドコモ販売部代理店担当部長の北村貞彦氏)という。

 そこまでしてドコモの色を消すのはなぜか。同社はここ数年、ポイントプログラムや決済、コンテンツサービスなどを回線契約者以外にも広げる「+d」戦略を推進。例えば、dポイントクラブの会員数は7131万に達し、共通ポイントの一角を占めるまでになっている。改正電気通信事業法が施行される10月以降、2年契約の事実上の無効化などでユーザーの流動性が高まるとみられる。そこでドコモショップも、ついにドコモユーザー以外をも取り込む場に変えていこうという狙いがある。

 そもそもドコモショップに限らず、キャリアショップは基本的に通信キャリアの直営ではない。店舗ごとに異なる代理店が運営しており、端末販売や、回線契約に対するインセンティブなどで収益を上げるビジネスモデルだ。しかし10月からの新ルールでは、端末の値引き額は2万円までと厳しく制限。端末代金の上昇で、市場は冷え込むと見られている。ドコモの場合、19年度の端末機器販売は6270億円と予想。販売数の減少や割安なミドルスペック端末へのシフトが見込まれており、18年度実績と比べると、実に25%減という厳しい状況だ。

 とはいえドコモにとって、ショップはアフターサービスやサポートで欠かすことのできない拠点。採算が厳しくなるからといって、大量に閉鎖する選択肢はないという。店舗網を維持するために、端末販売や回線契約に代わる新たなビジネスモデルの構築が喫緊の課題となっている。d garden五反田店はその実験場。店に入ると、どこに収益の種を見つけようとしているのかが見えてくる。

 まず目に入るのが、ドコモのグループ会社が自治体と組んで運営しているバイクシェアのポート。一般的にポートは屋外にあり、店舗内にあるのは珍しい。ドコモとしてはグループ会社のサービスのアピールにつながるが、ショップにとってのメリットは何なのだろうか。

入り口にはバイクシェアのポートがある
入り口にはバイクシェアのポートがある

 実は、ポートの設置料や管理料が新たな収入源になるという。無人の屋外ポートとは異なり、ここには店舗スタッフがいる。そこで、返却された自転車の状態をチェックし、バッテリーの充電などを行っている。最近は、きちんと充電されていることがユーザーにも認識されはじめ、1日20台程度の貸し借りがあるという。

 これがさらなる商機につながる。これまでのドコモショップには、ドコモのユーザーか、ドコモに加入しようと思っている消費者しか足を向けることはなかった。しかし、バイクシェアのユーザーは、必ずしもドコモユーザーというわけではない。新たな客を呼び込む仕掛けになるのだ。

 貸し出すのは自転車だけではない。モバイルバッテリーのシェアも行っている。これもやはり、スポットでの貸し借りに対して手数料が得られるうえ、他キャリアのユーザーの来店動機になる一石二鳥のサービスだ。

シェアバッテリーはd garden五反田店の他、約20店舗のドコモショップでもテスト運用しているという
シェアバッテリーはd garden五反田店の他、約20店舗のドコモショップでもテスト運用しているという

 ポップアップコーナーと名付けられた催事スペースでは、4月のオープンから5月までの期間限定で、フリマアプリの「メルカリ」と組んだ無償梱包コーナー「つつメルすぽっと」を開設した。商品を持ってくれば、無償で梱包材が使え、手軽に発送できるというもの。「1日20~30件の利用があり、来店客が使う通信キャリアの比率は、市場シェアとほぼ同じだった」(北村氏)。つまり、半数以上はドコモ以外のユーザーだったことになる。ドコモとしては手応えを感じており、秋から再び、つつメルすぽっとを期間限定で展開することを決めた。

 北村氏が「新たな発見だった」と話すのが、バイクシェアやメルカリでは、アプリ上で告知ができること。これまでのドコモショップでは、新聞の折り込みチラシや店頭のポスターくらいしか、来店を促すツールがなかった。外部のサービスと組むことで、販促手法が広がるメリットも見逃せない。

無料カフェサービスでポイント会員を増やす

 もっとも、これだけではドコモとは関係のないユーザーに立ち寄ってもらえるだけ。ドコモのサービスに触れてもらい、ゆくゆくは回線契約に持ち込む仕掛けが不可欠だ。