NFT(Non-Fungible Token、非代替性トークン)がデジタルコンテンツの流通を変えようとしています。デジタルトレーディングカード、雑誌のデジタル付録、セル画のデジタル証明……。さまざまな分野で事業の可能性を探る動きが加速。NFTコンテンツは一気に市場にあふれ始めています。日経クロストレンドの記者が新トレンドを解説します。

(写真/Shutterstock)
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 NFT(Non-Fungible Token、非代替性トークン)がデジタルコンテンツの流通を変えようとしています。デジタルトレーディングカード、雑誌のデジタル付録、セル画のデジタル証明……。さまざまな分野で事業の可能性を探る動きが加速。NFTコンテンツは一気に市場にあふれ始めています。

 「2021年8月ににグラフィック作品を1枚0.1ETH(販売開始時で3万5000円程度)で1万点を販売したところ、即座に売り切れた」。そう語るのは、Generativemasksというプロジェクトを主導するクリエイティブコーダーで甲南女子大学メディア表現学科講師の高尾俊介氏。同氏によると、購入者の9割以上が海外のNFTアートのコレクターや暗号資産関連の投資家などで、20~40代の比較的若い人が多い印象とのこと。

 大手企業も名乗りを上げています。電子書籍取次のメディアドゥは21年10月、NFTマーケットプレイス「FanTop」をリリース。SBIホールディングスも9月に、NFTマーケットプレイス「nanakusa」などを運営するスマートアプリを買収し、NFTに参入しました。

 LINE傘下でブロックチェーン事業を手掛けるLVCは21年12月15日、これまで「NFTマーケットβ」としてきた機能を拡充したNFT総合マーケットプレイス「LINE NFT」を22年春から始めると発表。そして同じ22年春、楽天グループがNFT事業に本格参入します。会員数1億を超える楽天の経済圏と、総利用者が3億を超えるというLINE・ヤフー経済圏が、NFT市場でも激突するわけです。

 企業はNFTをどのように活用しようとしているのか。22年1月に掲載した特集「NFTバブルは本物か」と21年9月に掲載した特集「NFTとは? 最前線を追う」、併せてお読みください。

NFTはバブルなのか? 3つの疑問の先に見えた「確信」


楽天、NFT戦略の全貌 今春開始、「ポイントで買えるNFT」に勝機


吉本興業やベイスターズがファン向けNFT ネタやプレーを封入


企業はどう活用しようとしているか

NFT付き写真集が好調 メディアドゥ、ファン向けに活路

 電子書籍取次のメディアドゥは、ファン向けのNFT(Non-Fungible Token、非代替性トークン)を発売するプラットフォーム「FanTop」(ファントップ)を2021年10月に開始。トーハンと組み、紙の雑誌や写真集にNFTのデジタル付録を付ける新たな試みもスタートした。映像視聴のコミィニティーサービスとも連動させて、NFT事業の拡大を狙っている。


テレビ朝日、スクエニのNFT活用法 新経済圏では何が売れる?

 自社のIP(知的財産)をどう活用すべきか――NFT(Non-Fungible Token、非代替性トークン)新市場に向けた最適なコンテンツを探る動きが加速している。テレビ朝日は東映のロボ戦隊シリーズをNFT化した。スクウェア・エニックスは、ゲームコンテンツでの活用をにらみながらNFTデジタルシールの販売を進める。近い将来拡大するであろうメタバース(仮想空間)経済圏に向けた試行錯誤も続く。


NFT活用、企業が直面する5つの悩み CyberZがサポートに本腰

 NFT(Non-Fungible Token、非代替性トークン)事業を始めたいがどうすればいいのか。そういったニーズを拾うためにNFTのプロデュース事業に本腰を入れ始めたのはサイバーエージェント子会社のCyberZ(東京・渋谷)だ。タレント、アニメ、ゲームなどのコンテンツを中心に、企画からマーケットプレイスの選定までをプロデュースして支援する。


NFTとは? 最前線を追う

NFT活用、リアルでも進む セル画のギャラリー、限定パーカー…

 唯一無二の証明ができるNFT(Non-Fungible Token、非代替性トークン)を、リアルなモノと連携させて活用できないか――本特集最終回では、そんな取り組みを紹介する。アニメのセル画、Tシャツやパーカーのほか、ウイスキーの樽、不動産分野でも試行錯誤が続く。NFTに詳しい弁護士に企業が注意すべきポイントも聞いた。


「NFT」はデジタルビジネスを変えるか マーケットが続々誕生

 「西武ライオンズのNFT商品が発売」(9月7日)、「楽天グループがNFT事業に参入」(8月30日)、「PerfumeがNFTアートの第2弾」(8月14日)、「シヤチハタがNFTを活用した電子印鑑を共同開発」(同18日)――。連日のように企業発表やニュースに躍るキーワード。「NFT(Non-Fungible Token、非代替性トークン)」と言われるデジタルコンテンツの市場形成に向けた動きが活発になってきた。


メタバース経済圏をめぐる攻防 NFTマーケットの行方

 NFT(Non-Fungible Token、非代替性トークン)市場は今後どう拡大していくのか。希少価値があるもの、作品性が高いものはもちろんだが、広く普及するには、利用者の利便性向上に直結していることも鍵。NFTを分かりやすく、気軽に利用できる新しい経済圏をつくる取り組みも加速している。キーワードの一つがメタバース(仮想世界)だ。


ヤフオク!でもゲームアイテム取引、LINEが見据える経済圏

 参入相次ぐNFT(Non-Fungible Token、非代替性トークン)市場。3年前からブロックチェーン(分散型台帳)事業に取り組んできたLINEは、独自の経済圏の構築を狙う。一方で、唯一無二の証明ができるNFTの特徴を使って、ノベルティーの配布などでの新たな活用を探る動きもでてきた。クラシックの総合情報誌「ぶらあぼ」を発行するぶらあぼホールディングスの子会社のロイヤリティバンク(東京・千代田)が新サービスを始めた。


元ライフネットの岩瀬氏が起業 NFTマーケットを始めた理由

 にわかに増え始めた感があるNFT(Non-Fungible Token、非代替性トークン)のマーケット。21年7月にNFTプラットフォームを立ち上げたのは、ライフネット生命保険の共同創業者である岩瀬大輔氏。2回目の起業で「アジアから世界に向けて新しい価値を届けることを目指す」という。今なぜNFTなのか、その狙いを聞いた。


今さら聞けない「NFT」と法律、著作権

 クリスティーズのオークションでデジタルアート作品が6900万ドル(約75億円)で落札されるなど、マーケットの急拡大と新規参入が続くNFT(Non-Fungible Token:非代替性トークン)。でも何度説明を聞いてもよく分からないという人もいるだろう。いったいどんなもので、どんな法律問題があるのか。福井健策弁護士に聞いた。

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