識者たちが実際に読んで日経クロストレンド読者にお薦めできる本を紹介する。テーマは数学の学び直し。データ分析のスキルを高める上で欠かせない。
「すご腕マーケターに聞いた 読まないと損する本&マンガ」後編として、AIやビッグデータの活用でますます重要になる数学の学び直しに最適な本を紹介してもらった。実際に識者たちが読んで役立った本のため既に絶版となっている本もあるが、内容は折り紙付き。ネット書店や図書館で入手・閲覧可能な場合も多いはずだ。理系レベルの知識が必要なものから、文系でも読める分かりやすい本まで。ぜひこの夏に挑戦してほしい。
学生時代に「数学」を勉強せずに後悔しているすべての人へ

音部大輔氏
数学嫌いは人生で損してる!?
『数学嫌いな人のための数学』
小室直樹/東洋経済新報社
(重版未定、絶版状態)

「数学は近代経済学を学び、資本主義を生き抜くためにますます必要な学問」「数学は“神の論理”」――と指摘する社会学者の故・小室直樹氏の著作。書名通りに数学に苦手意識を持つ人向けに書かれているので文章が読みやすい。
「魅力的なタイトルで多くの数学嫌いを引き付けたと思われるが、残念ながら絶版の状態。実際に計算はできなくても、概念くらいは理解しておきたい人にとっての良書。図書館で探してみてほしい。私もこの本で『論理学』の基礎を学んだ1人。『必要条件・十分条件』の説明をするときに猫や犬など哺乳類が出てきたら、それは本書に学んだ方かもしれません」

CDO(チーフ・データ・オフィサー)
渋谷 直正氏
絶版だが探してでも読むべき
『文系でもいきなりわかる行列・ベクトル入門』
朝野煕彦/同友館
(絶版)

仕事に数学の行列・ベクトルを役立てるという視点から執筆され、文系でも理解できるようにやさしく書かれている。
「データ分析(特に多変量解析)の仕組みを理解しようと思うと線形代数の知識が必須となるが、これほど分かりやすく線形代数(行列・ベクトル)とデータ分析の関係を解説した本は他にないと思う。事例も身近であり、計算よりもロジックを理解することが大切という著者の考え方が素晴らしい。高校時代に行列とかベクトルを何のために勉強するのか疑問だったビジネスマンは、まさに目からうろこかもしれない。残念ながら古い本で入手困難だが、図書館などで見つけてでも読む価値がある。
統計学の専門書は大きく分けると3種類ある。(1)『ツールの使い方の解説本。ツール操作とアウトプットの見方のみの紹介で理論には触れず中身についてはブラックボックス』。(2)『統計学の考え方を概念レベルで解説し、どういうロジックになっているのか、実際の計算も含めて理解させる本』。(3)『統計専門家向けの専門書。統計学を手段ではなく、研究対象とする人向けの本』だ。『文系でもいきなりわかる行列・ベクトル入門』も含めて私が今回紹介するのは(2)に該当する内容の書籍。ある程度数式や抽象的な概念も登場するが、せっかく学ぶのであれば『どういう仕組みになっているのか』も理解したほうが応用も効くし本質的なスキルも身に付くだろう」
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