創刊と同じ2018年にスタートしたアワード企画「マーケター・オブ・ザ・イヤー」も4回目を迎え、公開した記事は大変好評をいただきました。今年の受賞者や手掛けた商品・サービスは、withコロナあるいはSDGsへの取り組みなど、例年以上に時代を色濃く映した顔ぶれとなっています。日経クロストレンドの記者が解説します。

(写真/Shutterstock)
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 創刊と同じ2018年にスタートしたアワード企画「マーケター・オブ・ザ・イヤー」も4回目を迎え、公開した記事は大変好評をいただきました。今年の受賞者や手掛けた商品・サービスは、withコロナあるいはSDGsへの取り組みなど、例年以上に時代を色濃く映した顔ぶれとなっています。

 昨年もコロナ禍ではあったのですが、王道や愚直なマーケティング、クリエイティブを貫き、その力で見事にヒットをたぐり寄せた傾向がありました。大賞となった日本コカ・コーラ「こだわりレモンサワー 檸檬堂」を指揮したCMO・和佐高志氏や、アニメ『鬼滅の刃』の仕掛け人であるアニプレックスのプロデューサー・高橋祐馬氏などが、その好例です。

 一方の今年は、依然としてコロナ禍による厳しい状況が続く中、消費者の心理や社会のニーズをくみ取った爽快な一手、あるいは窮地に追い込まれた業界から起死回生の一撃が相次ぎました。大賞のアサヒビール「アサヒスーパードライ 生ジョッキ缶」をけん引したとなった専務兼マーケティング本部長の松山一雄氏は、緊急事態宣言が続いて外飲みを我慢する消費者に対し、店で生ビールを飲む「わくわく感」を缶ビールで創出。また、アパレルとホテルという最も苦境に立たされた業界からは、まさにピンチをチャンスに変えたAOKI「パジャマスーツ」(広報室長・飽田翔太氏)、帝国ホテル「サービスアパートメント」(企画部次長・小池崇裕氏)という、新市場創造の取り組みがありました。いずれもニューノーマルに適応した、未来を創る打ち手ともなりそうです。

 過去4回の「マーケター・オブ・ザ・イヤー」では、革新者たちが起こしたイノベーションの全貌を解き明かしています。改めてご一読いただけますと幸いです。

「生ジョッキ缶」誕生の真相 再び覚醒したアサヒ挑戦者のDNA


AOKI「パジャマスーツ」、逆風下で3万着売った超スピード戦略


帝国ホテル「即日満室」の舞台裏 「住まう」へと価値を大転換


「生ジョッキ缶」挑戦者の軌跡

アサヒビール専務が語る次の一手 スーパードライ開発の原点に回帰

 2021年のアサヒビールの基本戦略は、看板商品「アサヒスーパードライ」を開発した原点に立ち返り、世の中に無い新しい商品をどんどん作ること。3月にはアルコール度数0.5%のビールテイスト飲料「ビアリー」を新発売、4月には「生ジョッキ缶」をリリースし、5月からは家庭用ビールサーバー事業にも参入する予定だ。新たな挑戦への意気込みを、専務取締役の松山一雄氏が語った。


「生ジョッキ缶」成功 アサヒの体質変えた“外様取締役”の手腕

 アサヒビールが攻めている。その鍵を握るのは、多彩な業界経験を持つマーケティングの達人である、同社マーケティング本部長の松山一雄氏。2018年に「32年ぶりの外部から起用された取締役」として着任、その戦略が注目される人物だ。前例主義を変革させた秘訣とは。


アサヒ「生ジョッキ缶」の資料 消費者のナマ声伝える動画がカギ

 フルオープンの蓋をパカッと開けると泡がモコモコと出てきて生ビールのようになる缶ビール。その絶大なインパクトで注目されたのが、アサヒビール(東京・墨田)が2021年4月20日に発売した「アサヒスーパードライ 生ジョッキ缶」だ。この缶ビールのプレゼンテーション資料を紹介しよう。


大賞を獲得した革新者たちの一手

見せた清涼飲料の矜持 美しき「檸檬堂」マーケティングのすべて

 「マーケター・オブ・ザ・イヤー2020」の大賞に選出されたのは、日本コカ・コーラの「こだわりレモンサワー 檸檬堂」を指揮したCMOの和佐高志氏だ。元P&Gのプロマーケターが、30年間培ってきたマーケティングノウハウのすべてをつぎ込み、鮮やかな垂直立ち上げを果たした。確固たるブランドストーリーに基づいた、一糸乱れぬ美しいマーケティングをご覧いただく。


アパレル界で旋風を起こすワークマンプラス 生みの親が語る岐路

 日経クロストレンドと日経トレンディが革新的マーケターを選出する「マーケター・オブ・ザ・イヤー2019」。その1人目が、新業態「ワークマンプラス」を生んだワークマンの土屋哲雄氏。作業服専門店のイメージを大転換し、高機能&低価格のアウトドア・スポーツウエアを武器に新市場を創造した点を評価し、選出した。


組み合わせは数百万通り! パーソナル化を窮めた「健康ネスレ」

 2017年10月からネスレ日本が本格展開を始めた、栄養素入りの抹茶やミルクのカプセルの定期購入サービス「ネスレ ウェルネス アンバサダー」。簡単な質問に答えるだけで自分に足りない栄養素が分かる仕組みを整え、僅か8カ月で累計9万会員を突破している。個々人に合わせて提案をカスタマイズする健康プラットフォームへの発展を狙うネスレ日本が、次に仕掛けるのは、食事診断や血液検査などの“無料化”だ。


受賞者たちの快進撃は続く

『鬼滅の刃』ブームの裏に、アニメ化と計算尽くしのファン獲得策

 革新的マーケターを選出する「マーケター・オブ・ザ・イヤー2020」。2人目は、『鬼滅の刃』ブームの火付け役となったアニメ化の仕掛け人、アニプレックス(東京・千代田)の高橋祐馬氏だ。その裏側には妥協を許さないクリエイティブ制作と綿密なプロモーション戦略があった。


PayPay100億円還元策の舞台裏 「景表法の限界」に挑め

 革新的マーケターを選出する「マーケター・オブ・ザ・イヤー2019」の2人目は、PayPay(東京・千代田)の藤井博文マーケティング本部長。QRコード決済「PayPay」は100億円を投じた還元策を2018年12月に実施し、後発ながら他に類を見ない早さで利用者を獲得。登録者数は700万を超えた。100億円を利用者への還元に活用することの決断力、大きな影響を市場に与えたことが評価された。同企画は「景品表示法の限界」への挑戦から生まれた。


苦くない、透明ペット…。若者を捉えた「缶じゃないBOSS」

 2017年4月の発売から1年で1500万ケースを突破。安価なコンビニコーヒーに押されるなかで、大成功を収めたのが、サントリー食品インターナショナルのペットボトル入りコーヒー「クラフトボス」だ。従来の缶コーヒーでは捉えきれなかった若者や女性層をがっちりつかんだ秘策とは?

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