今回のテーマは「売れる文具・雑貨」です。これほど成熟し、枯れた市場で、なぜ次々にヒット商品が生まれるのか。それは、各メーカーが時代の潮流を読み、消費者の変化を捉える努力を続けているからです。売れる文具、雑貨の開発ストーリーには、業種業界の壁を越えて、ヒット商品をつくるエッセンスが隠れています。日経クロストレンドの記者が新トレンドを解説します。
今回のテーマは「売れる文具・雑貨」です。これほど成熟し、枯れた市場で、なぜ次々にヒット商品が生まれるのか。それは、各メーカーが時代の潮流を読み、消費者の変化を捉える努力を続けているからです。売れる文具、雑貨の開発ストーリーには、業種業界の壁を越えて、ヒット商品をつくるエッセンスが隠れています。
三菱鉛筆の「uni」ブランドのシャープ替え芯は今年、13年ぶりのフルリニューアルをしました。たかが替え芯、されど替え芯。「勉強ノートをSNSで見せ合う」というZ世代の新しいカルチャーを捉え、こすれに強く、書いた後のノートを「汚さない」という新たな価値をプラス。「きれいなノート」をつくれる点が、Z世代の心をつかみ、好調な発進を見せています。
アスクルの「リングファイル<スリムスタイル>ハードタイプ」は、ペーパーレス化が進む今の時代に、なぜか売り上げを伸ばす紙用のファイルです。調査の結果、リングファイルは介護業界の構成比が圧倒的に高いことが判明。業界でどのような使われ方をしているかを徹底的に調べ、現場での困りごとを解決する商品開発をしました。
ほかにも、SDGs(持続可能な開発目標)に対応して「海洋プラスチックごみ」を素材に使った文具が企業のノベルティーとして人気が高まったり、「昭和レトロ」デザインが令和の若者層に受けたりする事例は、ヒット商品をつくるヒントとして参考になるのではないでしょうか。

13年ぶりブランド刷新 Z世代をつかんだ「uni」シャープ替え芯

介護現場向けのファイルがヒット ペーパーレス時代の逆張り戦略

時代の変化にどう対応するか

1887年の創業以来、様々な筆記具を開発・企画・販売している三菱鉛筆が「モノ」ではなく「コト」に特化した新事業を立ち上げた。2021年6月1日から運用を開始した、オンデマンド型のオンラインレッスン動画配信サービス「Lakit(ラキット)」だ。

パイロットの30年記念文具は「推し活」用 細部に隠しメッセージ
好きなアイドルやキャラクターのイメージカラーなど、色だけで「推し」を表現する「推し色」。さりげなく「好き」という気持ちを表現できるとして、日常の持ち物やコーディネートに取り入れる人が増えている。パイロットコーポレーションやタワーレコードは、この推し色を切り口に商品を生み出した。

リモートワークに対応して仕事道具一式を運ぶバッグや、パソコンやタブレットを好きな角度に傾けて使えるスタンドなど、長期化するコロナ禍の中で様々な「ニューノーマル対応商品」が生まれている。2021年7月12日にコクヨが発売したポータブルワークスペース「Rooney(ルーニー)」もコロナ禍の下で開発を本格化。働き方の変化を捉え、出した答えが「持ち運べるじぶん空間」というコンセプトだ。
文具もSDGs

SDGs文具が50万本売れた 海洋ごみ製ボールペンが法人需要で人気
SDGs(持続可能な開発目標)の認知が広まりつつあるが、実は文房具メーカーの多くはリサイクルに関して強い意識をもともと持っている。海洋プラスチックを利用したボールペンや最後まで使い切れる鉛筆など、技術を駆使して環境保全に取り組むメーカーの最前線を追った。

三菱鉛筆「石灰石系ボールペン」開発の舞台裏 SDGs需要を喚起
SDGs(持続可能な開発目標)への対応が待ったなしとなる中、商品やサービスへの開発現場でもさまざまな取り組みが行われている。サステナブルなモノやサービスを生み出す上で、意識すべきは何なのか、現場は何につまずいているのか、そして成功のポイントとは──。「SDGs商品開発の舞台裏」では、各社の試行錯誤を取材する。第1回はエコな新素材「LIMEX(ライメックス)」を世界で初めてボールペンの軸材に使った三菱鉛筆の「ユニライメックス」(税込み220円)の取り組みだ。

削りかすが花びらになる「花色鉛筆」 デザインと環境配慮を両立
共創型メーカーTRINUS(トリナス、東京・渋谷)のオープンプロジェクトから生まれた「花色鉛筆」。日本を代表する伝統的な花の形と花の色を表現し、芯を削ると削りかすが本物の花びらそっくりになる。21年7月には削りかすを貼って立体イラストを作れる新商品も登場。一般的なプラスチックと同じように成型可能で、同時に、プラスチックより環境性能に優れる素材を使い、デザインと環境配慮を両立させた。
注目のユニーク雑貨

令和の金脈「昭和レトロ」デザインが続々 Z世代には新鮮に映る
「なんとなく見覚えがある」「昔使っていた」「小さい頃に食べていた」──。そんな感覚を呼び起こし、懐かしさが込み上げる「昭和レトロ」な雑貨が今、人気を集めている。令和の時代に、昭和の遺産を掘り起こして発売する各社の取り組みはどれも、高い再現性を追求。実売や話題づくりといった成果を生んでいる。

アッシュコンセプト(東京・台東)が開発し、2019年7月から「+d(プラスディー)」ブランドで販売している「ネコカップ」(2970円、税込み、以下同)が人気だ。猫のシルエットにデザインしたプラスチックのカップで、そのままオブジェとして飾ってもいいし、「型」として中に砂や土を詰め込んで型抜きすれば猫の造形を作り出すこともできる。

倒れると自動点灯する「防災こけし」 「地震で倒れる」を逆手に
東北地方の土産や木地玩具として知られる「こけし」が、ECで独自の販売経路を開拓している。きっかけの一つに挙げられるのが、2010年代に起きた「第3次こけしブーム」だ。産業として存続するため、異業種とのコラボレーションや、制作現場のデジタル化、時代に合った販売経路を求める企業も出てきた。