2019年10月に楽天モバイルが新規参入し、20年には5G(第5世代移動通信システム)の商用サービスがスタート。それにも増して影響が大きいのが、政府が契約の2年縛りと端末価格の大幅値引きに本腰を入れて規制をかけてきたこと。大手3社の囲い込み策が“無効化”される中、各社はどう戦うのか。変革を迫られている携帯電話業界の動向を探る特集の1回目では、新ルールを巡る状況を解説する。

(写真/Shutterstock)
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 19年10月は、携帯電話業界にとって大きな節目になる。これまでMVNO(仮想移動体通信事業者)として格安スマホ事業を展開してきた楽天モバイルが、自ら電波を保有する“第4の通信キャリア”としてサービスイン。移動体通信事業者(MNO)への新規参入は、07年のイー・モバイル(現在はソフトバンクに吸収合併)以来、実に12年ぶりのことだ。

 それ以上に影響が大きいのが、5月に成立した改正電気通信事業法が10月に施行されること。政府はここ数年、高止まりする通信料金に対してさまざまな介入を行ってきたものの、小手先の対応でお茶を濁す通信キャリアとのいたちごっこが続いてきた。そこでついに法律改正にまで踏み込み、料金プランや端末代金について事細かな規制がかけられることになったのだ。例えば、これまで約1万円だった2年契約の違約金(契約解除料)は、僅か1000円までと規定。「一括ゼロ円」など過度な割引が見られた端末代金は、割引額が最大でも2万円までと規定される予定だ。

 これまで大手通信キャリアは顧客の徹底的な囲い込み戦略で安定した業績を上げてきた。ユーザーが自らの電話番号を変えることなく、別の通信キャリアに乗り換えができるMNP(携帯電話番号ポータビリティー)という制度があるにもかかわらず、大手3社の解約率はいずれも1%未満(2020年3月期第1四半期)。ほとんどの人が乗り換えることなく使い続けている大きな要因は、“2年縛り”という携帯電話業界独特の商習慣にある。2年以内に解約すると契約解除料がかかり、その後も2年ごとに契約が自動更新される仕組み。違約金なしで解約できるのは、2年間のうち「契約更新月」と呼ばれる3カ月程度に限られている。解約しようと思っていても、いつの間にか契約更新月が過ぎ、新たな契約期間に入っている、ということも少なくない。

 大手3社の契約解除料は、いずれも税別9500円と高め。割安な料金プランを見つけても、容易には乗り換えられない料金設定だ。通信キャリアとしても割安な料金プランを積極的に打ち出すインセンティブが働かず、結果として代わり映えのしない横並びの料金プランが幅を利かせているのが現状だ。

 もちろん、大手通信キャリアが競争をしてこなかったわけではない。どの事業者も、1人でも多くのユーザーを他社から乗り換えさせたい。そこで多用されてきたのが、端末の大幅値引きだ。例えば最新のiPhoneの定価は10万円を超えるが、他社からの乗り換えなら3万~5万円程度値引かれることが多い。型落ちのiPhoneならほぼ0円で手に入ることも。それに加えて数万円のキャッシュバックを打ち出す店まで存在している。その原資はキャリアからの販売奨励金。つまり、既存ユーザーが支払う通信料金が、一部のユーザーの端末代金の値引きにつぎ込まれていることになる。

他社からの乗り換えに対してはさまざまな優遇施策がある
他社からの乗り換えに対してはさまざまな優遇施策がある

 顧客獲得のためには多額のコストをかけるものの、その後の通信料金でそのコストを回収。さらに2年契約などで、他社への流出も許さない。そんな「釣った魚に餌はやらない」姿勢を、政府は問題視してきた。そこで今回の法律改正では、通信キャリアの囲い込み策を骨抜きにし、ユーザーがいつでも手軽にキャリアを選択し直せる方向に舵(かじ)が切られる。

2年間を待たずとも乗り換えしやすくなる

 10月から始まる新ルールで最も衝撃的なのは、2年契約の契約解除料の上限が、現行の約10分の1、僅か1000円(税別。以下同)とされる点だ。これは総務省の消費者へのアンケート結果を基に導き出された金額。他社への乗り換えの際に違約金を支払ってもいいと回答したユーザーのうち、8割の人が許容する水準が1000円だったという。

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